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連携特集2024 京 de 創ル
グローバル企業や中小企業、スタートアップ、大学が集積する京都は、伝統と革新で産業競争力を高め、社会課題を解決するイノベーションを地域一体で育んできた。産学官金の連携・フレームワークで、健康寿命延伸や地球温暖化対策、デジタル変革(DX)などを後押しし、多彩なプレーヤーが共創する今の京都を探る。
次世代人材育成の動き広がる
社会や産業、科学技術の持続的な発展には次世代を担う人材の育成が欠かせない。京都は研究助成制度や奨学金給付制度を整備し、技術者や学生の育成に取り組む企業も多く、少子高齢化や人手不足が叫ばれる中、その動きは広がりを見せる。
奨学金や研究助成制度整備
計量・包装機大手のイシダは2023年末、医療現場の人手不足や就労環境改善などを目指し、イシダメディカル財団を立ち上げた。
同財団と京都市、公的産業支援機関の京都高度技術研究所の3者は、ライフサイエンス分野の研究開発と人材育成で連携協定を締結し、4月から医療機器開発や看護業務の改善につながる研究、事業化支援を目的とする助成事業を立ち上げ、3者で取り組んでいる。
オムロンが創設した京都オムロン地域協力基金(京都市下京区)は、府内の高校などを卒業した大学生や短大生を対象に、1カ月当たり5万円を給付する奨学金制度「京都『志』奨学金」を始めた。同基金の山田義仁理事長(オムロン会長)は「日本の未来を担う若者への投資が不足しているという課題意識があった」と説明。同基金のほか、オムロンが協力を呼びかけた島津製作所やSCREENホールディングス、NISSHAなども出資している。
稲盛財団や永守財団、島津科学技術振興財団、堀場雅夫賞、村田海外留学奨学会、村田学術振興・教育財団、サムコ科学技術振興財団など、京都では独自の財団や表彰制度を立ち上げ、人材育成に取り組んでいる。
島津製作所執行役員 西本 尚弘 氏/コア技術研究と社外との共創両立
ー所長を務める基盤技術研究所(京都府精華町)は、中長期視点でコア技術を開発する拠点である一方、外部組織と連携する共創拠点の側面も持ちます。
「研究所の主な役割は島津製作所の長期成長軌道の創造と、イノベーション創出。将来を見据えたコア技術の研究だけではなく、企業や大学との共創を通じた新規事業創出にも取り組んでいる。研究所を整備したのは、立地するけいはんな学研都市(関西文化学術研究都市)のまちびらきとほぼ同じ時期。企業の研究所や大学が集積し、町自体がオープンイノベーションをテーマに整備されたこともあり、社外とのコラボレーションは当時から意識していた」
ー具体的な連携は。
「出資するスタートアップの技術調査やデューデリジェンス(価値査定)を担うのも、研究所所属の研究員だ。当社は23年にコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)を設立した。研究員を京都市内の本社に派遣し、出資の意思決定に必要な情報を収集している。新規事業創出という観点では、技術検証を行った、腸の細胞と腸内細菌の相互作用を評価する臓器模擬デバイスや、装置の小型化と高性能化につながる量子赤外分光技術は社外連携の成果だ」
ー島津製作所にとって連携とは。
「当社にとって連携は、〝ポット出〟の考え方ではなく、約150年前の創業の頃から脈々と受け継がれてきたもの。伝統を基に、CVCなど新しい共創にも取り組んでいる」
堀場製作所社長 足立 正之 氏/大学と連携 ダイヤの原石磨く
ー自動車や半導体などで分けていた5セグメントを『エネルギー・環境』『バイオ・ヘルスケア』『先端材料・半導体』の3フィールドに再編しました。
「グループ内連携を加速するために再編した。AとBを足すことで新しいCができる―。そうした事例が相次いでおり、フィールド制の良さを社員が実感しつつある。セグメント制の頃から事業間の連携でシナジーを発揮するワンカンパニーを目指した。ただ、会社が大きくなり、事業間に壁が生まれていた」
ー世界的な環境意識の高まりは商機です。
「水素製造装置向け検査装置など、水素関連製品の需要が膨らんでいる。世の中がカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に動いており、欧州での水素市場の成長は特に目を見張る」
「エンジン車などの内燃機関向け検査装置も、落ち込んだ需要が復活しつつある。自動車の電動化が当初想定より遅れているからだ。環境負荷の低いハイブリッド車(HV)の需要増も好材料だ」
ー京都大学や大阪公立大学と新技術の開発などで連携します。
「当社にとってアカデミアは〝人財〟の供給源かつ顧客で共同研究先でもあり、切っても切れない関係。大学には磨かれていないダイヤモンドの原石と言える技術が〝ゴロゴロ〟転がっている。業界動向や技術の応用先であるアプリケーションを知る当社が、それらを輝かせるために大学と連携することは、お互いにウィンウィンとなる」