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INDIA Report
2024年1月、北西部のグジャラート州と南東部のタミル・ナドゥ州の二つの産業都市エリアでそれぞれ、大規模投資誘致イベントが開かれた。世界各国やインド国内から注目され、いずれもさまざまな成果が発表されている。日本貿易振興機構(JETRO)の現地事務所からその様子のリポートを紹介する。
<タミル・ナドゥ州> 11兆円投資・雇用269万人創出
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タミル・ナドゥ州ラジャア商工大臣(左から3人目)がジャパンパビリオンのチェンナイ日本商工会を訪問
(執筆:ジェトロ チェンナイ事務所長 白石薫)
1月7―8日にかけてタミル・ナドゥ州政府が主催する「グローバル・インベスターズ・ミート(GIM)」が開催された。企業誘致・投資誘致で経済成長を目指す方針を明確にしている同州にとって州最大、最重要の投資誘致カンファレンスである。会期中、州政府は6兆6418億ルピー(11兆2910億円)に上る覚書(MOU)を締結、これにより269万人の雇用を創出するとして、その成果をアピールした。
州政府は、GIMに合わせ半導体政策を発表。半導体産業の誘致を進めることを明確にし、その優遇措置を発表した。また日本はパートナーカントリーとして参加し、出展企業8社からなる日本館を運営した。ジャパンセッションでは「日本の技術による未来の社会」をテーマに、同州の将来の発展に向けて日本の技術を紹介した。
日本の自治体、連携を強化
日本からは高知県、大阪府、広島県が代表団を派遣。高知県は浜田省司知事を団長に16名からなるミッションを派遣し、州政府とMOUを締結。大阪府はM・K・スターリン州首相に宛てた吉村洋文知事の親書を手渡し、同州との交流強化を呼びかけた。広島県はこの2府県に先行し州政府と2023年11月にMOUを締結しており、その最初の取り組みとして今回のGIMに合わせて日本館に出展した。
T・R・B・ラジャア同州商工大臣は、ジャパンセッションにも駆け付け、高知県との締結に立ち会ったほか、吉村大阪府知事からの親書をスターリン州首相に代わり受領した。
あいさつに立ったラジャア大臣は、タミル・ナドゥ州と日本の文化の親和性・共通性について言及。同州には定着率が高く、やる気のある優秀な人材が豊富であることをアピールし、投資先として、またグローバル人材の供給先としての魅力を訴えた。
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<グジャラート州> 47兆円・4万件―MOU締結
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モビリティ・パビリオンで展示されたマルチスズキのEVモデル
(執筆:ジェトロ アーメダバード所長 古川毅彦)
モディ首相のお膝元、グジャラート州で1月10―12日、インド最大の投資誘致イベント「バイブラント・グジャラート・グローバル・サミット(VGGS)」が開催された。隔年開催の同イベントはコロナ禍での中断を挟み、5年ぶり10回目の開催。140カ国の政財界から6万1000人が参加し、26兆3300億ルピー(47兆3940億円)、4万1299件のMOU締結による過去最大の成果が発表された。日本企業の関与も過去最大であり、ジャパン・パビリオンでは半導体、再エネ関連など28社が出展した。
毎回VGGSの開催が近づくと、国家元首級を含む参加者を迎えるためアーメダバード周辺道路のお化粧直しで舗装が改修され、沿道はモディ首相とパテル州首相が仲良く並び写るパネルで埋め尽くされる。そこに踊った今回のスローガンは「グジャラートとは成長の意味」「未来へのゲートウェー」だ。
20年目の進化
VGGSは投資誘致が発展のカギと考えるモディ州首相(当時)が2003年に始動し、大規模投資誘致プラットフォームとして定着した。アイデアを出し、実行することの重要性を強調するモディ首相の成功事例の一つと称賛される。インド人民党が長期政権を執る同州は連邦政府と一蓮托生の補完関係にある。半導体、グリーン水素、EV、航空宇宙、防衛など今回のVGGSセッションテーマを見れば、インド産業政策の優先順位は一目瞭然だ。
同州でのタタの半導体参入、マルチスズキの第5工場建設も発表された。グローバルサウスの盟主としてアフリカや中東諸国への配慮、中小企業のインクルージョンなど、政治的メッセージも垣間見られた。
20周年を迎えたVGGSは規模、仕掛けともにバージョン2に進化した印象があり、新たなうねりが起こりつつある。日本企業も同州の重要性を再評価し取り組みを急ぐ頃合いだ。