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南東京特集
品川・大田両区 昭和から令和まで <衣・食・住・生活空間>人々の暮らし まるわかりガイドマップ
2025年は昭和元年から数えて100年目の節目の年。品川・大田両区には、昭和の庶民の暮らしを展示している「昭和のくらし博物館」をはじめ、昭和から平成を経て令和の現在まで、人々の暮らしの移り変わりが分かる観光スポットがたくさんある。「衣」「食」「住」に加え、日本人の「生活空間」に溶け込んでいるカメラや香りに関する施設もある。
① 杉野学園衣裳博物館 【衣】
杉野服飾大学などを運営する杉野学園はおよそ100年前の1926年に杉野芳子によって設立された。大正時代に杉野芳子は米国で洋裁技術を身につけ、日本での洋装の普及・定着と服飾技術の習得による女性の自立を目指し、同学園を開校した。
衣裳博物館は57年に設立。「西洋」「日本」「民族」「現代」などのカテゴリーで服飾資料を展示している。日本マネキンの歴史的遷移を知ることができる50—70年代の楮(こうぞ)製紙製マネキンも収蔵。杉野芳子コレクションも保存する。
同館は杉野学園の服飾教育を支える研究施設としての役割もある。服飾に関する調査や研究、資料の収集・公開を通じ服飾文化の認識と理解を深めることも目的としている。
基本情報
▽所在地=品川区上大崎4の6の19▽電話=03―6910―4413▽開館=10時―16時▽休館=日曜日、祝日、杉野服飾大学の定める日▽入館=一般300円▽交通=JR、東急、東京メトロなどの「目黒」駅
② 容器文化ミュージアム 【食】
東洋製缶グループホールディングスが運営する容器文化ミュージアムは、容器の歴史とともに人類が容器を使うことでいかに生活が豊かになったかを学べる施設だ。多種多様な容器を取り上げて紹介し、運搬や保存に便利で中身を守る、中身の情報を的確に伝えるといった包装容器が担ってきた重要な役目をあらためて実感できる。
歴史を辿るコーナーでは缶詰の原理を発明したニコラ・アペールをはじめ、70年以上前に広島県尾道市で製造された赤飯の缶詰、戦場で正月を祝うためエビやタイ、きんとんといった正月料理を詰め合わせた「口取缶詰」のレプリカなど目を引く展示が多い。紙、ビン、缶、プラスチックなど素材の変遷とともに環境問題も学べる。
基本情報
▽所在地=品川区東五反田2の18の1▽電話=03―4531―4446▽開館=9時―17時▽休館=土日祝日など▽入館=無料▽交通=JRなどの「大崎」駅または「五反田」駅
③ 大森 海苔のふるさと館 【食】
日本で海苔づくりは1700年代前半の江戸時代の享保の頃に東京湾で始まった。浅瀬が広がる東京の大森から品川の周辺は一大産地として発展し、ここから全国に海苔づくりが伝わったため、大田区の海辺は“海苔のふるさと”といわれる。東京都沿岸部の埋め立て計画のため、同地域では1963年に生産を中止。現在は海苔のふるさと館でその歴史を学ぶことができる。
同館では大田区に唯一残る海苔船(全長13メートル)のほか、当時の海苔づくりを伝える貴重な文化遺産が多く展示され、伝統の手わざを体験できる。年間を通じ親子で楽しめるイベントも多数開催。なかでも「海苔つけ体験」は自分で作った海苔を食べられるとあって、応募者殺到の企画だ。
基本情報
▽所在地=大田区平和の森公園2の2▽電話=03―5471―0333▽開館=9時―17時(6月—8月は19時まで)▽休館=第3月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始▽入館=無料▽交通=京急「平和島」駅など
④ ニコンミュージアム 【生活空間】
