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住宅産業
夏涼しく冬暖かい家づくり
【執筆】住宅・不動産ライター 椎名 前太
昨今、地球温暖化の影響を受け、四季を通じて極端な寒暖差が生じている。気象庁のデータによると35度C以上の猛暑日の年間日数(全国平均)は、1990年代半ばまで2日前後だった。それが2025年は10日を超えた。また、冬は突然冷え込んだうえに大雪に見舞われ交通網がまひするといった事態も頻発している。このような異常気象の中で快適に暮らすには、「断熱性能」「気密性能」「換気性能」に優れた建物に住むことが重要だ。
2025年4月から全新築住宅に省エネ基準適合が義務化
断熱性などが高い住宅が求められる理由は、快適性の確保だけではない。日本ではカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を50年までに実現するという目標を掲げている。そのために住宅の省エネルギー化は不可欠だ。そこで25年4月に建築物省エネ法が改正され、すべての新築住宅に省エネ基準適合が義務化された。
すべての新築住宅は断熱性能の等級4をクリアしなければならない
現在、すべての新築住宅は、省エネ基準を満たさなければ着工できない。住宅の省エネ性能は「外皮性能(断熱性能)」と「1次エネルギー消費量(給湯器などの効率性など)」の二つの基準で評価される。このうち断熱性能は「断熱等性能等級」が評価基準となる。
具体的な指標は外皮平均熱貫流率(UA値)で、建物全体からどれだけ熱が逃げるかを示す。数値が小さいほど断熱性能が高い。この数値によって断熱性能は等級1から7までランク付けされている。こちらは等級が高いほど性能も高くなり、等級1は1980年制定の省エネ基準未満、等級4は2016年制定の基準と同等、等級7は16年制定の基準と比べて冷暖房にかかる1次エネルギー消費量をおおむね40%削減できる水準とされている。
そして、25年4月以降は等級4以上が義務化された。これは気候条件により八つの地域区分に分けられ、それぞれUA値の基準が異なる(表1、表2)。例えば東京を含む6地域では、等級4でUA値1平方メートルケルビン当たり0・87ワット以下をクリアしなければならない。ただし、等級4は最低室温が8度Cを下回らない程度のレベルだ。より快適性を求めるなら、目安が10度Cの等級5、13度Cの等級6、15度Cの等級7など、家族の希望する暮らしに合わせて検討したい。
気密性能に基準はない
高断熱を実現するには高気密化が不可欠だ。隙間があれば熱は外へ逃げ、せっかくの断熱性能も効果を発揮できない。また、後述する24時間換気を機能させるためにも、一定の気密性能が求められる。気密性能は相当隙間面積(C値)で評価される。これは建物全体の隙間面積を延べ床面積で割った値で、1平方メートル当たり平方センチメートルで示す。数値が小さいほど隙間が少なく、気密性が高いことになる。
ただし、C値には公的な基準はない。1999年の次世代省エネ基準では地域別にC値基準が設けられていたが、2009年の改正で削除された。現在は一般的な目安として、C値1平方メートル当たり1・0平方センチメートル以下が高気密住宅の基準とされている。
換気システムの義務基準
03年の建築基準法改正により、すべての新築建築物に24時間換気システムの設置が義務化された。これは90年代後半に急増したシックハウス症候群への対策として導入された制度だ。その基準は換気回数1時間当たり0・5回以上。つまり1時間で室内空気の半分以上、2時間で全空気を入れ替える性能が必要だ。この基準は03年の義務化以降、変更されていない。
換気方式には、給排気とも機械式の第1種、給気は機械式で排気は自然式の第2種、給気は自然式で排気は機械式の第3種がある(図1)。一般住宅では第3種が最も多く採用されていて比較的安価だ。一方で第1種は高額になるが熱交換型換気システムを採用することが可能になる。排気の熱を回収して給気に利用するため、高断熱住宅と組み合わせることで省エネ効果が高まる。第2種は外気の汚染物質が入りにくい代わりに湿気がこもりやすい。そのため、住宅ではなく工場などに採用されるケースが多い。どれを選ぶかは費用対効果をよく吟味して決めたい。
断熱性能向上の方法とコスト
断熱性能を向上させるには、さまざまな方法がある。例えば断熱材を厚くしたり、断熱性能の高い窓にするといったことが考えられる。これらの中で、もっとも効果が高いとされているのが窓性能の向上だ。住宅へ出入りする熱の約50ー70%は窓からといわれている。そのため、アルミサッシから樹脂サッシへ、ペアガラスからトリプルガラスへといったグレードアップは断熱性能の向上に直結する(図2)。
これらによって施工費は数十万円前後アップするはずだ。だが、高断熱・高気密化によって年間の光熱費が削減できる。また、30年には断熱等級5が最低基準となる見通しだ。
つまり、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)水準の住宅が標準となる。ZEHは年間の1次エネルギー消費量を実質ゼロにする住宅で、高断熱・高気密に加え、高効率エアコンなどの省エネ設備と太陽光発電などの創エネ設備を組み合わせる。
このような高性能住宅に対して国や自治体は、補助金制度を拡充している。例えば「GX志向型住宅」に対する制度だ。同住宅はグリーン・トランスフォーメーション(GX)の考え方を取り入れた住まい。断熱性能等級6以上、再生可能エネルギーを除いた1次エネルギー消費量の削減率が35%以上、再生可能エネルギーを含む1次エネルギー消費量の削減率が100%以上であることなどが求められる。
「みらいエコ住宅2026事業」ではGX志向型の新築住宅に対して、寒冷地など(地域区分1ー4)では1戸当たり最大125万円、その他の地域(地域区分5ー8)では1戸当たり110万円を補助する。これから家を建てるなら単純にイニシャルコストで比較するのではなく、これらを含めたランニングコストで検討するのが得策だろう。
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住宅・不動産ライター 椎名 前太 氏
【執筆者プロフィール】
建築家などの専門家とは違う徹底した消費者目線で、難解なことでも分かりやすく書くのが得意。不動産関連書籍の執筆・編集協力の実績は50冊以上。そのほか雑誌やウェブでも執筆。宅地建物取引士。ホームページはこちら
