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南東京特集
南東京の信金トップに聞く
南東京エリアに本店・本部を置く2信用金庫のトップに会った。城南信用金庫は6月に就任した林稔理事長が行内の意識改革の取り組みを中心に語り、さわやか信用金庫の篠啓友理事長は2026年の創業100周年を踏まえた施策を話した。
若手職員のアイディア事業化へ 信金の公益性磨く/城南信用金庫 林 稔 理事長
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城南信用金庫 林 稔 理事長
―6月に理事長に就任しました。金庫内の若手を中心にした意識改革とも言える取り組みを推進しています。
「2000人の職員がいて若い人も多い。5年後、 10年後に良い形で当金庫の収益基盤を引き継げるようにしたい。その一環で職員のアイディアを事業化していく。 ワークショップで自らのアイディアをプレゼンテーションし、皆で話し合って決めていく。新しい事業が簡単に成功するとは思っていない。取り組みを通じ、前を向いて何かやりたいと行動する人がたくさん出れば組織は活性化する。将来、社会貢献になり、信金の本来業務を補う事業が生まれるのを期待している」
―将来の収益の種まきであり、若い職員に自己実現の場を与える試みだと認識しました。
「そうだ。自己実現できるかできないかは本人次第だが、若い職員がアイディアを出して事業化できる機会を設けたい」
「この業界に30年間ほど身を置いて、金融機関の変遷を見てきた。本業はもちろん大事で本業に付随するものをしっかり固めなければ、その本業にかえってこない。コロナ禍で社会が様変わりし、柔軟に新しいことに挑戦しなければ乗り遅れる。けれど信金として決して曲げてはいけないものがある。それは社会貢献であり、公益性を磨くことだ」
―オンライン上のコミュニティー構想を検討しています。新しいデジタル時代の地域社会との関わりを探っているように感じます。
「信金としてリアル(対面)を大事にするのは当たり前だが、信金の業務や社会貢献の活動をオンライン上のコミュニティー空間で実現したい。バンキングアプリの基盤システムを活用すれば、コミュニティー空間を構築できる。最初から何万、何十万人の規模にはならないだろうが、区民や行政、企業、商店街などが参加することを想定している。行政が助成金制度などの施策を発信したり、当金庫がクラウドファンディングを展開したりと、様々なことができるようになる。信金の一番の課題である若年層取引の拡大も活路が出てくると思う。挑戦する価値はあると思う」
―スタートアップ企業や事業承継に課題のある企業に対する、資金の新しい拠出を考えています。
「スタートアップを対象にするファンドに資金を出す。また、融資だけでなく、議決権を持たないかたちでスタートアップ企業を資本から支援したい。一方、後継者不在の中小企業からの相談が多い。そうした複数の中小企業をまとめた支援策を検討する」
―営業エリアである地域社会への貢献を、これまでにも増して意識しています。
「入職した当時は現在4兆円の預金残高がもっと少なく、今よりも規模が小さい金庫だった。こうして発展できたのは、地域が発展したことが最大の理由だ。地域と信金がともに発展する構図はこれからも同じだ。信金同士が競争する時代ではない。近隣の信金とも手を組んで地域を盛り上げ、地域の人に信金があって良かったと思われるようになりたい」
26年11月に創業100周年 地域を育て、次代につなぐ /さわやか信用金庫 篠 啓友 理事長
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さわやか信用金庫 篠 啓友 理事長
―コロナ禍を経験した地域の中小企業の変化をどう見ていますか。
「コロナ禍による健康不安から、ベテラン経営者の事業承継への意識が高まり、当金庫への相談も増加した。事業承継の支援には繊細な内容が含まれ、経営者や家族と腹を割って話せる関係が必要だ。そういう相談をしていただけるということはありがたいことだ。信頼感を得て、さらに踏み込んだ課題解決型の提案を継続的にできる顧客を増やしたい。4月に始動した新中期経営計画で、こうしたリレーションシップ先(親密先)を1万先増やす」
―新中計は2026年11月に迎える創業100周年を踏まえた内容です。「地域の持続的発展と明るい未来の創造」をうたっています。
「やはりリレーションシップ先の拡大に通じることだ。安心安全の暮らしには地域コミュニティーが大事。しかし高齢化や人口減少とともにコミュニティーが薄れている。古くからある企業が地方に移転し、その跡地に超高層マンションができ、新しい人たちが住むようになった。新たに地域の中核となる企業や個人との関係を構築し、リレーションシップ先を増やす必要がある」
「様々なイベントやマッチングの機会などを通じて、参加者同士の交流を創出している。これは地域のコミュニティーを強化し、次代につなぐ一助となっており、地域にとっても有益だと思う」
―前中計で集金中心の営業から課題解決型営業への転換を進めました。
「引き続き、課題解決型営業に注力する。例えば、新たに簡易経営改善計画による資金繰り支援を始めた。モニタリングを通じて職員が資金繰り表を作成し、厳しくなる前に資金繰りの相談を行う。早目に準備することで、安心して事業に取り組んでいただくことが目的だ」
―資金繰りをはじめ、地域企業の経営状況はいかがでしょうか。
「定点調査では、コロナ禍前の売上高を回復した顧客が全体の6割あり、増収も2割あった。一方、資金繰りが厳しいという先もじりじりと増えている。価格転嫁の状況は二極化が進み、品質管理や納期に強みのある企業は価格転嫁ができ、そうではない事業者や三次下請けなどは難しい。賃上げはまだ2割強にとどまる。社会課題の人手不足は、特に建設や飲食が顕著だ」
―これまで以上に課題解決型の支援が求められる経営環境のようです。
「補助金や融資制度、価格交渉や人手不足対策などのセミナーを行っている。セミナー後に価格交渉をして単価引き上げに成功し、黒字転換した企業がある。また同業種交流会では販路開拓に悩む事業者の受注拡大につながっている。10月18日に開催する恒例の「物産展」では、製造業、建設業の交流会を開き、前回同様に計500ほどの商談を予定している」