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非破壊検査・計測・診断技術
国際的・学際的な連携が創造する次世代非破壊検査技術
【執筆】日本非破壊検査協会 会長 東芝総合研究所 所長 工学博士 落合 誠
世界各地で社会インフラの老朽化が進むとともに、災害や環境の変化により劣化挙動も複雑化している。このため、適切な点検・診断に基づく計画的な維持管理は国際的な課題となっている。加えて、エネルギー供給やサプライチェーン(供給網)の不安定化を背景に、既存設備の長期的かつ効率的な活用が求められており、その実現には高信頼な診断技術が不可欠である。これらの課題への対応には、検査データをインフラ・設備診断に効果的に活用することによる相乗効果の創出が重要となる。ここでは国際的・学際的な連携が創造する次世代非破壊検査技術について紹介する。
情報基盤へと進化する”第4世代”
世界の多くの地域で、橋梁や高架、コンクリート構造物など、人々が日々利用する社会インフラが本格的な維持管理・更新の段階に入っている。国内でも、高度経済成長期に集中的に整備されたインフラがこの段階にあり、計画的・合理的な維持更新にむけて、適切な点検・診断することが重要になっている。さらに、自然災害の頻発化や使用環境の多様化は劣化挙動を一層複雑にし、インフラの長期利用に向けて状態を的確に把握することは、国際的な共通課題となっている。
加えて、わが国のエネルギー自給率は依然として低く、安定供給の確保は重要な社会課題である。近年では地域紛争や国際関係の変化が、資源・エネルギーはもちろん、素材や部品の供給網にまで影響を及ぼし、「地経学」的リスクが顕在化している。このような状況では、大きな投資によって新設中心の維持・拡大を図るより、既存設備を長期にわたり安全かつ効率的に活用する方向へと価値観が転換しつつある。その実現にも、状態を高精度に把握し、適切な補修・更新判断を行う信頼性の高い設備診断技術が重要である。
こうした背景のもと、非破壊検査は従来の「欠陥判定」を超え、インフラや設備のライフサイクルを統合評価する中核技術へ進化することが求められている。AI(人工知能)・デジタル技術の進展により、センシングからデータ蓄積・解析、さらには判定支援までを一体化したデータ駆動型の検査は実用化されつつある。これを体系化した第4世代非破壊検査(NDE4・0)は、経験依存型の判断から客観性・再現性を備えた評価への転換を促すものである。今後は、センシング、解析、シミュレーションを統合した検査デジタル基盤の構築のみならず、そのデータを運転管理や資産管理、さらには経営判断へと連携させることが重要となる。非破壊検査は単独で存在する技術ではなく、多様な情報と結びつくことで価値を創出する「情報基盤」へと進化しつつあるのである。
国・地域を越えた知の融合カギ
この変革を支えるのが国際的・学際的連携である。インフラ診断は検査技術だけでなく、材料、機械、土木、電気、情報などの横断領域であり、分野や国・地域を越えた知の融合が不可欠である。こうした認識のもと、日本非破壊検査協会は2025年より「Smart and Sustainable NDT through strategic Synergy」と言う方針を掲げている。Smartとは、技術の先進性と高度化を追求し、より高い性能・効率・合理性・信頼性を実現していく姿勢を意味する。一方Sustainableには、適切な非破壊検査により社会の安全・安心を中長期にわたり確保するという側面と、人材育成、標準化、認証制度の高度化を通じて検査分野そのものを持続的に発展させるという側面の双方が含まれる。そしてこれらを、異なる技術分野、異なる国・地域の知見と経験を戦略的に連携する(strategic Synergy)ことで実現していく、という考え方である。
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神戸で27年8月開催(予定)の「NDT Next 2027」告知
日本非破壊検査協会ではこの方針のもと、日本機械学会やコンクリート工学会との連携に加え、国際原子力機関(IAEA)、英国溶接研究所(TWI)、米国非破壊検査協会(ASNT)、オランダSprint Robotics社などとの国際連携を推進している。また、直近では26年5月にハワイでAsia—Pacific Conference on NDT (APCNDT2026)がASNT主催で開催され、さらに27年8月末には神戸で「International Conference on NDT for Next Generation (NDT Next 2027)」が開催される予定である(図)。多様なプレーヤーが同じ課題意識のもとに集い、議論し、新たな連携を創出することで、非破壊検査の概念そのものを一段と拡張していく契機となることが期待される。
非破壊検査は今、品質管理の一技術から、インフラライフサイクル全体を最適化する基盤技術へと進化している。国際的・学際的な連携をさらに深化させ、その価値を一層高めることが、安全で持続可能な社会の実現につながると確信している。
