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中部の工作機械産業
中部地区はモノづくり産業の一大集積地。製造業を支える工作機械や周辺機器メーカーも多く立地する。足元では日米関税交渉は合意に至ったものの現状より税率が上がる状態が続くことになり、世界経済への影響も不透明だ。設備投資については一部で慎重な姿勢もみられるようになっている。そうした中、中部地区の工作機械産業は世界経済や市場の動向を冷静に注視しつつ、持続的成長に向けた手を打っている。
海外市場や新事業展開進む/インドなど強化
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ブラザー工業がインドに新設した工作機械工場「トゥマクール工場」の開所式(右から3人目が池田社長)
中堅・中小メーカーも新市場の開拓や構造改革、新事業の展開、新製品の投入などを進める。
ブラザー工業は2028年3月期まで3カ年の新中期戦略「CS B2027」において2000億円規模の成長投資を実行し、工作機械など産業用領域の成長を推進する方針を示した。同領域の売上比率を40%に高める計画で、BツーC(対消費者)からBツーB(企業間)に移行する姿勢を、より鮮明にした。
工作機械事業の重点エリアとして日本、中国、インド、欧州、東南アジアを設定し、それぞれ体制を強化する。その一つであるインドでは南部のベンガルール市近郊に工作機械製造拠点「トゥマクール工場」を稼働した。
小型MC「スピーディオ」2機種を製造する。現地生産によって短納期化を図り、伸長する自動車や2輪車などの部品加工需要を取り込む。
池田和史社長は同工場の開所式で「インドでの生産を通じてインドのお客さまや、この国の発展に一層貢献したい。皆さまの助力を得てさらなる高みを目指し、ともに成長していきたい」と意欲を示した。また営業強化に向け、インドで3カ所目となるショールーム併設型サービス拠点「ブラザーテクノロジーセンター」をプネ市に新設した。これまで拠点がなかった西部地区でマーケティングやテクニカルサポートを強化する。
組織体制適正化で黒字転換
FUJIは25年3月期連結決算において、工作機械を扱うマシンツール事業の営業損益が黒字転換を果たした。5期連続赤字が続いていたが水面上に浮上した。事業領域を得意とするターンキーに絞った上で、組織体制の適正化をはじめとした構造改革を推し進めた結果としている。ターンキーに絞った戦略について五十棲丈二社長は「手応えを感じている」と語り、今後も利益率の高い製品・サービスに特化して事業展開を推進する方針だ。
同社は27年3月期まで3カ年の中期経営計画について売上高1800億円、営業利益330億円という全体の目標は据え置いたまま内訳を見直した。マシンツール事業については売上高を当初の80億円から100億円に、営業利益を5億円から7億円に、それぞれ修正。あらゆる可能性を視野に入れ、ビジネスモデルの再構築を含めて検討していくという。
価格抑えた旋盤用パワーチャック
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生産改革により価格を抑えた豊和工業の3爪中空パワーチャック「H3KTA」
新たな思想による製品展開を始めるのは豊和工業。旋盤用3爪中空パワーチャック「H3KTA」を8月1日に発売する。製品自体は既存の「H3KT」のマイナーチェンジにとどまるが、それ以上に同社のパワーチャック事業にとって大きな意味を持つ新製品だ。最大の特徴は製品スペックを維持・向上しつつ価格を大幅に抑えた点にある。
同社は生産ラインの自動化、効率化を進め、つくり方を大きく変革した。H3KTAはそうした生産改革の成果を反映した第一弾の製品となる。価格は形式などにもよるが従来より3割程度下がったとしている。これまでの新製品は機能の向上とともに価格も上昇する傾向にあった。今回は原点に立ち返り、旋盤ユーザーである中小の加工事業者を強く意識して買い求めやすい価格に抑えた。
新たな視点でサービス生み出す
専用工作機械メーカーの西島(愛知県豊橋市)はユーザーとの接点機会を増やす新事業に乗り出した。ユーザーに対して主体的に訪問し、生産性などを高める最新技術・機能を提案する「エンジニアリングサービス事業」を本格化させた。これまでは納入した機械に対し修理や消耗部品の交換など不具合、故障発生時に対応するアフターサービスは行っているが、主体的な訪問はしていなかった。新事業では機械の稼働状況を見せてもらい納入時から進んだ技術によって、より生産性、操作性などの向上が見込める場合には、その導入を提案する。ユーザーへのフォローアップを強化し、同社製機械や同社自身の付加価値を高める。
循環経済を企業戦略へ
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キタムラ機械は用途に応じた機能追加でリユースを実現
キタムラ機械(富山県高岡市)は、欧州を中心に重要性が高まっているサーキュラーエコノミー(循環経済)を企業戦略の一つに据える。
性能をそのままにダウンサイジングしつつ耐久性も向上させて顧客のコストダウンを図る「リデュース」を、自社製制御装置のソフトウエアアップデートで「リサイクル」を、標準機の導入後用途に応じて多面パレットや自動工具交換装置(ATC)などを追加することで「リユース」を実現している。
これらの取り組みは、自動化のために機械本体を入れ替えずに済むので、サーキュラーエコノミーに貢献できる。同時に顧客の投資負担を軽減し、生産財である工作機械の長期使用を可能にすることから、付加価値を最大化できる。
また、標準機を導入して機械に使い慣れてもらい、必要になった際に多様な機能を追加できることから、同社がコンセプトとして掲げる「失敗しない自動化投資」も実現している。
