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南東京特集
地域金融のSDGs/環境・社会課題解決に貢献
中小企業や地域社会と密接に関わり、その持続的発展を支えている地域金融機関。国連の持続可能な開発目標(SDGs)に取り組むことで、環境や社会課題の解決に貢献し、取引先や地域社会からの信頼を強めている。その取り組みを顧客基盤の維持・拡大や新たなビジネス機会の創出、地域経済の活性化にもつなげていく。
さわやか信用金庫/大田区と包括連携協定 取り組み強化
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昨年12月に認定された「SDGsおおたスカイパートナー認定証」を持つ伊藤執行役員
さわやか信用金庫(東京都大田区、篠啓友理事長)は2024年3月に大田区と包括連携協定を結んだ。本部と16支店・2出張所を置く同区とは、これまでも産業振興や観光振興、国連の持続可能な開発目標(SDGs)など多方面で連携してきたが、協定締結により、幅広い分野で連携を強化し、区の持続的な発展につなげる考えだ。
連携施策の一つに、SDGsの推進を掲げている。同区がSDGsの達成に向けて優れた取り組みを提案する都市として、内閣府から23年度の「SDGs未来都市」などに選定されたこともあり、同信金との意向が一致した。同信金は21年に「SDGs宣言」を公表。地域社会の一員としてSDGsの達成に向けた取り組みを通じて持続可能な社会の実現に努めている。
連携協定を結んだこともあり、SDGsの達成に向けて取り組む区内事業者向けに区が独自に制度化した「SDGsおおたスカイパートナー制度」に応募。審査を経て第1期に認定を受けた。1月から3年間の認定期間が始まった。
創立100周年へ 未来への挑戦
同信金は26年度に創立100周年を迎えることから、同年度を最終年度として策定した「3カ年計画」のテーマを「100周年、未来への挑戦」としている。伊藤浩康執行役員コンサルティングセンター長は「次の100年に向けて、SDGsへの取り組みや大田区との包括連携を通じて、顧客との関係性を強化してきたように、よりいっそう“経験価値”を高めていきたい」と意気込みを見せる。
横浜銀行/神奈川県真鶴町などと4者連携協定
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6月27日に真鶴町民センターで行われた4者による連携協定の調印式
横浜銀行は神奈川県真鶴町、横浜国立大学、NPO法人ディスカバーブルーの4者で、生物多様性保全に関する連携協定を締結した。金融機関と自治体、大学、NPO法人が生物多様性保全を目的に連携する協定は、全国的にも先進的な取り組みといえる。各機関が持つ資源を有効活用し、相互に連携・協力することで生物多様性保全に貢献する。
横浜銀はこれまでも、行員やその家族向けのワークショップを開催したほか、3月にディスカバーブルーが主催し真鶴町が共催した海についての学びを深めるイベント「海のミュージアム」にも協賛してきた。これまでの3者の連携に横浜銀が加わることで、海と関わりのある人々に限らず、より幅広い社会全体へのアプローチが可能となる。
今後は海のミュージアムを年間15回程度開催するほか、横浜国大臨海環境センターや海洋調査船を活用した海洋教育プログラムも実施する予定。研究者や漁業者らによるシンポジウムや、研究者と市民が対話できる場である「サイエンスカフェ」の開催も継続し、さらに発展させる方針だ。
自然再生の行動・啓発 積極化
同行地域戦略統括部の梅垣倫子アシスタントリーダーは「地域金融機関としてネイチャーポジティブ(自然再生)に向けた地域社会の行動変容に貢献すべく、生物多様性保全に関する啓発活動に取り組んでいる」とした上で、「豊富な資源と専門的な知見を有する3者と連携して取り組めることは大変心強い。今後、全国にも同様の取り組みが広がれば」としている。
商工中金 大森支店/中小企業の戦略的な取り組み支援
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取り扱い開始以降、7月末時点で9先49億円のインパクト融資を実行した
中小企業を取り巻く外部環境が大きく変化する中、持続可能な社会の実現や中長期的な企業価値の向上に向けて中小の戦略的な対応が期待されている。こうした社会的要請の変化に商工中金の取引先企業がしっかりと対応してサスティナビリティー(持続可能性)経営を実現できるように始めたのが、ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)だ。
PIFは企業の「社会的価値」「経済的価値」「働き手の幸せ」を総合的かつ持続的に高めていくことを目的とした伴走支援型の融資。企業活動が環境・社会・経済に対して与えるインパクトや国連の持続可能な開発目標(SDGs)への貢献などを包括的に評価・分析し、KPI(重要業績評価指標)を設定。定期的にモニタリングする。
インパクト融資 先数伸長へ
商工中金が2022年度にPIFの取り扱いを始めて以降、大森支店では7月末時点で9先49億円の融資を実行した。25年度もすでに2先に融資した。それ以外の取引先とも対話を進めており、融資先数は伸長しそうだ。
PIFを活用した取引先からは、サステナビリティー経営を継続する上で取り組むべき事項が明確になった点や社員の意識醸成につながった点が利点として上がってきている。
大森支店の鈴木幸次支店長は「中小企業の課題解決と成長支援に向き合うソリューションカンパニーの実現に向けて、ソリューション提供力を強化し、SDGsなどに対する中小企業の取り組み支援を通じて、中小企業の企業価値向上に全力で取り組んでいきたい」としている。
東日本銀行/顧客のサステナビリティー経営 支援
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大和バルブは経験豊富なシニア人材を積極的に活用する
東日本銀行は親会社のコンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)が掲げるサステナビリティー(持続可能性)方針に基づいて融資に取り組んでいる。顧客には国連の持続可能な開発目標(SDGs)実現への取り組みやサステナビリティー経営に向けた支援を積極展開中だ。
優良取引先にビル建築設備用バルブなどを製造する大和バルブ(東京都品川区)がある。40年来取り引きがある東日本銀の支援の下、2022年9月に「SDGs推進宣言書」を作成した。特に力を注いでいるのが、目標8の「働きがいも経済成長も」などに該当する「シニア人材の活用」だ。
シニア人材 積極的に活用
大和バルブの大石秀晴副社長が「企業文化」と言い切るほど、シニア人材が社に根付いている。高齢者が生き生きと暮らせるように、定年後も希望者は全員再雇用し、働ける環境がごく当たり前に用意されている。60歳以上のシニア人材は全従業員約130人のうち10%程度を占める。70歳を超える人材もいれば、60歳を超えてから転職して入社する人材もいる。いずれも営業ノウハウや熟練技能を最大限考慮し金銭的処遇を決める。大石副社長は「人材不足の中で、経験豊富な人材をどう残し活用するのかは、経営戦略上、非常に重要だ」と強調する。
東日本銀は今後もSDGs実現への取り組みやサステナビリティー経営などで顧客を支援し、持続的な企業価値を高めるとともに、優良な既存顧客の満足度の向上や潜在顧客の獲得に力を注ぐ。
