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南東京特集
【特別インタビュー】目黒・世田谷両区長に聞く新年度の主要施策
東京都23区の南西部に位置する目黒・世田谷両区は、都内屈指の閑静で緑豊かな高級住宅街が点在するエリアだ。世田谷区は人口約92万人、世帯数約50万世帯とともに都内一を誇る。一方、目黒区は同約28万人、同約16万人だが、人口密度が比較的高い。2026年度当初予算案は、目黒区が「守る、つなぐ、未来へ活かすー責任と希望をかたちにする予算」、世田谷区が「次世代を育む暮らし応援予算」として編成。一般会計はそれぞれ1620億円、4313億円で過去最大となった。持続可能なまちづくりなどについて、青木英二目黒区長と保坂展人世田谷区長に聞いた。
目黒区長 青木 英二 氏/公民連携で駅前整備加速
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目黒区長 青木 英二 氏
―26年度当初予算案では、まちづくりや暮らしに関して、どのような考えに基づき編成しましたか。
「25年度からの5年間に具体化すべき取り組みなどを示した目黒区実施計画の2年目で、『快適で暮らしやすい持続可能なまちづくり』『安全で安心して暮らせるまちづくり』を目指して引き続き取り組みたい。区民生活に必要な都市インフラの維持や生活に欠かせない駅前整備、人口密度が高いにもかかわらず宅地率が70%を超えることから災害に強いまちづくりを進める」
―駅前整備では自由が丘駅周辺地区の動きが活発です。
「駅周辺地区の整備は区全体の魅力向上につながる重要な取り組みだ。同地区では地域の建物の老朽化や道路などの基盤整備の遅れ、東急東横線と東急大井町線によるまちの分断など多くの課題があった。区はこれら課題に対して地域や民間企業、鉄道事業者と連携し、さまざまな施策に取り組み、地域の魅力を向上させることで訪れる人々や住民にとって快適で利便性の高いまちの実現を目指している。26年度当初予算案に総額37億3290万円を計上した」
―具体的には。
「三つの市街地再開発事業を中核とする。このうち26年秋に先行して開業予定の『自由が丘一丁目29番地区』では地上15階、地下3階建てのランドマーク的な商業施設と賃貸マンションの複合ビルが開業予定だ。三つの再開発事業により自由が丘の新たな価値の創出や、事業地周辺の道路整備による安全な歩行空間、オープンスペースの整備を実現させる。地域のまちづくりには、多様なステークホルダーの関与が求められ、そういう意味では自由が丘のまちづくりは公民連携の賜物だ」
―これら3事業地区のまちづくりを含め、商店街をどう活性化させていきますか。
「区内には現在62の商店街がある。商店街の活性化のためには、商店街関係者が自ら考え行動し、行政が必要な協力や支援を行っていくことが重要だ。区は26年度も継続して、東京都と協力して『商店街チャレンジ戦略支援事業』を実施し、商店街などが自ら企画し実施するイベントに補助を行うほか、区独自の取り組みである『商店街プロモーション事業』も実施し、各商店街の振興を支援していく。是非とも活用してもらいたい」
―安全で安心して暮らせるまちづくりを進めるために防災対策関連で新規事業を計画しています。
「22年に東京都から首都直下地震などによる東京都の被害想定が示された。当区は避難所での避難者数が約4万7000人と想定されている。区では避難所環境の改善を進める一方、居住可能な場合には引き続き自宅で避難生活を送る在宅避難を推進している。そこで、各世帯の状況に見合った備えを進めてもらうきっかけとするため、26年度当初予算案に新規事業として10億2558万円を計上。一人3000円相当分の防災用品を選べる防災カタログとともに防災意識を啓発するため、刷新した『防災行動マニュアル』と『水害ハザードマップ』を同梱し、26年秋にも配布する予定だ。金沢市、宮城県角田市、同気仙沼市とは友好都市関係にあり、防災行動マニュアルには地震の教訓を反映させる」
―BCP(業務継続計画)の地震編の改定背景とその内容は。
「東京都における首都直下地震の被害想定の見直しや、新たな災害対策本部の組織体制を機能別・横断的に変更したことなどに伴う措置だ。26年度末改定を見込む。地震だけでなく、富士山の噴火などさまざまな災害を網羅するオールハザード型とし、区民の生命や財産をしっかりと守るための実践的かつ効果的なBCPを目指す」
