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連携特集2024 京 de 創ル
グローバル企業や中小企業、スタートアップ、大学が集積する京都は、伝統と革新で産業競争力を高め、社会課題を解決するイノベーションを地域一体で育んできた。産学官金の連携・フレームワークで、健康寿命延伸や地球温暖化対策、デジタル変革(DX)などを後押しし、多彩なプレーヤーが共創する今の京都を探る。
社会課題の解決と人づくり
産学で共同開発相次ぐ/成果導く研究が活発化
高齢化に伴う慢性創傷(難治性皮膚潰瘍)患者の増加が問題となる中、三洋化成工業は京都大学と共同開発した治療材料の製造販売承認の申請を終え、2025年度中の発売を目指している。大腸菌を用いて製造した人工たんぱく質「シルクエラスチン」をスポンジ状に加工したもので、傷に貼り付けると、細菌感染を助長せずに治癒を促進するという。
細菌などを用いたモノづくりでは、脱石油製品づくりや未利用資源活用の観点も重要となる。分析装置大手の島津製作所は、バッカス・バイオイノベーション(神戸市中央区)や日揮ホールディングスなどと、二酸化炭素を原料としたバイオモノづくりの量産化プロジェクトに参画した。高速かつ正確に微生物の生成物を評価することで、微生物開発から製品投入までの期間の大幅短縮に貢献し、バイオモノづくりの産業基盤構築を支える。
SCREENホールディングスは大阪大学大学院工学研究科と、半導体や新規事業研究分野でのイノベーション共創を目的に「SCREEN未来協働研究所」を開設した。両者の共同研究を深化し、シミュレーションと実験を融合して先端プロセス開発を推進する。
京都進出のきっかけに/人の集積・交流で産業活性化
国内外のスタートアップや投資家らが集まる日本最大規模のイベント「IVS」が昨年に引き続き、今夏も京都で開かれた。
IVSをきっかけに京都に企業が進出する事例も出ている。京都は大学が多いが「研究シーズをスタートアップにつなげるには全国、世界と新しい交流を生む必要がある」(松井孝治京都市長)など、スタートアップエコシステムの構築には人の集積・交流が欠かせない。
京都府は2023年、ピッチイベントで最高評価を得た企業に最大1000万円を授与する「スタートアップ京都国際賞」を創設した。初代受賞者で、においで尿と便を検知する排せつセンサーを手がけるaba(千葉県八千代市)は「府の手厚い支援」(宇井吉美社長)がきっかけとなり、関西市場開拓の拠点に京都府長岡京市を選び5月に支店を設けた。
31回目を迎えた今回のIVSは、昨年の1万人を上回る1万2000人が来場するなど大盛況だった。この盛り上がりを産業活性化につなげるためにも、継続的なフォローアップが欠かせない。
若手の起業を後押し
一方、京都リサーチパーク(KRP、京都市下京区)と社会起業家支援のtaliki(同中京区)は、社会課題解決を目指す起業支援プログラム「COM-Project」を2020年から共催する。対象は起業を志す30歳以下。3カ月間の伴走支援で社会課題解決を目指した起業を後押しする。現在は5期目が進行中で、10月中旬にピッチを含むカンファレンスを開く。
立命館大学社会共創推進本部本部長 三宅 雅人 氏/〝共創の場〟核に新たな産学連携促進
立命館大学は4月、大阪いばらきキャンパス(OIC、大阪府茨木市)で社会課題解決に向けた〝共創の場〟となる新棟「TRY FIELD(トライフィールド)」を稼働した。同拠点を運営する社会共創推進本部の三宅雅人本部長に、取り組みや狙いを聞いた。
ートライフィールドとは。
「自治体や産業界、地域と大学がより連携できるよう、従来以上に解放的な建物設計にした。1階は自由に出入りでき、OICの教員の研究成果を展示。セキュリティーがかけられる企業向け貸しオフィスや、コワーキングスペースも設けた」
ー社会共創推進本部の使命は。
「社会課題解決の取り組みの核となる組織だ。授業設計をする部署や会計・財務関係の部署の職員にも兼務してもらった。実務者が兼務する組織は本学では初めて。教員にもフェローとして参画してもらい、どのような困りごとが持ち込まれても相談できる体制にしている」
ー企業との取り組み状況は。
「従来の産学連携にない相談が持ち込まれる。日立造船とは社員向け情報リテラシー教育のビデオを面白くするため、オリジナルキャラクターや動画を制作。商品パッケージデザインに学生の意見を取り入れるマーケティング活動や、採用を見据え学生に自社名の知名度向上を図りたいというニーズも聞かれる。企業の優秀な若手同士をつなぐネットワーキングの場としたいとの声もある」