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中部の工作機械産業
中部地区はモノづくり産業の一大集積地。製造業を支える工作機械や周辺機器メーカーも多く立地する。足元では日米関税交渉は合意に至ったものの現状より税率が上がる状態が続くことになり、世界経済への影響も不透明だ。設備投資については一部で慎重な姿勢もみられるようになっている。そうした中、中部地区の工作機械産業は世界経済や市場の動向を冷静に注視しつつ、持続的成長に向けた手を打っている。
工作機械受注、内需一進一退/米国関税が影響
日本工作機械工業会(日工会)が23日発表した6月の工作機械受注総額(確報値)は、前年同月比0・5%減の1331億6300万円と、9カ月ぶりに減少した。中国や北米を中心に外需は高水準を維持したが、横ばい圏内が続く内需の減少を補えなかった。
地域別では中国は同1・5%増の321億円と15カ月連続で増加した。米国は同16・5%増の249億円と5カ月連続で増加。航空宇宙関連や大手ジョブショップなどからの受注が増加し、高めの受注水準を保ったという。
日工会は2025年の工作機械の年間受注総額を前年比7・7%増の1兆6000億円と見通す。日工会の坂元繁友会長(芝浦機械社長)は「下期は上期を幾分上回る受注を確保できると見込んでいる。最終的に1兆6000億円を達成できると期待している」と述べた。
今後の懸念は、米国関税政策の影響。すでに企業の設備投資姿勢に影響が出始めている。中部経済産業局が16日発表した中部5県(愛知、岐阜、三重、石川、富山)の5月の総合経済動向によると、生産用機械の生産判断は4カ月連続で「横ばいとなっている」。主力の金属工作機械で中小企業を中心に設備投資に慎重な姿勢がみられるとしている。また中部経済産業局が東海地域の主要企業に対して実施したヒアリング調査では生産用機械の先行きについて「貿易摩擦や為替など海外経済の不確実性から先行きが不透明となっている」と総括した。
ただ中部地区の工作機械産業は決して悲観的になっていない。オークマの家城淳社長は5月の決算発表記者会見で米国関税政策が同国市場に及ぼす影響について「プラス、マイナス両方の影響があると思うがトータルではイーブンになるのでは」との見方を示した。「インフレなどの影響で中小事業体の投資が弱くなる可能性がある」とする一方、「米国で製造業が回復する起爆剤になる可能性もある」からだという。同社の2026年3月期の米州受注高は前期比15・6%増の725億円を予想している。
将来の成長見据え設備投資積極
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オークマが江南工場に建設中のエンジニアリングセンター(上)とイノベーションセンター(下)の完成予想図
先行き不透明感が強まる中でも中部地区の大手工作機械メーカーは次なる成長への布石を打っている。
オークマは将来の成長に向けた積極投資を実施している。2026年3月期はデジタル変革(DX)なども含めた設備投資額として前期比2・2倍の313億円を見込む。江南工場(愛知県江南市)は「再構築」(家城社長)と称し、工作機械の自動化仕様対応を担う「エンジニアリングセンター」と未来のモノづくりのあり方を提案する「イノベーションセンター」を建設し、25年12月に完成させる予定。機械単体だけでなく「モノづくりサービスのトータルソリューション」(同)の提供を強化するのが目的だ。可児工場(岐阜県可児市)では「収益改善策」(家城社長)として同社全体の物流拠点となる「オークマPDC」の建設を進めており25年8月の完成予定。海外では米国でのサービス体制の拡充を目的に新修理工場を建設し、25年12月に完成する計画だ。
ミネラルキャスト採用の立型MC
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自社製ミネラルキャストを初採用したヤマザキマザックの立型MC「VCN―460HDCC」
ヤマザキマザックは自社製ミネラルキャストを初めて採用した立型マシニングセンター(MC)「VCN-460HDCC」を市場投入した。構造体を鋳物からミネラルキャストに切り替えた。鉱石と樹脂を結合させた複合材料であるミネラルキャストは振動減衰性に優れ、機械稼働時の振動がより早く収束し、加工時間の短縮や工具の長寿命化の効果があるという。また製造時に鋳物のような高温融解炉は不要で常温で成形可能なため製造工程の電力使用量が鋳物より少ない。新製品のベースとコラムの製造では現行の鋳物を採用した場合と比べ50%以上の二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながった。
円筒研削盤のラインアップ拡充
ジェイテクトは2030年度に工作機械事業の事業利益率13・0%を目指している。24—26年度の第2期中期経営計画においてグループ内連携の強化、ターンキーソリューションの提案、ラインアップの見直しを推進する。ターンキーソリューションについては電池生産設備の源泉工程における提案を開始。ラインアップの見直しでは主力の円筒研削盤の「Gシリーズ」を拡充する。
同社は24年11月に開かれた日本国際工作機械見本市「JIMTOF」で「誰でもかんたん熟練加工」をコンセプトにした「G3P100L」を展示した。労働力不足、熟練技能継承の課題に対し加工対象物(ワーク)の剛性や加工寸法などの入力で最適な研削加工条件を自動決定する「らくらく自動決定」機能を提案。またステアリングメーカーとしての技術を応用した「ステアバイワイヤハンドル」をオプションで追加できる。電気信号で切り込みやテーブルの位置を調整するが、砥石(といし)と工作物の接触を手動機のように伝える手感覚を再現。手動にこだわる熟練技能者に配慮する機能も用意した。
Gシリーズは一般・精密機器や自動車業界をターゲットとした小型向け「G1」、中型向け「G3」を展開している。そこに建機・鉄鋼・その他産業機械をターゲットにした大型向け「G5」を追加する計画。25年度内に開発完了予定という。
