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大分県座談会2026
大分県は多様で厚みのある産業集積地として国内外から注目を集めている。台湾積体電路製造(TSMC)の進出を契機に九州の半導体関連産業が活性化する中、その存在感が高まる。今回、佐藤樹一郎知事をはじめ産学官のキーパーソンをお招きし、ビジネス拠点としての大分県の強みや将来性について討議した。
地域経済成長へ人材育成不可欠
国際的な半導体生産拠点目指す 菅原氏
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ジャパンセミコンダクター社長(大分県LSIクラスター形成推進会議 会長) 菅原 毅 氏
―県内産業を振興する企業会についてうかがいます。
菅原 設立20周年を迎えた半導体産業を振興する企業会「大分県LSIクラスター形成推進会議」の会長を務めています。県内大手進出企業、地場企業の集積と得意技術の強みを生かし、産学官連携してQCD(品質、コスト、納期)において国際的な競争力を有する半導体生産拠点を目指しています。
半導体製造の前工程、後工程や装置、材料、商社まで幅広い企業が集積している点が大分県の特徴です。当組織はハブ機能として、企業間連携や人材育成、情報発信に取り組んでいます。九州は全国でも有数の半導体産業集積地であり、なかでも大分県は九州内で重要な役割を担っています。引き続き県内外、海外との連携を通じて技術開発、人材育成、情報発信を行い半導体サプライチェーン、バリューチェーンの形成に貢献していきたいです。
山田 大分コンビナート企業協議会では、「物流」「ユーティリティ」「人材育成」「規制緩和」の四つの分科会とスマート保安・IoTプロジェクトチームで活動しています。大分コンビナートは鉄鋼、石油精製、石油化学といった各社が隣接しており、二酸化炭素(CO2)の回収・利用・貯留(CCUS)やカーボンリサイクルに必要なCO2、水素の企業間連携、融通のポテンシャルが高いです。
産学官による「グリーン・コンビナートおおいた」推進会議を通じて、24年には次世代エネルギーの利活用やカーボンリサイクルなどを軸とした大分コンビナートの30年、50年への方向性を構想として公表しました。同構想に基づき、25年にカーボンマネージメントなど具体化に向けたカーボンリサイクル調査を実施。26年度には県、コンビナート各社などとCCUS推進委員会を新設して具体化に取り組み、企業、行政、地域が一体となって発展させていきます。
―産業集積の強みが浮き彫りになってきました。さらに魅力を高めるための課題や人材育成について議論を深めたいと思います。
菅原 今後発展が見込まれるフィジカルAI(人工知能)には頭脳に相当する高性能な半導体に加え、可動部(モーター)を制御・駆動する半導体が必要になります。モーター駆動半導体は当社の強い分野であり、ここを伸ばすことがポイントになると思います。
大分県LSIクラスター形成推進会議では11年以降、台湾、大分、熊本の3団体による商談会を実施してきました。14年にわたり約1074社が参加し、各会社の販路拡大の機会を創出しました。商談を進める仕組みづくりはできましたが、個社同士のビジネスにまでは、まだまだ難しい状況です。ただ、ミスマッチになったとしても市場の要求や改善すべきポイントの気づきを得られる機会となっています。これからも幅広い業種への呼び掛け、シーズとニーズのマッチングの確度を上げていきたいです。
半導体人材の育成は、産学連携して大学教授・企業技術者の協力のもと、基礎的な半導体概論などから専門的な技術セミナーなどを実施。受講者のアンケート結果でも高評価をいただいています。課題は、半導体産業の全体像が分かりづらく、その業務内容や魅力を若い世代に十分に伝えきれていない点です。半導体が部品であり、最終セット製品ではないため仕事としてイメージしにくいことも感じます。小学生など早い段階から半導体に興味を持ってもらえる教育の仕組みづくりが必要だと思います。
脱炭素社会の実現を全力で推進 山田氏
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クラサスケミカル取締役執行役員大分コンビナート代表(大分コンビナート企業協議会 副会長) 山田 暢義 氏
―脱炭素化は高い目標設定があります。
山田 脱炭素化は、全力で取り組まないと時間がありません。当社はロードマップを作成し、50年のCO2排出ゼロに向けた中間目標を、35年までに20年対比で30%削減することにしました。短中期でエネルギー効率の向上、原料、燃料転換を、中長期では廃プラスチックの原料化やCO2分離回収技術、CO2の化学品化技術の開発に取り組んでいます。
ただ、脱炭素社会に向けた省エネ案件以外の施策は、大型の設備投資を伴うものやランニングコストが悪化するものが多く、進め方が難しい。解決策としては、国や自治体による補助金制度の確立、近隣他社と協力しながら進めていくことが不可欠だと思います。
26年度より排出量取引制度(GX―ETS)が始まります。政府が一定基準のもと、対象事業者に排出枠を割り当て、排出枠の過不足に応じて事業者間で排出枠を取引するものです。CO2削減を市場メカニズムで推進する環境政策ですが、各企業で今後、環境価値をいかに訴求していくかが大事になっていくと思います。
菅原社長からお話がありましたが、石油化学分野も人材の確保、育成が大きな課題です。その対策として25年度より、石油化学におけるプロセス開発などへの理解を深めるために大分大や大分県にご協力いただき、大分大での講演の機会をいただきました。26年度も引き続き学生への企業活動の理解と情報発信を進めていきます。
地域に根ざした人材循環の実現を 村井氏
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産業集積を推進し大分県内を活性化すると誓った
村井 当社グループでは、中期経営計画において「企業価値倍増への挑戦」を掲げました。付加価値の高いビジネスに挑戦するために人的投資や事業投資を着実に進めていきます。これまで培ってきたIoTや装置分野の技術を軸に、既存事業の深化を図り、新たな事業領域としてペイメント事業やロボット事業への投資・展開を進めています。
成長を目指す中で見えてきた課題は、スピード感のある事業展開や事業の高度化、多様化が進む中での人材の確保と育成、さらにAIとの共創が、これまで以上に重要になっています。特に技術の進化が早い分野では、専門性を持つ人材の育成と同時に変化に柔軟に対応できる人材づくりが欠かせません。
当社グループでは、若手のうちから実際の現場で経験を積ませることに加え、グループ内での人材交流や学びの機会を増やし、複数の視点を持った人材の育成に取り組んでいます。採用や育成は、さまざまな場所で学び働いてきた人材が地元で学び、経験を積みながら成長し続けられる環境づくりを意識することで、地域に根ざした人材循環の実現を目指しています。
