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非破壊検査・計測・診断技術
衝撃弾性波法による鋼繊維補強コンクリート上面増厚床版内部の劣化検出技術
【執筆】 ネクスコ東日本エンジニアリング 長野道路事務所 長野施工管理課長 末光 功治
鋼繊維補強コンクリート上面増厚床版(SFRC増厚床版)の劣化は、既設床版との境界である内部から進行するため、外部からの目視調査では劣化状態を把握できず、変状発見時には著しい劣化に進展していることが問題となっている。ここでは、衝撃弾性波法を用いたSFRC増厚床版内部の劣化検出技術について紹介する。
SFRC増厚床版は車両制限令の改訂に伴い増大する交通荷重に対して、既設床版の上面に鋼繊維補強コンクリート(SFRC)を増厚し、床版の耐力を向上させたものである。SFRC増厚床版では、増厚部の施工目地から雨水が浸入し、既設床版と増厚部の境界面で剥離が生じたり、既設床版上面が土砂化したりするなどの変状が進行する。高強度を持つSFRC自体に変状が発生することは少なく、外観から境界面での変状発生を把握することは難しい。床版下面に変状が発生する頃には水張り状態で繰り返し荷重を受け、床版内部では変状が急速に進行している可能性が高い。
現状では床版上下面の変状発生状況を総合的に考慮して、床版下面からのコア削孔による内部観察調査を実施している。しかし、コア削孔による調査は点の情報であり、調査結果から床版全体の面的な変状把握は難しい。
SFRC増厚床版内部の劣化検出技術として、床版下面から調査可能な非破壊試験技術である衝撃弾性波法に着目し、ネクスコ東日本エンジニアリング、リック、シーテック、ものつくり大学の4者で研究開発を進めている。衝撃弾性波法はコンクリート面に鋼球などの打撃で衝撃を発生させ、弾性波をコンクリート面に設置した加速度計により受信し、コンクリート内部などの状態を推定する試験法だ。
しかし、高速道路橋の床版に関して、実物大の試験体での実証例や実構造物での適用事例が少なく、卓越周波数から内部の劣化の有無を判断する評価方法が十分に確立されていない。
実物大の試験体を製作し実験を行った結果、課題はあるものの床版内部の劣化を面的に検出できることが分かってきた。現場実装に向け、実橋梁による検証や容易な測定手法、評価方法の確立に取り組んでいる。
