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連携特集2024 京 de 創ル
グローバル企業や中小企業、スタートアップ、大学が集積する京都は、伝統と革新で産業競争力を高め、社会課題を解決するイノベーションを地域一体で育んできた。産学官金の連携・フレームワークで、健康寿命延伸や地球温暖化対策、デジタル変革(DX)などを後押しし、多彩なプレーヤーが共創する今の京都を探る。
企業・社会活性化、起業家支援へ 地域金融機関に高まる期待
社会課題の解決や地域企業・社会の活性化、課題解決を目指す起業家支援などで、地域金融機関に対する期待は年々高まっている。
京都フィナンシャルグループ/地域企業の役に立ち地域を守る
京都フィナンシャルグループ(FG)は、4月に「地域みらい共創事業」を始めた。本部・各部を横断した15人体制の「地域みらい共創室」を立ち上げ、1000億円の投融資枠も設定した。
地域産業の継続・発展をサポートし、未来へのイノベーションへとつなげるのが狙い。人材マネジメントや事業承継、デジタル変革(DX)などの「グループの総力を結集した総合ソリューション」と、資本性ローンや超長期ローンなど「安心感のある多様なファイナンス」で、創立以来大切にしてきた「地域企業の役に立つ」という、地銀の本業にあらためて覚悟をもって挑む。
高齢化や後継者不足を背景に、高い水準で推移する休廃業件数に対しては、地域の発展とともにある地域金融機関として、「地域を守る」という気概を持って、グループ全役職員で取り組む方針だ。
京都中央信用金庫/サステナブル経営実践へ伴走支援
京都中央信用金庫は、企業活動が環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響やネガティブな影響)を包括的に分析・評価し、その企業活動を継続的に支援することが目的の「京都中信ポジティブインパクトファイナンス(PIF)」の取り扱いを3月に始めた。2022年に賛同した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づき、30年度末までに同PIF含むサステナブルファイナンス実行額を累計5000億円と定め、取引先企業の脱炭素化を後押しする。
加えて、同金庫は6月に信用金庫で初めてとなる、事業活動と自然との関連の情報開示に関わる国際組織「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フォーラム」への参画も発表した。今後も、取引先企業のサステナブル経営の実践に向けた伴走支援を積極的に展開する方針だ。
京都信用金庫/店舗営業体制見直し、課題解決に注力
京都信用金庫は窓口営業時間を午前中のみとし、午後は顧客や地域社会の課題解決に特化する独自店「課題解決型店舗」を拡大する。昨秋にブランドネームを「コミュニティ・バンク京信」とした同金庫は、2025年に同型店舗を全体の約半数の47店まで増やす予定で、同店舗を通じた独自施策を強化する。
同型店舗は7月リニューアルの吉祥院支店(京都市南区)で21店になった。ほかの金融機関と一線を画す店舗施策で、社内制度改革が実現の背景にある。
同金庫は17年に営業ノルマを撤廃。目先の収益ではなく、顧客や地域に寄り添い、中長期的な関係性を構築する仕事への専念を可能にした。23年には地域特性に応じた課題解決活動を目的に営業地域を10エリアに区分。くらし、事業、地域の課題解決に向けて職員が主体的に行動し、支援する体制を構築した。
日本政策金融公庫/民間金融・支援機関と連携して起業家育成
日本政策金融公庫京都創業支援センターは起業家育成で民間金融機関や支援機関と連携し、多様な取り組みを展開している。女性起業家や学生起業家、スタートアップへの幅広い支援が特に好評だ。
同センターは地域の支援機関とともに、女性起業家のコミュニティー形成に取り組む中で、事業ステージの近い女性起業家同士がつながる場「サロン・ド・こまち」を提供している。2日開催の「女性起業家が語る起業の本音!」セミナーでは、サロン・ド・こまちと連携した交流会で、女性起業家間のネットワーク作りを促した。
6日には京都大学を会場として社会課題の解決を目指すスタートアップを招き、高校生が起業家の熱量に触れる機会も提供する。支援機関との連携を深め、若者への起業家教育やスモールビジネスからスタートアップまで幅広く支援していく。
ニチコン社長 森 克彦 氏/社内外でアライアンス戦略強化
ー電気自動車(EV)と住宅間で双方向に給電ができるビークル・ツー・ホーム(V2H)や蓄電池システムなど、エネルギー・環境関連製品を手がけるNECST事業が堅調です。
「V2Hシステムの工場があり、環境政策に力を入れる京都府亀岡市などと、4月に脱炭素や強靱化を目的とした協定を結んだ。国内外で災害レジリエンス(復元力)を高める必要があり、V2Hの海外展開に向けて課題の洗い出しにも着手している。ハードウエアを手がけてきた当社がNECST事業を拡大するには、通信ネットワークやソフトウエアの強化が必要。ソフト開発部署の強化に加え、社外とのアライアンス強化にも取り組む」
ー事業拡大に向けたアライアンス戦略は。
「コンデンサー事業では材料メーカーとのシーズ探索や、設備メーカーとの新たな生産手法の開発、生産技術の向上などに取り組んでいる。産学連携では東京大学生産技術研究所と協定を結び、8年にわたって、研究開発を推進。人間工学の観点から、NECST事業の製品の使い勝手を良くするといった研究テーマもあるなど、自由な雰囲気で産学連携に取り組めている」
ーコンデンサー事業の足元の状況は。
「コロナ禍をきっかけとした在庫調整の時期を抜け、少しずつ産業機器やエアコン向けコンデンサーの需要が戻ってきた。EV向けの需要は強くはないが、復調傾向にある。ハイブリッド自動車(HV)向けは堅調だ」
サムコ会長兼CEO 辻 理 氏/世界に通用する人材 産学で育成
ー化学気相成長(CVD)装置や洗浄装置など、半導体製造装置を手がけています。
「欧米のみならず世界から装置の引き合いが増え、国内よりも海外販売が伸びている。インドは、2022年にベンガルールに営業事務所を設けた。現状、年2-3台の機械が売れる程度だが、人口が中国を超え、今後も事業成長が期待できる面白い市場だ」
ー22年から京都工芸繊維大学で、材料科学の博士後期課程研究者を育成する寄附講座を開講しています。
「サムコを起業して40数年が経過、次世代育成の必要性を感じるようになった。コロナ禍をきっかけに若者が世界に目を向けない傾向が強まり、日本の学術レベル低下に拍車がかかっている。新製品開発など一般的な産学連携からさらに踏み込み、世界で通用する専門性を持つ人材を育成する。また企業に在籍する、45歳前後の技術者の再教育も狙っている。大学卒業から20年たつと、学んだことが古くなっていることが多い。専門性を磨き直し、第二の人生を開くことは、本人と社会の両方にとって重要だ」
ー京都市伏見区の東高瀬川地域に先端産業集積を目指す『東高瀬川ビジネスパーク構想』を主導しています。
「3月に本格始動した。ライフサイエンスと半導体の2本柱で研究会や市場分析会を定期開催する。京都の産業や科学技術の原点は〝人がやらないことをやる〟こと。新しいことを探し、違いを徹底的に調べ上げ、イノベーションにつなげる」