-
業種・地域から探す
続きの記事
南東京特集
我が社の取り組み/持続可能な社会を目指して
持続可能な社会の実現に向け、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に意欲的に取り組む企業が増えている。環境問題や社会課題が企業活動に直接的に影響を及ぼす時代になったためだ。企業はこれら課題に真摯(しんし)に取り組むことで中長期的な企業価値の向上や持続的成長の実現にもつなげる。
日東工器/切削液回収ユニット「HK—400A」 24ボルト駆動でエア配管不要 現場作業を効率化
-
切削液回収ユニットを紹介する高橋執行役員
日東工器は迅速流体継手「カプラ」や機械工具などの製造・販売を手がける。カプラは空気や液体などの配管を素早く接続・分離できる機器で、これまでに2万5000種類以上を開発し国内トップシェアを有する。
2026年に70周年を迎える同社は創業以来、省力・省人化をテーマに時代のニーズに応える製品を投入してきた。切削液回収ユニット「HK—400A」も現場作業の効率化に貢献する製品の一つだ。油性切削液にも対応し、工作機械から切粉とともに排出された切削液を自動回収する。マグネットで機械に簡単に設置できる。24ボルト駆動でエア配管も不要。プロセスポンプやエジェクターからの切り替えで省エネにつながる。
切粉の吸引を防止するストレーナーも同梱。ウエスやスコップを使った回収作業を省人・省力化し、オイルパンや切粉台車に貯まった油を効率よく回収できる。高橋政樹執行役員は「メンテナンスも容易で、補用品も充実している」とし、部品交換によって長く使えることも強調する。
エアコンプレッサーは工場での使用電力の約20%を占めるとも言われ、高橋執行役員は「その使用量を減らせれば二酸化炭素(CO2)排出量の削減効果は大きい」と説く。
ヘッドスプリング/「グローバルサウス支援事業」に採択 電力供給モデル 積極的に構築
-
高速制御のコア技術を応用したシステムについて語る星野社長
ヘッドスプリング(東京都品川区、星野脩社長)は、パワーエレクトロニクス製品の開発・製造・販売事業を手がける。「すべての人が、電力の恩恵を享受できる社会の実現」を使命とし、「エネルギーの地産地消」を掲げ、電力インフラが十分に整っていない地域に向けたエネルギー技術の開発にも力を注ぐ。
同社の強みは炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)といった次世代パワー半導体を活用した高効率な電力変換技術にある。同技術を活用し、再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせた「自立型エネルギー貯蔵システム」を開発。電力系統に依存せずに高出力の供給を実現した。
同システムは停電が頻発する地域や電力インフラが未整備な場所においても安定した電力供給を実現する。電気自動車(EV)用の充電インフラや産業用電源としての活用に加え、農業分野や災害時の非常用電源としての利用も見込まれており、主に新興国を対象に実証と導入を進めている。2025年には経済産業省の「グローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)支援事業」に採択され、インドでの実証実験を開始した。星野社長は「持続可能で実用性のある電力供給モデルの構築に向けて、今後も積極的に取り組みたい」としている。
大崎電気工業/スマートメーター「らくらく検針」 多様な計測ニーズに対応、省人化・脱炭素化に貢献
-
「らくらく検診」システムで使われるスマートメーター
大崎電気工業は電力会社向けスマートメーター(通信機能付き電力量計)の国内トップメーカーだ。高い品質と信頼性が求められる生産現場の中で培われた技術力を生かし、さまざまな社会課題を解決する製品・サービスを電力会社以外の顧客にも提案・提供する事業を拡大している。
使用電力量を遠隔で自動検針する「らくらく検針」は、人や環境に配慮したサービスとして展開中だ。検針業務では料金請求のためにスマートメーターの数値を確認し記録する。検針担当者が実際に施設を訪問し、目視で使用量を確認している場合もある。
