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エレクトロニクス京都
エレ企業、開発・投資に布石
中東情勢をはじめとする地政学リスクの高まりなどから世界には不透明感が漂う。今、地道に研究開発力やチャレンジ精神を発揮してきた京都企業の底力が改めて試されている。京都の代表産業とも言えるエレクトロニクス分野では、EV(電気自動車)市場の成長鈍化などが半導体需要に影を落とす。だが、京都企業は次世代通信や電池などを念頭に、開発・投資の布石を打っている。新たに生まれ変わる“リブランディング”で価値創造を図る。京都のエレクトロニクス企業の動向を追った。
強み生かしアップデート
京都のエレクトロニクス企業でトップ交代や、2030年代に向けた成長戦略を打ち出す企業が相次いでいる。取り巻く環境がめまぐるしく変化する中、新トップのもとで中長期の成長戦略を描き、実行する。従来の強みを生かしつつも、時代に合わせたアップデートをしようと苦悩する姿も垣間見える。
「事業の範囲が非常に広く、交流やシナジーが生まれない」―。京セラの新社長に就任した作島史朗氏は自社の課題をこう口にする。創業者・稲盛和夫氏の逝去後初となるトップ交代を迎えた同社。これまで稲盛氏がセラミックスを核に、多岐にわたる事業を立ち上げ、全体を俯瞰(ふかん)して束ねてきた。だが作島社長は「それぞれの運営は長年、部門に任されてきており、お互いのことが分かりづらい」と話す。
これまでも「垣根を取り払う」(作島社長)活動に取り組んできた。多角化は同社の特徴だが、さまざまな強みが京セラの各所に分散している状態ともいえる。シナジーを生み出し、成長につなげようと、作島新社長のもと31年3月期を見据えて企業価値向上に向けた施策を実行する。
株主資本利益率(ROE)を重要な経営指標として掲げ、31年3月期に8・0%以上(26年3月期は3・6%の見通し)を目指す。部品事業は先端半導体やモビリティー市場でシェアと収益性を向上する。ソリューション事業は高品質で高性能なモノづくりと顧客課題解決への貢献を組み合わせて価値を高める。
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記者に説明するロームの東克己社長
ロームでは創業者の故佐藤研一郎氏の薫陶を受けた東克己氏が25年4月、社長に就任した。同社は炭化ケイ素(SiC)パワー半導体の需要拡大をにらみ、ロームらしからぬ巨額投資に踏み切ったが、25年3月期は12年ぶりの当期赤字に陥った。こうした背景から公表済みの29年3月期までの3カ年中期経営計画では、生産拠点統廃合などの構造改革のほか、垂直統合生産体制などの強みを生かした成長戦略を打ち出している。
ただ足元で、ロームを取り巻く環境は激変している。アナログ半導体で協業してきたデンソーはロームに買収提案を持ちかけ、秋波を送る。一方のロームは3月末、東芝や三菱電機と、パワー半導体事業の統合を目指して協議を始めると公表した。他社との協業のあり方が、ロームの今後を左右する。
SCREENホールディングス(HD)は27年4月に新中計を始動させる。土台固めとして現中計期間では、事業ポートフォリオの組み替えに取り組む。複数のグループ会社にまたがる技術者や生産機能などのリソースを最大限生かす目的。大きく「エレクトロニクス」と「印刷」の2分野のうち、技術革新の速い前者から体制整備を始める方針だ。
求められる新たな企業統治/ニデックの動向注目
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謝罪する岸田社長
京都のエレクトロニクス企業で動向が注目されるのがニデックだ。同社ではグループの多岐にわたる拠点で、多くの不正会計事案が発覚した。第三者委員会による調査では創業者である永守重信氏の“絶対性”や、過度な業績へのプレッシャーが問題の原因だと指摘された。第三者委が提言するように、ニデックでは「永守氏の会社」からの脱却が急務。ガバナンスを整備できるかの正念場を迎えている。
ボトムアップ型へ変革がカギ
「不正確な情報を開示し、株主や投資家、市場関係者の信頼を裏切った」。ニデックの岸田光哉社長は第三者委からの調査報告書受領に伴い3月3日に開いた記者会見でこう述べ、陳謝した。同社では各事業を取り巻く環境や現場の実力から乖離(かいり)した目標が、株価を意識してトップダウンで設定されてきた。強力なリーダーシップに頼った経営から、ボトムアップ型へ変革できるかが、ガバナンス整備の肝となる。
第三者委の調査では不正の手口や背景が詳細に示されたが、本質的部分への深掘りが不十分との指摘もある。弁護士や大学教授らで構成する「第三者委員会報告書格付け委員会」は4月8日、同報告書に対する格付けを発表。「原因分析やガバナンスに関する検討が不十分」と指摘した。トップの方針や圧力がどう現場の不正に結びついたのか、課程を解明できるかも今後の焦点となる。