ニコン創立100周年プロジェクトの一環で2015年10月に開館した。ニコンの本社移転に伴い、24年10月にリニューアルしてからもうじき1年となる。ニコンが100年前の1925年に開発したJOICO顕微鏡をはじめ、半導体・FPD露光装置、測量機、望遠鏡、カメラなど「伝統と革新」を象徴する製品と技術をエピソードとともに紹介している。
特に歴代カメラなど約500台をそろえた展示コーナーは圧巻の一言。59年発売の一眼レフカメラ「ニコンF」、40年後の99年に発売したデジタル一眼レフ「ニコンD1」などカメラの歴史を大きく変えた名機が時系列に並んでおり、技術革新の歴史をたどれる。“後学”のためにも一見の価値ありだ。
基本情報
▽所在地=品川区西大井1の5の20▽電話=03―6743―5600▽開館=10時—17時30分▽休館=月曜日、日曜日、祝日、同館の定める日▽入館=無料▽交通=JR「西大井」駅など
⑤ 高砂コレクションギャラリー 【生活空間】
高砂香料工業本社内の受付フロアにあるギャラリー。香りに関する国内外の多様な時代の多彩なコレクション1037点を所蔵し、ごく一部を毎回企画展で紹介している。
およそ100年前の日本は合成香料がようやく作られ始めた時期。輸入に頼っていた天然香料と混合し、香水や石けんなど複雑な香りの素となる調合香料が出始めていた。第2次世界大戦後も欧米製の調合香料に頼っていたが、1970年代に分析機器が発達し、香料の組成の理解とともに調合技術が進み、トイレタリー用品などへの普及が進んだ。
ギャラリーでは日本人にとって「香」の果たした意義を振り返られる2025年度の企画展「日本の雅―香文化の1400年」を12月12日まで開催中。高砂コレクション所蔵の香道具を展示している。
基本情報
▽所在地=大田区蒲田5の37の1ニッセイアロマスクエア17階▽電話=03—5744—0511▽開館=9時30分—17時▽休館=土日祝日、年末年始、同社休業日▽入館=無料。大人数の場合は事前予約▽交通=JR「蒲田」駅または京急「京急蒲田」駅など
⑥ 昭和のくらし博物館 【住】
昭和26年に建てられた住宅が今もひっそりとたたずむ。小泉和子館長の父で建築技師だった小泉孝氏が設計した自宅が登録有形文化財となり、現在は博物館として公開されている。映画やドラマのロケで使われることも多い。
同館では両親と4姉妹の6人が暮らした昭和20—30年代の姿が再現されている。玄関に入ればすぐに洋間の書斎があるモダンなスタイルで、その奥には茶の間と台所、座敷、2階には子ども部屋と、懐かしさとともに目新しさも感じられる。
エアコンがない当時は夏はすだれをかけ、冬は火鉢にあたる。四季に応じ生活スタイルを変える庶民の工夫が詰まっている。現在にも通じる暮らしのヒントが見つかるはずだ。
基本情報
▽所在地=大田区南久が原2の26の19▽電話=03—3750—1808▽開館=10時—17時▽休館=月-木曜日、年末年始など▽入館=大人500円▽交通=東急「下丸子」駅または「久が原」駅
⑦ 五十嵐健治記念洗濯資料館 【衣】
白洋舍の創業者で日本のドライクリーニング創始者でもある五十嵐健治を記念した資料館。創業者の功績や白洋舍の歩みが分かるだけでなく、実際に使っていたドライクリーニング機械や、ホームクリーニングでも使われていた炭火式アイロンなどを通して、生活の一部に組み込まれている洗濯の歴史が学べる。当時の洗濯の様子を描いた西洋絵画と見比べられるのも特長的だ。
日露戦争後、被服文化が和服から洋服に少しずつ変化。絹や綿主体の着物文化に、羊毛を主体とした軍服や背広が入り込んできていた。ドライクリーニングが国内で発達するきっかけとなった。
2026年に創業120周年を迎えることから同館を26年1月に刷新する予定だ。
基本情報
▽所在地=大田区下丸子2の11の8白洋舍本社ビル1階▽電話=03—5732—5111▽開館=10時—17時▽休館=土日祝日、年末年始、臨時休館日▽入館=無料。受付タブレットから連絡▽交通=東急「下丸子」駅または「武蔵新田」駅
