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非破壊検査・計測・診断技術
高温プロセスのブラックボックスを解く:超音波センシングによる可視化
【執筆】日本非破壊検査協会 理事(前会長) 長岡技術科学大学 特任教授 工学博士 井原 郁夫
高温加工プロセスの内部はいまだ十分に把握されておらず、ブラックボックスとして残されている。見えないまま進む加工の実態を「見える化」することは、安定操業や品質向上にとどまらず、省エネルギーや脱炭素の実現にも直結する重要課題である。ここでは、この課題に対するアプローチとして、高温超音波センシングの可能性を概観する。
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高温超音波センシングによる製造プロセスの可視化
工業製品の多くは高温での加工・処理プロセスを経て生産されている。鋳造、焼成、溶融、溶接、熱処理などにおいては、加工中の温度分布とその過渡変化(これに連動する材料特性や変形挙動)が製造品質を支配する。しかしながら、加工中の温度でさえ十分に把握されているとは言い難い。誤解を恐れずに言えば、高温環境下の製造プロセスの多くは、直接観測が困難であるがゆえに、現場のノウハウや間接指標に基づいて制御されているのが実状である。
一方、デジタル変革(DX)やグリーン・トランスフォーメーション(GX)の潮流に沿ったスマートマニュファクチャリングの実現には、高温場での非破壊センシングに基づく加工機内部のオンラインモニタリング、すなわち内部状態の的確な把握によるプロセスの可視化が不可欠である。こうしたニーズに応えるべく、超音波を活用したロバストかつ定量性に優れた新たなセンシング・評価手法の実装が強く求められている。
近年、デジタル技術の急速な発展とともに、超音波技術も大きく進展している。超音波法は原理的に高温材料の評価も可能であり、レーザー超音波法や電磁超音波法といった非接触法、高温対応探触子、バッファロッド法などを用いた多様なセンシングが展開されている。これらを駆使することで、図に示すように、超音波応答に基づく高温プロセスの可視化と、その情報を指標とする最適プロセス制御が期待される。
とはいえ、高温超音波センシングにはなお課題が残る。センサーの耐熱性は上述の各種手法により改善が進んでいるものの、高温場で使用可能な接触媒質の開発は依然として重要な課題である。また、超音波応答から所望の情報を抽出するための逆解析手法の高度化も大きな課題である。安易な楽観はできないが、これらのボトルネックは、近年急速に進展するAI(人工知能)の活用により克服が期待される。これまで困難とされていた高温プロセスの可視化は、高温超音波センシングを駆使することで現実味を帯びつつある。
