-
業種・地域から探す
続きの記事
住宅産業
住宅省エネ支援 補助拡充で脱炭素加速
3省連携、省エネ化支援
2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向け、政府は住宅の省エネルギー化の支援を強化している。国土交通省、環境省、経済産業省はそれぞれ、住宅の省エネ化を支援する補助金事業を用意。3省が連携して、各事業の組み合わせ利用やワンストップでの申請対応などのキャンペーンを続けており、26年度も展開を強化する。足元では中東情勢の不安定化でエネルギーや資材のコスト上昇が懸念される。そうした中でも支援を強化することで、環境に配慮した住宅を着実に増やす考えだ。
ZEH水準を上回る「GX志向型住宅」
-
断熱等級6の一戸建て注文住宅イメージ(大和ハウス工業) -
カーボンニュートラル実現に寄与する良質な住宅ストックを形成するためには、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)水準住宅、長期優良住宅、グリーン・トランスフォーメーション(GX)志向型住宅などの新築を、いかに増やせるかが重要だ。その中でも新たな枠組みとして注目されるGX志向型住宅は、断熱等級6以上、再生可能エネルギーを除く1次エネルギー消費量削減率35%以上といった要件が定められている。ZEH水準住宅の要件が断熱等級5以上、再生エネを除く1次エネルギー消費量削減率20%以上であることを考えると、求められる性能が大幅に上がったといえる。
こうした住宅の新築を増やすため、国交省と環境省は合同で「みらいエコ住宅2026事業」を展開。その中で、GX志向型住宅の新築に対しては、1戸当たり110万円または125万円を補助する。補助額は25年度の160万円からは引き下げとなるが、予算額自体は1・5倍の750億円に拡大しており、より多くの申請に対応できるようにした。
25年度の交付申請戸数ではGX志向型住宅の新築は約3万戸だった。申請受付開始からわずか3カ月で予算上限に達しており、世間の注目度が高かったことがうかがえる。
ただ現時点で住宅メーカー各社にとって、GX志向型住宅は、販売状況を自社の重要業績評価指標(KPI)に定めるような位置付けではない。それでも、大和ハウス工業は新規販売の一戸建て注文住宅で断熱等級6の標準化を順次開始。積水ハウスも新規販売の一戸建て住宅・賃貸住宅のそれぞれで、半分以上が断熱等級6をクリアしている。大手ハウスメーカーの取り組みにより、業界全体が底上げされると見込まれる。
高断熱の窓 リノベで省エネ化
住宅における熱の出入りの大半は、窓などの開口部で発生している。しかし日本では住宅の約7割が単板ガラスの窓のみによって構成されているという。これを断熱性能が高い窓にリフォームすることで、住宅の省エネ化および二酸化炭素(CO2)排出量削減が進むと期待される。
そこで環境省は「先進的窓リノベ2026事業」を展開し、施工費を補助する。26年度の補助上限は住宅1戸当たり100万円で、25年度の200万円から引き下げられた。一方で26年度は、学校や福祉施設などの非住宅建築物も新たに対象とし、裾野を広げようとしている。非住宅建築物は、延べ床面積240平方メートル超の場合、1棟当たりの補助上限が1000万円となる。
ワンストップで申請対応 キャンペーン強化
-
YKK APの高断熱内窓「ウチリモ」
先進的窓リノベの25年度の申請戸数は36万戸を超え、23年度比5割増だった。高断熱性の重要性についての認識が、着実に広がっているようだ。
サッシメーカー大手のYKK APは、1時間程度で容易に設置できる内窓「ウチリモ」や、壁工事不要のカバー工法によって短時間で交換できる窓「マドリモ」などの製品を展開。補助金事業を生かし、自社商品の提案を強化している。
給湯機 デマンドレスポンス活用に期待
-
三菱電機のヒートポンプ給湯機「三菱エコキュート Pシリーズ」
給湯分野は家庭のエネルギー消費量の約3割を占め、最大のエネルギー消費源とされる。そのため給湯機を高効率化することは、エネルギーコスト上昇への対策として有効だ。特に寒冷地では、給湯機は高額な光熱費の要因となっているため、高効率な製品に切り替える意義は大きい。また近年は再生エネの導入拡大に伴い、電力需給を調整するデマンドレスポンス(DR)機能が付いた製品への切り替えも求められる。そうした背景のもと、経産省は「給湯省エネ2026事業」と「賃貸集合給湯省エネ2026事業」で、高効率な給湯機の導入を支援する。
給湯省エネ2026事業では、一般家庭でヒートポンプ給湯機「エコキュート」、ハイブリッド給湯機、家庭用燃料電池「エネファーム」を導入する場合、一定額を補助する。各機器の普及が進みつつあることを考慮し、26年度の補助額は25年度よりも引き下げた。一方で対象製品の要件を見直すことで、支援台数の増加を狙う。さらに26年度は、インターネット接続機能を持つことが、対象機器の要件に追加された。将来的にDRとして活用できる機器を増やす狙いだという。
また既存の賃貸集合住宅では、設置スペースなどの都合から、ヒートポンプ給湯機などの導入が難しいという課題もある。そこで賃貸集合給湯省エネ2026事業を通じ、高効率ガス給湯器「エコジョーズ」や高効率石油給湯器「エコフィール」など、小型の省エネ型給湯器への交換に対して補助し、導入促進を狙っている。
独自の省エネ住宅支援/東京都 都内住宅のボトムアップ狙う
東京都は断熱性能と設備の省エネ性能の基準を独自に定めた「東京ゼロエミ住宅」で、省エネ住宅の普及を後押しする。水準A、水準B、水準Cという3段階を独自に設定。そのうち最高の水準Aは、国が推進するZEH水準を大幅に上回る断熱性能と、建築物省エネ法の省エネ基準より45%削減を達成できるものとしている。
東京ゼロエミ住宅の24年度の交付決定数は、20年度比10倍の約2万戸となり、制度活用は着実に増えている。東京都は住宅の環境性能のボトムアップが進み、高性能な建材や設備の価格が低下することを期待する。より多くの都民が環境性能の高い住宅を選択できるように、好循環を生み出したい考えだ。