同サービスを商業施設など管理主体が導入すれば、検針担当者はクラウド上でメーターごとの使用量や料金を一括で確認・集計できる。検針業務の省人化や従事者の負担軽減につながるほか、現地訪問の削減により、車両移動に伴う温室効果ガス排出量の削減にも貢献する。脱炭素化を背景に、太陽光発電設備や蓄電池向けの需要も高まっている。
今後について、GXソリューション部の鈴木達也部長は「多様化する計測ニーズに応え、省人化や脱炭素化などの社会課題の解決に貢献しながら、持続可能な成長の実現を図りたい」としている。
巴工業/バイナリー発電装置100キロワット級開発中 効率的な熱利用提案 全方位でコーディネート
-
バイナリー発電工程
巴工業は遠心分離機を製造・販売する機械事業と化学工業製品を輸入販売する化学品事業を手がける。遠心分離機のシェアは国内トップ規模で、デカンタ型遠心分離機のパイオニア企業でもある。多岐にわたる製品群を持つ巴工業が現在力を入れているのが、バイナリー発電装置だ。
バイナリー発電装置は焼却炉排熱、産業排熱、バイオマスボイラ、地熱などから排出される熱エネルギーを電力に変換するシステム。未利用エネルギーを有効活用でき、エネルギーコストとともに二酸化炭素(CO2)排出量も減らせる。現在は30キロワット級のシステムを提供しているが、2026年の実用化を目指し100キロワット級も開発中だ。
バイナリー発電装置とともに、効率的な熱利用を提案できるのが同社の強みであり、その営業活動も強化している。発電装置を売り込むだけではなく、工場や製造現場を分析し、いかに熱利用が可能かを提案する。チタン製や樹脂製の熱交換器などのほか、農業や養殖といった別の領域での熱の利用を勧めるなどコンサルタントのような活動を展開している。「すべてをコーディネートする。全方位で熱利用全般に関わっていく」とバイナリー営業部の岸上隆行部長は意気込む。
加藤製作所/ハイブリッド式ラフテレーンクレーン 建設現場の環境負荷軽減、脱炭素化に貢献
-
SR-250HV+EK-UNIT
加藤製作所は建設用クレーンや油圧ショベルなどの建設機械・特装車を手がける。クレーン車のシェアは国内トップクラスを誇るほか、建設現場のさまざまなニーズに対応した製品をグローバル展開している。
建設現場の環境負荷軽減や脱炭素化に貢献するため開発したのが、世界初のハイブリッド式ラフテレーンクレーンだ。ディーゼルエンジンと電動モーターを組み合わせたシステムを搭載。従来機種に比べ走行時の二酸化炭素(CO2)排出量を最大約40%削減できる。電動モーター駆動により現場作業時の低騒音化も実現した。
クレーン作業時のCO2排出量は最大約20%の削減効果が見込める。外部電源油圧供給ユニットもセットで提供しており、太陽光発電や風力発電などによるグリーン電力を使用すればCO2排出量は実質ゼロになる。
「完全に電動化すると価格が跳ね上がるほか、公道を走る上でも不安が拭えない」と前田英智執行役員は明かす。同社の経営理念「優秀な製品による社会への貢献」にある通り、環境対策はもちろん重要だが、「使ってもらえなければ社会に貢献できない。これからもユーザーに選ばれるモノを提供していく」(前田執行役員)方針だ。
池上通信機/サステナビリティ推進グループを新設 働く人の多様化や環境に対応した製品開発
-
4K/HDのポータブルカメラシステム「UHK—X700」
池上通信機は放送、セキュリティー、医療、検査向けに映像関連製品・システムを手がける。4月にサステナビリティ推進グループを新設した。働く人の多様化や環境に対応した製品開発、社員が健康に長く働ける環境づくりにさらに力を入れる。
女性カメラマンも増える中、多様な働き手のニーズに応えるため、同社は放送業界向けにポータブルカメラシステム「UHK-X700」を開発した。人間工学に基づいた機構設計で、低重心かつ安定性が高い。番組制作などで広く使われている。
また、環境配慮製品を社内審査で認定するエコプロダクツ認定制度に関する取り組みを強化。2024年度の新製品に占める割合は90%を超えた。今後は協力会社と共に二酸化炭素(CO2)削減や製品の省電力化を進める。
社員の心身の健康促進にも力を入れる。25年3月、経済産業省から健康経営優良法人の認定を受けた。24年度の育児休暇の取得率は100%。対象者に積極的な利用を促したことが功を奏した。
サステナビリティ推進グループの蔵澄明子課長は「以前は総務と兼務だったが、専門組織となり他部署と連携しやすくなった。今後は包括的に進めたい」と意気込む。
