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大分県座談会2026
大分県は多様で厚みのある産業集積地として国内外から注目を集めている。台湾積体電路製造(TSMC)の進出を契機に九州の半導体関連産業が活性化する中、その存在感が高まる。今回、佐藤樹一郎知事をはじめ産学官のキーパーソンをお招きし、ビジネス拠点としての大分県の強みや将来性について討議した。
半導体・自動車・医療機器・エネ関連など産学官連携を推進
参加者
大分県知事 佐藤 樹一郎 氏
大分大学 理事(教育担当)・副学長 渡辺 博子 氏
ジャパンセミコンダクター社長(大分県LSIクラスター形成推進会議会長) 菅原 毅 氏
クラサスケミカル取締役執行役員 大分コンビナート代表(大分コンビナート企業協議会副会長) 山田 暢義 氏
FIG社長 村井 雄司 氏
(司会)
日刊工業新聞社西部支社長 大神 浩二
国内有数企業がバランスよく立地 佐藤氏
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大分県知事 佐藤 樹一郎 氏
―大分県の産業特性などを教えてください。
佐藤 本県は鉄鋼や化学、石油、非鉄金属、自動車、半導体関連など、幅広い産業分野で国内有数の企業がバランス良く立地しています。進出企業と地場企業がともに発展し、産業集積が進んできました。大分市に九州唯一の大分石油化学コンビナートが立地し、県内経済をけん引しています。
歴史的にも大分市は産業集積が商業や観光、文化的にも結びつくような地域の魅力があります。戦国時代に豊後府内(現大分市)を拠点とした大友宗麟は、南蛮貿易を振興。西洋の技術や異文化をいち早く取り入れて南蛮文化が花開きました。新しいモノを取り入れる地域性は現在にも息づいており、ドローン産業振興に向けた全国初の企業会「大分県ドローン協議会」を2017年に創設。半導体や自動車、医療機器、エネルギー関連などの企業会もあります。異業種が集まり、産学官連携を強みにした推進組織の活動は全国的にも珍しいことです。
台湾企業との関係構築にも注力しています。熊本県に進出したTSMCの動向を注視し、さらなる産業集積を推進するため、半導体関連産業などの誘致に向けた情報発信に取り組んでいます。25年12月に東京で、26年1月には台湾で企業誘致セミナーを開きました。
広域交通ネットワークの充実に向けては、熊本、大分両県を結ぶ中九州横断道路の整備を進めています。大分からTSMCの工場まで所要時間は2時間ほどですが、台湾企業からすると距離を感じないようです。企業誘致では個別・団体の台湾企業から具体的な相談も受けており、手応えを得ています。25年7月から大分空港と大分市を結ぶ国内唯一の旅客用ホーバークラフトが運航しています。今後、空飛ぶクルマの県内での活用も注目です。最先端の技術で発展する大分に期待してください。
安い電力と上質な工業用水が魅力 菅原氏
―大分で事業展開するメリットを教えてください。
菅原 当社大分事業所は、大分市で東芝大分工場として1970年に操業を始めました。以来55年にわたり自動車や民生分野などで利用されるアナログIC、マイコン、パワー半導体を製造してきました。設立は2016年。当時の岩手東芝エレクトロニクスと統合し、10年目を迎えます。大分での事業メリットは二つあります。他地域に比べて安い電力と上質な工業用水です。生産する製品は主に東芝の半導体製品ですが、設立当初から他社製品を製造するファウンドリービジネスにも取り組み、現在は売上高の約3割を占めるまでに成長しています。
注力する車載半導体は、厳格な品質管理と高品質な製品の長期間にわたる安定供給が求められます。お客さまの要求に応えるため、製造ラインの品質管理をはじめ、24時間体制で解析・分析を行う解析センターを設置し、ゼロディフェクト(不良ゼロ)を追求する品質改善活動を進めるなど、メード・イン・ジャパンのモノづくり力向上に努めています。
物流コストを抑えるアジアに近い良港 山田氏
山田 当社は1969年に操業開始いたしました。25年1月にレゾナックから独立し、石油化学事業会社としてスピンオフ上場を目指しています。石油化学事業は石油や天然液化石油ガスなどを原料として合成樹脂や合成繊維など、さまざまな化学製品を製造しています。自動車や家電、衣料品といった幅広い分野で使用いただいています。
事業内容はエチレン、プロピレンなどのオレフィン製品や酢酸ビニル、酢酸エチルなどの誘導品を製造、販売しており、製品の一部は輸出もしています。大分での事業メリットは電力と水が豊富なことや、船舶輸送に適した環境であることです。また優れた港湾施設がありますので船を使い、さまざまな原料を調達、製品を輸出できます。立地の面ではアジアのマーケットに近く、物流コストを抑えることができます。
スピード感ある開発、挑戦できる環境 村井氏
村井 当社は生まれも育ちも大分県。IoT(モノのインターネット)とモノづくりを基盤とした企業グループでプライム市場に上場しています。タクシーやバス、物流など、企業間取引(BツーB)向けにデジタル変革(DX)を支えるソリューションを提供するモバイルクリエイト(大分市)、半導体やロボット関連のREALIZE(リアライズ、大分市)、ホテル向けスマートシステムを開発するケイティーエス(杵築市)の3社を中心に事業を展開しています。ソフトウエアにとどまらず、ハードウエアやネットワークまで含めた技術を自社で保有し、企画・開発から製造、販売、運用、保守までをワンストップで提供できる点が特徴です。
特にスタートアップとしてご支援いただいてきたモバイルクリエイトは、当初から上場を目指し02年に起業しました。インターネット・プロトコル(IP)無線を利用したタクシーの配車システムを起点に、IoTを活用した移動・交通分野のサービスを開発してきました。
大分での事業メリットは、各事業領域のグループ会社が立地しているため連携が取りやすく、スピード感ある開発やチャレンジができる点と、存在感です。上場していても首都圏だと埋もれてしまいます。大分に本社機能を持つIT系の情報通信企業があるんだということが学生にも訴求力があります。
移動して価値を生み出す力を育成 渡辺氏
渡辺 大分大学は24年に75周年を迎えた国立総合大学として、地域の課題解決に取り組む人材や知識、方法、技術が集まる地域コミュニティーの中心的存在として教育、研究、医療福祉、地域連携を一体的に進めてきました。学生数は約5500人、教職員数は約2150人で大学の将来構想として「大分大学ビジョン2040」を掲げています。急速に進む人口減少、産業構造の変化、デジタル化やグローバル化といった社会変動を見据え、自らも改革しながら地域に根づき、さらに地域のさまざまな課題の解決や持続可能な社会の有様を提案、推進できるインテリジェント・ハブとしての機能を高めることを目指しています。
特に教育分野は「持続可能で多様性にあふれる社会を創生する人材を育てるための開かれた学びの創造」をテーマに、「社会変革を創生する人材の育成」「世界と地域をつなげるグローカル人材の育成」「インクルーシブ社会に向けた学びの機会の提供」を3本柱に未来指向型教育を創出しています。具体的には、学部・大学院の専門教育に加え、教養教育、STEAM(科学・技術・工学・芸術・数学)教育、データサイエンス、地域課題解決型学習などを横断的に取り入れ、正解のない課題に向き合い、他者と協働しながら価値を生み出す力を育てることを重視しています。
(次のページに続く)
