-
業種・地域から探す
続きの記事
兵庫・神戸産業界
未来に向けて進化続ける
兵庫県では神戸市を中心として、まちづくりに関わる大型プロジェクトが進行している。また、4月に神戸空港は国際チャーター便の運航を始めた。神戸市中心部の三宮地区など、市内の主要な再開発事業も着実に進んでいる。また懸案事項だった兵庫県庁の建て替えなどを契機に、お膝元の元町地区のまちづくりも一気に進みそうな気配だ。
神戸空港、国際化へ踏み出す
2006年2月に開港して以来、神戸経済界にとっては長年の悲願だった国際便就航へ第一歩を踏み出した。神戸都心部では、30年前の阪神・淡路大震災で大きく出遅れた再開発の槌(つち)音がようやく響き始めたところだけに、空港国際化との相乗効果も期待される。週40便の国際チャーター便が神戸空港からアジア5都市へ運航。医療産業都市構想を推進するなど震災からの復興に力を入れてきた神戸市にとって、国際チャーター便のスタートは待ちに待った追い風だ。
-
国際線で活用する神戸空港第2ターミナルビル
神戸市の久元喜造市長は、震災から30年を迎えた「阪神淡路大震災1・17のつどい」の追悼の言葉で、「25年、神戸空港の国際化とともに神戸は新たなステージに立とうとしている」と、国際都市復活への展望を述べた。神戸市の都市づくりにとって、神戸空港国際化の持つ意味は大きい。「神戸が直接海外の大都市とつながる。ビジネス交流のチャンスが大幅に増える」と久元市長は期待する。
-
スカイマークは、国際チャーター便で神戸空港に就航することを決めた(中央が本橋学スカイマーク社長)
4月の国際化以降、海外路線の搭乗率は約80%と好調だ。さらに海外航空会社のみによる運行だったが、10月からいよいよ国内の航空会社による運航が始まる。スカイマークがこのほど、神戸—台北(桃園)の国際チャーター便で国際線に再参入すると発表した。新型コロナウイルス感染症拡大を契機として20年に国際線を撤退して以来、約5年半ぶりになる。神戸市役所で会見した本橋学社長は「国際チャーター便を通じて、将来の国際定期便の就航に向けた検討をする」と述べた。
国際チャーター便の運航期間は10月4—10日までで、4往復8便の計画。スカイマークは神戸空港を西の拠点と位置付けており、今春の神戸空港の国際チャーター便運航と30年ごろの国際定期便運航開始へのレールができたことが神戸空港を選んだ理由になったという。
神戸中心部、再開発順調に
-
神戸・三宮地区では再開発事業が順調に進んでいる
神戸中心部の三宮地区などの再開発事業も、順調に進んでいる。JR三ノ宮駅東側の神戸市中央区役所などが建っていた神戸三宮雲井通5丁目地区を、中・長距離バスのターミナル拠点にする再開発ビルが23年に着工。さらにJR西日本の駅ビルが24年に起工式を行った。震災で上層階がつぶれたため下層階のみ使用し続けていた神戸市役所本庁舎2号館も、20年にようやく解体工事に着手し、新庁舎の建設に着手した。
これらが30年までに相次いで完成し、三宮の街並みが様変わりすることになる。雲井通5丁目地区の再開発ビルのオフィス部分には、神戸市内に本社があるアシックスとシスメックスが本社移転を表明。さらに、シスメックスは同ビルに設置するホールの命名権も取得した。
兵庫県庁舎の建て替えと、庁舎が位置する元町地区周辺のまちづくりにも動きが出てきた。県庁舎のほか中華街などの観光地を抱える元町地区はもともと神戸市の中心部と位置付けられていたが、1931年にJR三ノ宮駅が元町地区から現在地に移転したことによりその機能は縮小していた。
そうした中で兵庫県は5月、2030年代前半の新庁舎整備に向けた骨子案をまとめた。総工費を1000億円以内に抑えることを軸に、民間の知見などを加えながら本庁舎が立地する元町地区との一体感があるまちづくりにつなげる。まちづくりが関わることから、神戸市との連携も視野に入れる。さらなる議論を踏まえ、今秋にも基本構想を発表する。
本庁舎は老朽化が進む。28年度ごろに一部庁舎の解体工事に着手するが、新庁舎の建設はいったん凍結されている。新庁舎のあり方については、若手が働く意欲が持てるような庁舎にしたいとする声が根強い。3月に閉鎖した県民会館のホールや会議室機能を縮小し、本庁舎に合築する計画も浮上している。
元町地区のまちづくりに動き
元町地区のまちづくりでは6月、JR西が元町駅の一部施設のバリアフリー化を発表した。これにあわせて、神戸市は観光バス乗降場の本格運用や駅前ロータリーのあり方の検討など駅周辺部の再整備に力を入れていく。地元のまちづくり団体や学識経験者らによる研究会で議論を重ね、26年秋にリニューアルプランの素案をまとめる。27年度以降にJR西と連携しながら詳細を設計し、工事に着手する。
神戸の大胆なまちづくりは、阪神大震災によりいったん止まってしまった。だが発生から30年の節目を経て、目に見える形になってきている。