-
業種・地域から探す
続きの記事
兵庫県播磨地区産業界
兵庫県の播磨地域沿岸部には大手から中堅・中小製造業が集積し、一大工業地帯を形成している。多くの企業が人手不足を課題に抱える中、生産現場の自動化や省人・省力化の推進に加え、働きやすい職場づくりなど独自の取り組みを進めている。
播磨の活躍企業の成長戦略②
赤穂化成 社長 池上 良成 氏
赤穂化成の源流「赤穂東浜塩田」の開墾が始まって2026年で400年になる。山と海に囲まれ、淡水と海水が混じり合う「汽水域」に当地はある。山のミネラルを含む水が河川を通じて海へと流れ込むことでおいしく上質な塩が生まれ、今日に至るまで脈々と塩作りが続いている。現在当社は、ミネラルの総合メーカーとして「赤穂の天塩」のほか、工業用途として電子部品向けの機能材、医療品包装材料向けに微粒子機能性フィラーを展開。人工透析の原薬として塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムを生産。取引先の需要拡大に合わせて生産設備を増設し、26年に稼働する計画だ。24年度は創業以来最高の売り上げで、25年度は健康事業の伸びなどにより前年度を超える業績の見通しだ。このほかにもAI(人工知能)による画像解析を食品向けに導入して異物混入を防ぐなど、合理化を進めながら安心・安全な塩作りにつなげている。このたび企業理念を「海の智、人の和、新たな一歩」に刷新した。人との繋がりを重視しており、最近では地域おこしにも挑戦している。その一環として国内各地で地元の海水を使用した塩作りにも取り組んでいる。このように塩作りに情熱を傾け、海洋深層水などの研究を約30年に渡って行い、その健康効果を発信してきた。それらの功績が認められ、令和7年春の叙勲で旭日単光章をいただいた。今後も失敗を恐れず未来への挑戦を続け、社会へ貢献していく。
西松屋チェーン 社長 大村 浩一 氏
ベビー・子ども・マタニティ向け商品の販売を行う。景気の先行きが不透明な状況や厳しい競争環境が続くなか、お客さまの立場に立った取り組みを着実に行い国内でのシェアを拡大するとともに、海外戦略を本格化させてさらなる成長を目指している。海外戦略としては、2026年春に台湾・台南市にて1号店のオープンを予定している。台湾でのチェーン店舗展開にとどまらず、他の国や地域への進出も検討している。商品開発には引き続き力を入れている。育児用品の「スマートエンジェル」と衣料品・服飾雑貨の「エルフィンドール」という二つのプライベートブランド(PB)で適正な品質・お手頃価格の商品を提供するとともに、小学校高学年向け商品の品揃えを拡充している。人口集中地域への出店やより便利な立地での大型店舗への置き換えなどで、国内での出店にも引き続き注力する。電子商取引(EC)サイト「西松屋公式オンラインストア」では、「店舗在庫表示機能」のサービスを始めるなど、利便性を高めている。このほかにも店舗運営においてマニュアル教育の新システムを導入するなど、一層の生産性向上に取り組んでいる。当社は、子育てになくてはならない「社会インフラ」として、子育てを応援し、子育てを楽しめる社会づくりに、今後とも貢献し続けたいと考えている。
ニチリン 社長 曽我 浩之 氏
-
ニチリン 社長 曽我 浩之 氏
自動車やバイク、住宅設備向けホースおよび配管部品の製造・販売を主事業とする。自動車・バイク用が9割、水道用が1割という売り上げ構成である。特に主力となる自動車向けではEV化の進展も背景に、製品の軽量化を含め商品開発を進めている。また、本年3月には、アメリカで大型トラック・バス向け配管などの製造・販売を手がける会社を買収し、「NICHIRIN ATCO TEXAS, INC.」として子会社化。当社の既存技術を活用し、新たな市場で需要を喚起していく方針だ。
製造拠点における自動化の推進にも余念がない。国内では協働ロボットなどの自動化設備を導入し省人化を進める一方、働きやすい職場づくりと人材育成にも力を注ぐ。グローバルな視野の養成を図り、特に若年次社員に向けては希望者を3カ月程度、海外拠点に赴任してもらう「海外トレーニー制度」を設けている。
こうしたグローバル人材の育成と既存技術の応用拡大で“真のグローバルサプライヤー”としての役割を果たしていく。
西芝電機 社長 後藤 秀範 氏
-
西芝電機 社長 後藤 秀範 氏
船舶向けと施設向け発電機や電動機などの回転機と、配電盤や制御盤の製造・販売・保守サービスを主事業とする。売上比率は船舶向けと施設向けがほぼ同じであるが、近年は船舶向けの売り上げが多くなっている。特に回転機関連の需要の高まりで、昨年度は過去最高の売上高となった。しかし、今後労働人口が減少し、高齢化社会が進んでいくことを考えると、現状の生産体制でこの生産規模を維持することは難しい。
このため、本年7月に倉庫として使っていた建屋を改修し、メイン工場の一部の製造ラインを移設するとともに、古かった設備を最新設備に更新。加えて、工程間の“受け渡し”作業の省力化と効率化を図った生産ラインを構築し稼働を開始した。移設前の製造ラインと比べ生産効率3割アップを見込んでいる。
他にも順次、同様の取り組みを進め、生産設備のロボット化や自動化に加え、工程間の運搬や移動などの省力化・効率化を進め、さらなる生産性向上と効率化を図る方針だ。
今後は、船舶向では航行時に温室効果ガス(GHG)を全く排出しないゼロエミッション船導入に向けた電気推進船の需要拡大。施設向では近年の異常気象を考慮した事業継続計画(BCP)対応とAIデータセンター向けのバックアップ電源需要拡大などに対応する生産体制とサービス体制の整備と強化を図っていく。
アトリエケー 社長 北浦 基広 氏
-
アトリエケー 社長 北浦 基広 氏
当社は15年ほど、バネの力を使って工場などでの作業の負担を軽減するアシストスーツを専業として展開している。2025年5月に改正労働安全衛生法が公布され、26年4月に60歳以上の高年齢労働者に対する労働災害対策措置が努力義務化される。これにより、アシストスーツの需要は高まるのではないかと見ている。アシストスーツでは、ベスト型の「タスケル」という製品が売れ筋だ。着用感や動きやすさ、価格などの点でバランスがとれていることから評価されている。今後はタスケルのバージョンアップを考えている。また展示会へ出展するなどして、アシストスーツの認知度を上げていきたい。アシストスーツに続く新たな事業の柱の育成にも挑戦している。それは熱中症対策製品で、25年夏シーズンに熱中症対策製品として保冷剤を採用したベストや多様なウェアに取りつけられるペルチェ素子デバイスなどを投入した。これら製品は好評を得ており現在、25年に発売した製品を上回る機能の開発を進めている。バッテリーを使わない製品や長時間の連続使用が可能な保冷剤などを検討している。最終サンプルも仕上がりつつあり、手応えを感じている。安全性を確認した上で、26年夏シーズンに間に合うように製品化したい。
