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中部の工作機械産業
中部地区はモノづくり産業の一大集積地。製造業を支える工作機械や周辺機器メーカーも多く立地する。足元では日米関税交渉は合意に至ったものの現状より税率が上がる状態が続くことになり、世界経済への影響も不透明だ。設備投資については一部で慎重な姿勢もみられるようになっている。そうした中、中部地区の工作機械産業は世界経済や市場の動向を冷静に注視しつつ、持続的成長に向けた手を打っている。
高精度加工支援する機器/小型MC用高圧ノズル
ユーベック(名古屋市千種区)は、小型MCでの加工時にノズル径1ミリメートルで、毎分40リットルのクーラント液を15メガパスカル(メガは100万)の高圧で吐出するクリーンジェットノズルを開発した。
点検や清掃の負担軽減のほか、工具が従来比2倍以上に長寿命化するという。自社製の精密濾過装置と組み合わせたシステムとして販売する。
30番、40番主軸の小型MCが対象。高流速、大流量のクーラント液を、刃具先がワークに接する「逃げ面」に当てることで摩擦熱が蓄積しにくくなり、刃具の長寿命化につながる。少量のエアで吹き流しながら刃具に当て、高効率切削加工と同時に洗浄機と同等レベルで切りくずを除去する。
旋盤用チャックの電動化機構に新機能
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「サーボチャックアクチュエータ」の駆動部
プラスエンジニアリング(静岡県磐田市)は、数値制御(NC)旋盤用チャックの動力源を油圧からサーボモーターに置き換える機構「サーボチャックアクチュエータ」を提案する。同機構はサーボモーターとギアでチャックを駆動するため油圧ユニットが不要になり、消費電力を1割以下にできる。
サーボモーター駆動によりNCでチャックのクランプ力や開閉位置を細かく制御できるため、同じワークで荒加工と仕上げ時にクランプ力を変えることができる。またワーク変更時の段取りを簡素化し、多品種を生産しやすくなる。
チャックがワークを掴んだ際にサーボモーターの保持ブレーキを作動する制御機能で、ワークを把持する間に電力を消費しない。
今後旋盤メーカーとも連携し、油圧レス化や省エネを含むメリットを訴求してユーザーを広げる方針だ。
長尺NC加工機拡充
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ATCを搭載し、一部作業の自動化も可能
サワイリエンジニアリング(静岡県菊川市)は、長尺ワーク向けNC加工機「SWS-11000-30ATC」を発売した。内蔵チップコンベヤーやワークが90度回転する装置で、一部作業を自動化できる。主な想定用途は長尺のアルミニウム押し出し材の穴開け。ワークの最大寸法は長さが10・5メートル、幅と高さが40センチメートル。ワークのクランプ機構は20台。主軸回転数は最大毎分1万5000回転、工具を30本収納するATCを搭載する。
主軸は中心を突き抜け、工具の先から最大7メガパスカルの圧力で切削液を噴射するセンタースルー仕様で、冷却と切りくずの排出を効率化できる。X・Y・Z各軸が実際に移動した位置を測り、制御装置にフィードバックする「スケールフィードバック」により、熱変位の影響を補正する。
省スペース対応棚型ストッカー
三栄商事(名古屋市東区)は工作機械や測定器、工具などを扱う商社で、グループ会社に自動搬送装置を得意とする浜名エンジニアリング(愛知県豊橋市)をもつ。近年はグループ間連携による自社商品開発を進める。人手不足の課題を解決するための自動化提案に注力しており、三栄商事が集めた顧客ニーズを基に浜名エンジが、棚型ストッカー「TARNAR(ターナー)」として製品化した。
高さ方向でパレットをストックするため、設置面積が少なくて済む。1パレット当たり20キログラムまで積載可能。16パレットの1列仕様と32パレットの2列仕様を用意した。顧客の要望に応じた個別対応も可能で列も増やせる。加工機と合わせてワークストッカーとして使用すれば、多品種少量生産を自動化できる。動画配信サイト「ユーチューブ」では、特徴を動画で紹介している。
保全に役立つ製品投入/1マイクロメートルのスラッジ濾過
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1マイクロメートル相当のスラッジを濾過できる白山機工の高精度フィルター装置搭載クーラントユニット
白山機工(石川県白山市)の高精度フィルター装置搭載クーラントユニットは、研削加工などで排出されるスラッジを含んだクーラント液から高精度にスラッジを回収できる。さらにフィルターメッシュ交換などにかかるメンテナンスコストを抑えた。1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)相当のスラッジも濾過できる。
フィルター装置内に送られたクーラント液は、内部で水位を上下させながらフィルターメッシュで濾過される。フィルターメッシュに付着したスラッジは水流や水位変動により剥がされ、フィルター装置の下部に沈殿する。下部にたまったスラッジは定期的に自動バルブより排出されるため、面倒なタンク清掃の手間が省ける。フィルターメッシュの目開きは0.3マイクロ—100マイクロメートルの中から選べる。
使用環境に合わせてマグネット式セパレーターなどの1次濾過装置との組み合わせも可能である。
IoTシステム好評
キラ・コーポレーション(愛知県西尾市)が提供する独自のIoT(モノのインターネット)システム「KONEKT」が好調だ。機械保全に役立つシステムとして開発し、23年から国内向けに出荷するMCや難削材加工機に標準搭載。現在は50台ほどが利用する。1台ごとに稼働状況や使用した加工プログラムなどの情報を蓄積し、顧客と共有。異常発生時にはコンピューター数値制御(CNC)画面を共有・操作しながら、同社の担当者が遠隔でサポートする。Ⅹ、Y、Z各軸の稼働状況や工具の回転数だけでなく、機械各部の電気信号データも記録、共有し消耗品交換時期の提案や、予防保全にも役立てる。
クラウドシステムを使用するため顧客はサーバー設置が不要で、クラウド使用料だけでIoTシステムを導入できる。
軽量で伸縮性高い保護カバー
ナベル(三重県伊賀市)は、工作機械向け保護カバー「ダイアモンド・フレックス」の販売に力を入れている。テレスコカバーよりコンパクトで軽量、高速動作に耐えられるなどの優位性を持つ。
工作機械の動きと連動して伸縮し、加工時の切り粉や粉じん、切削油などの液体から機械を保護する。細長いステンレスの薄板を伸縮する特殊設計の樹脂部品で連結した鎧のような構造。取り付けスペースが小さくて済み、工作機械の小型化に貢献する。軽いため伸縮に必要な動力を抑えられ、モーターを小型化、省電力化できる。
ダイアモンド・フレックスは独メラーヴェルケ(ビーレフェルト市)が欧州で展開。国内ではナベルが独占的に製造・販売する。
