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医薬品
「創薬エコシステム」 4月に工程表
国内で創薬をめぐる動きが大きく動き出す。政府は創薬・先端医療分野を「戦略17分野」の一つに位置づけ、官民で重点投資する方針を打ち出した。高市早苗首相が議長を務める「日本成長戦略本部」の下に、製薬大手やベンチャーキャピタル(VC)などで構成する作業部会を設置。海外に依存する医薬品のサプライチェーン(供給網)確保や画期的な医薬品を生み出す「創薬エコシステム」の構築に向け、国内外から投資を呼び込む方策を議論する。4月にも官民投資の具体策を盛り込んだロードマップをまとめる。
医薬品、安定確保急務/7割輸入 欧米との連携カギ
「長期にわたり戦略的な投資の枠組みを確立するには、法的根拠に基づく国家戦略の創設が不可欠だ」。武田薬品工業のジャパンファーマビジネスユニットプレジデントで、日本製薬工業協会会長を務める宮柱明日香氏は、1月に開催した第1回作業部会でこのように述べ、「国家戦略基本法」の創設を提言した。
その上で「創薬力復活」「国内製造力強靱(きょうじん)化」「人材基盤堅持、強化」の3本の柱に沿って官民投資ロードマップを作成することを求めた。
日本はかつて世界トップクラスの新薬創出数を誇っていたが、近年は競争力を失いつつある。新薬開発には10年以上の時間を要し、膨大な投資が必要となる。中国や韓国は創薬を国家戦略に位置づけ、大規模な公的資金を長期的に投入するなど強力に支援している。
一方、日本は薬価引き下げにより製薬会社の収益力が低下し、新薬開発の意欲を削ぎかねない状況だ。公的資金の投入額でも中国、韓国を下回る。宮柱氏は「医薬品産業を国家戦略の中核に据えているかの差だ」と指摘する。
医薬品の安定確保にも課題を抱える。日本は医薬品の7割超を輸入に頼る(グラフ)。さらに原薬生産では6割超を中国、インドに依存している。感染症流行時に自国へのワクチンや治療薬の供給を優先すれば、日本への供給が途絶する恐れがあるほか、経済安全保障上のリスクも抱える。
コロナ禍の教訓を踏まえ、政府は2022年に医療上の必要性が高い抗菌薬を経済安全保障法に基づく「特定重要物資」に指定。製薬会社に対し、国内での生産体制整備を支援している。こうした取り組みを含め、国内でのサプライチェーン構築や調達先の多様化を進める必要がある。
一方、五十嵐啓朗ファイザー社長は国内の研究開発体制強化の必要性に触れつつ、「どの国も必要な薬やワクチンを全て国内で作ることはできない」とし、欧米など創薬先進国と連携体制を築くことの重要性を訴えた。
また、「社会保障費の上限内で薬価が引き下げられ、海外との研究開発費の差が顕著になっている」と指摘。画期的な新薬を高く評価し、薬価を引き上げることで「新薬イノベーションを最重視し、出る杭を打たず、報いる形にする」(五十嵐社長)ことを求めた。
スタートアップ長期支援 「創薬」補正で1800億円
新薬開発にはスタートアップの力が欠かせない。バイオ系VCの米アーチベンチャーパートナーズの吉川真由氏は「創薬分野では初めから世界を狙うアプローチが必要だ」と説く。国内より圧倒的に市場規模が大きいことに加え、早い段階で研究、臨床、承認の方針を決めることが求められるためだという。
だが、国内には海外展開に必要な「グローバルな開発成功者の層が薄い」と吉川氏は指摘する。世界にはばたく創薬スタートアップの育成には「VCの持つ『客員起業家』のような仕組みの活用や、VCやアクセラレーターとの接点を増やす方法などを考える必要がある」とした。
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厚生労働省は製薬会社などと資金を拠出し、スタートアップ育成のための基金を造成する
政府は総合経済対策で事業規模が約3300億円となる創薬力強化の政策パッケージを公表した(表)。そのうち、25年度補正予算では政府全体で1800億円規模を計上した。
厚生労働省はスタートアップが画期的な新薬を生み出す環境を整備するため、製薬会社などの民間と資金を拠出し「革新的医薬品等実用化支援基金」を造成する。25年度補正予算に241億円を盛り込んだ。スタートアップを支援するインキュベーション事業者や製薬企業などの計画を認定し、10年間の長期にわたり支援する。
医薬品製造への支援も強化する。経済産業省は、世界市場の拡大が見込まれる再生・細胞医療や遺伝子治療の医薬品開発製造受託(CDMO)向けに国内での設備投資を補助する。日本は人工多能性幹細胞(iPS細胞)分野の研究開発を主導してきたが、商用化に向けた医薬品の量産を海外に依存するのが課題だ。33年度までに再生・細胞医療・遺伝子治療分野のCDMOで世界シェア2割の獲得を目指す。
