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医薬品
疾患啓発 正しく理解—適切な治療
製薬企業の役割は、医薬品の開発や供給だけに留まらない。社会に向けて疾患についての正しい理解を促すことも重要な責務だ。正しい理解は患者の適切な治療だけでなく、職場など周囲の環境改善にもつながる。また、近年は医薬品の安定供給も問題となっている。医療現場では代替品がない医薬品も多くあり、製薬企業は安定的に薬を届けられるよう取り組みを進める。
肥満症/体験型研修を始動 楽しく学び誤解・偏見解消
高まる肥満症の治療ニーズを背景に、抗肥満薬の市場投入が活発化する。世界保健機関(WHO)によると、2022年の世界における18歳以上の過体重または肥満の人口は約25億人に達し、そのうち体格指数(BMI)が30以上の人口は約8億9000万人に上るという。また厚生労働省によると、19年に日本でBMIが25以上だった人口は約2800万人とされる。
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イーライリリーの「ゼップバウンド」
肥満症治療薬の市場で主導権を握るのは海外のメガファーマ(巨大製薬企業)だ。デンマークの製薬大手ノボノルディスクの「ウゴービ(一般名セマグルチド)〈遺伝子組み換え〉」と、米イーライリリーの「ゼップバウンド(同チルゼパチド)」が2強とされ、米国を中心に欧州やアジアでも普及が進む。
日本でも24年2月にウゴービ、25年4月にゼップバウンドがそれぞれ発売され、国内市場の開拓と治療が進む。
一方で、肥満症は欧米人と日本人で違った特徴があるという。神戸大学大学院医学研究科の小川渉特命教授は「欧米人はBMI30以上から健康障害のリスクが高まるとされるが、日本や東アジアなどはBMI25を超えるあたりから糖尿病などのリスクが高まる」と説明する。
抗肥満薬の開発や実用化が進む中で重要となるのが、疾患への正しい理解だ。肥満は自己管理の問題と軽視され、当事者は自制心が低い人といった誤解を受けやすい。しかし小川特命教授は「肥満は、決して個人の生活習慣だけの問題ではない」と強調する。肥満や肥満症には遺伝的要因に加え、環境的要因や経済的な要因などが複雑に絡み合う。
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イーライリリーと田辺ファーマは研修で誤解や偏見の解消を目指す
社会に根付く偏見や差別を解消するため、製薬企業は疾患啓発にも取り組む。日本イーライリリー(神戸市中央区)と田辺ファーマは、肥満や肥満症に対する誤解や偏見を解消し、肥満症について正しい理解を促す体験型研修「肥満と肥満症のただしいミカタ研修」を始めた。企業などに向けて研修を実施し、カードやすごろくを使って肥満や肥満症について楽しく学ぶことが目的だ。
両社は25年12月、一般企業向けに初めて同研修を実施した。医師監修の下で開発した「見えない偏見カード」と「みえない要因すごろく」を使い、参加者同士で意見を交わしながら、社会に根付く「肥満は自己管理の問題」という思い込みの存在への気付きを促す。研修の参加者からは、「肥満や肥満症にはさまざまな因子があり、自分だけではどうにもならない要素があると知った」「社会全体を変えるには、一人ひとりの意識が重要。研修を機に会社や家族に伝えたい」といった声が上がった。
肥満症は、新しい医薬品の登場によって体重減少の治療効果が大きく進歩した。業績への貢献度も高く、製薬企業は肥満症領域を新たな市場として大型の投資が続く。効果に加えて、経口剤など投与の利便性の高い医薬品開発に乗り出す動きも活発で、各社の開発パイプラインから、今後10年程度は新薬開発や実用化が加速しそうだ。
血漿分画製剤 安定供給/需要予測 製販一貫体制を整備
血漿(けっしょう)分画製剤とは、ヒトの血液を原料とする医薬品。手術の際の止血管理や、肝臓の疾患などさまざまな重篤な症状の治療に使われる重要な製品だ。国内では少子高齢化が進み、医療現場での需要は増加するが、供給量は頭打ちとなるなど課題も出てきた。
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Meiji Seika ファルマは血漿分画製剤の安定供給に取り組む
明治ホールディングス(HD)で医薬品事業を手がけるMeiji Seika ファルマ(東京都中央区)は医療現場を支えるべく、KMバイオロジクス(熊本市北区)との強固な製販一体体制により、血漿分画製剤の安定供給に取り組む。
血漿分画製剤は、血液中のたんぱく質を補うための「アルブミン製剤」や、感染症や自己免疫疾患の治療に使われる「グロブリン製剤」、特定の凝固因子が欠乏する「血友病」の治療などに用いる「血液凝固因子製剤」などがある。代替の利かない医薬品もあり、供給する製薬企業の責任は大きい。一方で、国内では原料血漿の供給量は120万リットルと限界を迎えるなど、供給の課題への対応が必要となりつつある。
こうした中、Meiji Seika ファルマは25年、KMバイオロジクスが手がける2製品について、グループ内で製造から物流、販売までを一貫する体制を構築した。また今年1月には、KMバイオロジクスが製造販売している静注用人免疫グロブリン製剤「献血ベニロン」について、Meiji Seika ファルマが販売契約を締結。26年4月から明治グループ内で同製剤の製造から販売まで一貫する体制が整う。
Meiji Seika ファルマの永里敏秋社長は「サプライチェーンを一本化することで医療現場の需要がより見える化する。適正な在庫管理ができることで、安定供給につながる」と説明する。
血漿分画製剤は製造から供給までのリードタイムが長い。そのため、需要を予測し、常に適正な量を供給できる体制が重要だ。「医薬情報担当者(MR)を通じて医療現場の状況がすぐにKMバイオロジクスに伝わる体制ができる。(供給体制や需要の変動に)迅速に対応できる」(永里社長)。
需要が拡大する血漿分画製剤においてサプライチェーン(供給網)を最適化し、需要の変動に柔軟に対応することで国内の安定供給に貢献する。ただ、国内における安定供給の取り組みが進む一方で課題も残る。高齢化の波は世界に押し寄せており、特にグロブリン製剤の使用量は右肩上がりだという。永里社長は、「免疫が弱まるとグロブリン製剤を投与することになるが、血液から作れるグロブリン製剤の量は限られており、世界で取り合いになる」と警鐘を鳴らす。
KMバイオロジクスでは血漿1リットル当たりのグロブリン収量を上げるなど製法の改良にも乗り出しており、医療現場に不可欠な血漿分画製剤の安定供給に向けた取り組みは続く。
がんと向き合う人へ 生活サポート/治療支援 サイトで情報発信
小野薬品工業はがん免疫療薬の情報を発信するとともに、患者のライフスタイルを支える情報提供にも力を注ぐ。同社のがん患者向けのウェブサイト「ONO ONCOLOGY」は、がん種ごとの症状やがん免疫、治療法、支援制度の解説に加え、患者のインタビュー記事なども掲載。体験談の発信を通じて、仕事・学業との両立や家族・友人との関係性など、がんと向き合う人の生活をサポートする。
さらに、免疫チェックポイント阻害薬の治療を受けている患者に対しては、副作用管理アプリケーション「ふくサポ」を提供している。同アプリは日々の体調記録や特定の症状が出た際のアラート、記録内容を家族に共有する機能を搭載。副作用の兆候を早期に把握し、治療判断に役立てられる。
また動画投稿サイト「ユーチューブ」では、がん治療における医師との適切なコミュニケーションについて紹介する動画なども公開している。
