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第75回 インド共和国記念日
1月26日は1950年にインドで憲法が公布されたことを記念する「インド共和国記念日」。インド各地で大規模な祭典が行われる。14億人超からなる巨大市場と豊富な生産年齢人口、都市化の進展などを背景に、インドは世界経済の成長センターとしてのポジションが鮮明になってきた。ここでは戦略的パートナーシップが求められる日本―インドのビジネス模様を中心に紹介する。
世界の成長エンジン 躍進するインド
メッセージ/戦略的パートナー
第75回インド共和国記念日を迎えるにあたり、日本の天皇皇后両陛下、日本政府そして日本国民の皆さまに心からごあいさつ申し上げます。また進歩を続ける印日特別戦略的グローバル・パートナーシップの重要なステークホルダーである、インド国民の皆さま、そして日本のインドのご友人の皆さまに敬意を表します。
2023年、印日両国はG20議長国、G7議長国として緊密に連携しました。インドはG20で、ヴァスダイヴァ・クトゥバカム、すなわち「ひとつの地球、ひとつの家族、ひとつの未来」というテーマを掲げ、アフリカ連合のG20正式加入を実現し、G20諸国だけではなくグローバルサウスの国々の課題にも焦点を当てた歴史的文書、G20首脳宣言を採択しました。
印日関係は、23年の3月にニューデリーで行われた印日年次首脳会談や5月のG7広島サミット、9月のG20ニューデリーサミット時に行われた首脳会談といったハイレベル交流を経て、さらに勢いづいています。
対印投資5兆円
昨年の7月には菅義偉元首相が政財界のリーダーで構成されたビジネス代表団を率い訪印されました。また印日間初となる戦闘機訓練も開催され、防衛協力もますます強化されています。両国は今後5年間で日本からの対印投資額を5兆円に拡大するという目標の実現に向け、真摯(しんし)に取り組んでいます。また産業競争力強化やエネルギー、デジタル、サプライチェーン(供給網)強靭化、半導体やサプライチェーンなどに関する既存のパートナーシップについても、さらなる強化を図っています。
日本は、ムンバイ・アーメダバード高速鉄道事業やムンバイ港湾間相互接続計画、そして北東インドにおける接続性向上事業といったインド国内の旗艦インフラ開発事業における重要なパートナーです。またインドの高度スキル人材は、日本の産業界における人材不足を補うことができるでしょう。
ヒマラヤと富士山つなぐ
両国は24年を引き続き「印日観光促進年2・0」に定め、“ヒマラヤと富士山をつなぐ”をテーマに取り組みを進めます。また「印日科学イノベーション促進年」も展開していきます。
両国の首脳は、日米豪印の協力枠組み「クアッド」を通じ、インド太平洋地域とその周辺地域に平和と安定、繁栄をもたらすことを決意いたしました。日本は国際太陽光同盟(ISA)や災害強靭化インフラ連合(CDRI)といった多国籍取り組みにおいて、インドと緊密に連携しています。また両国は国連改革を含む、多国籍議場の改革においても協力しています。
24年が始まり、47年の独立100周年にいたる黄金の25年間「アムリット・カール」への道を歩み始めたインドにとって、日本は大切な天為(てんい)のパートナーであります。両国間の強力な人的絆をもって、安心・安全で持続可能な世界のため、特別戦略的グローバルパートナーシップのビジョンを掲げてまいります。
印日ビジネス―高いポテンシャル 強さ掛け合わせ強さ発揮
進出1400社・4900拠点
現在、インドに進出している日系企業数は大手を中心に1400社・4900拠点で、製造業からITやサービス産業など業種が多様化している。ただ14億2000万人の世界一の人口は2050年になった頃にはさらに2億人超増加し、16億7000万人に到達する。
中間層の増大は今後のインドビジネスのカギであり、長く続く人口ボーナス期を迎えるインド経済のポテンシャルからすると、進出数はまだ少なく、印日ビジネスの深耕はこれからが本番だ。
インドなどで10年以上、自動車ビジネスに関わるある関係者は「日本では最近、インド成長力のポジティブな側面がよくメディアなどで言われている。だが現場にいる身としては、それ以上に可能性の高さを肌で感じる」とし、印日の双方の良さを掛け合わせた時にグローバルビジネスで本当の強さが発揮できると強調する。
大使館に中小企業相談窓口
インド政府も印日ビジネスの裾野を拡大するための取り組みを開始している。2023年7月に在日インド大使館内に中小企業促進室を設置。きめ細かく相談に応じるための窓口となっている。シビ・ジョージ大使は頻繁に全国の都道府県を回ってインドの可能性を語り、技術力を持つ日本の中堅・中小企業や労働者不足に悩む企業に向けインドの可能性を説く。
今月、大使館で開かれたセミナーでは刃物メーカーである貝印のインド子会社を率いるパンディア・ラジェシュ氏が登壇。これまでの経験から「インドで成功したいなら、石の上にも3年ではなく10年が必要。簡単な市場ではないが、素晴らしいパートナーになれる」と訴えた。
インドを拠点としたアフリカや欧州の開拓、めざましい進化をとげるインド発スタートアップとの連携、デジタル人材の活用、そして労働力不足に悩む日本へ優秀な人材供給地点となることなど、両国経済の交わりは豊富な可能性を秘める。知恵を絞り、持続的な成長を目指した息の長い取り組みが求められている。
印のIT開発力で先進事例
インドのIT開発力を生かしたさまざまなイノベーション事例が生まれている。
中堅・中小製造業向けソフトウエアの開発を手がけるアルファTKGは、人工知能(AI)搭載の図面管理システム「アルファ・プリモ」を2月1日に発売する。インドで開発するAIが紙図面のデータ化などの管理全般を担い、人の図面管理にかかる負荷を軽減できる。人手不足や受注増加に対応する企業のDXを手軽かつ効果的に実現。主に板金企業向けに提案する。
AIが紙図面の情報を文字に起こし、写真・動画も自動で紐づけし図面に関するすべての情報を一元管理。類似の図面・文言を自動検索するため、図面探しの時間を短縮できる。