―区内の中小企業経営者にメッセージを。
「区内製造業は事業所数に占める割合で4・1%と多くはない。だが『山椒は小粒でもピリリと辛い』ではないが、高い技術力を有し、試作品製作などのために短納期・小ロットでの受注に対応できるなどの独自の強みを持つ。カタログから選ぶ『中小企業省力化投資補助金』で国と区を合わせて10分の9補助する制度などもあり、区の施策も積極的に活用してもらいたい」
世田谷区長 保坂 展人 氏/デジタル通貨“機会”拡大
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世田谷区長 保坂 展人 氏
―選ばれる区になるために編成した26年度当初予算案のポイントは何ですか。
「24年度に策定した8カ年の基本計画で掲げた『持続可能な未来を確保し、あらゆる世代が安心して住み続けられる世田谷をともにつくる』を実感できるように、目玉施策の一つとして子育て・若者夫婦世帯の定住・住み替え応援事業“ずっと、世田谷。”を新規で盛り込んだ。子育て世代の30代、40代の人口が減っていると同時に0歳から4歳の転出超過傾向が続いている。持続可能な区とするため、転出抑制につながる居住支援は、単なる経済的支援ではなく、地域の活力を維持するための重要な施策と捉えている」
―地域経済の持続可能な発展を支えるデジタル地域通貨「せたがやPay」の利用機会を拡大する計画です。
「スマートフォンのアプリケーションを用いて区内外の利用者が区内加盟店でキャッシュレス決済が可能で、1月末時点で加盟店舗は前年同月比11%増の6322店、アプリは同30%増の55万9542ダウンロード、累計決済総額は同45%増の約494億円となっている。アプリ利用者の9割以上が世田谷区民だ。区基本計画の重点政策の一つとして掲げる『安全で魅力的な街づくりと産業連関による新たな価値の創出』のうち、『多様な地域産業の持続可能性確保に向けた基盤』に位置付けている」
「26年度の当初予算案では、マイナンバーカードと連携する『せたがやPay区民認証』や、定住・住み替え応援事業、シティープロモーションに関する活用など行政施策におけるインセンティブ基盤強化で用途拡大する新規事業を複数計上している。区内経済の発展に資するデジタルプラットフォーム(基盤)としての役割だけでなく、非経済的価値も下支えする基盤として確立、発展させたい」
―産業活性化拠点「HOME/WORK VILLAGE(ホームワークヴィレッジ)」の現状と今後の支援策は。
「『HOME/WORK VILLAGE』は、旧区立池尻中学校跡地を活用し、既存産業の再活性化や新しい価値を創出する人材の育成など、区内産業のイノベーションを創出·加速し、地域経済の持続的な発展を目指す拠点として25年4月に開設、同7月にグランドオープンし、好スタートを切っている。26年度もハンズオン支援事業や維持管理経費などを予算案に計上した。このほかにも、事業計画に定め、アクセラレータープログラムや創業セミナーなど事業者支援の取組みを進めていく」
―持続可能な区として、都市インフラの整備も重要です。
「26年度当初予算案に新規で民間路線バス事業者への支援策として2億8894万円を計上した。減便抑制、労働環境改善、運転士の社会的認知度向上の3方向から取り組む。利用者数がコロナ前に戻りきっておらず、また、運転士不足に伴う減便や路線廃止も発生している。持続可能な地域公共交通の確保に向けて、路線バスを区民の日常の移動を支える公共インフラに位置付ける」
―災害に強い都市基盤の整備に向けた取り組みは。
「道路は区民生活を支える重要な都市基盤であり、災害時には大きな役割を果たす施設となる。区内における道路ネットワークの状況は十分とは言えず、計画的に道路整備を進めている。公園・緑地の整備も重要だ。世田谷通りに面した上用賀公園拡張用地に防災拠点となる施設などを整備中だ」
―目黒区の自由が丘駅周辺まちづくりで同区と連携しています。
「目黒区が東急大井町線を連続立体交差事業として認められるように動いており、ノウハウを持つ世田谷区として何ができるか見極め中だ」
―区内の中小企業経営者にメッセージを。
「区内モノづくり製造業をはじめ、これまで地域を支えてきた区内産業の基盤を強固にし、区の経済活動のさらなる活性化と振興を促進していくことが重要だ。時代背景を踏まえた世田谷工業の競争力維持と活性化に取り組むとともに、区内工業の魅力発信と未来のモノづくり人材育成につながる連携や取り組みを積極的に後押ししていく」
