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住宅産業(2024年7月)
2024年度 ZEH住宅の補助金制度
より高い省エネルギー性能の「ハイグレード仕様」で補助額が加算
【執筆】環境共創イニシアチブ 事業第2部 名取 佑多朗
2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向けて、新築一戸建て住宅においてはネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の普及拡大が欠かせない。来年度には全ての新築住宅で断熱等性能等級4の適合義務化が予定されており、ますますZEHへの注目が高まっている。環境共創イニシアチブ(SII)は、これまで10年以上にわたりZEH事業を行ってきた。ここでは、本年度のZEH住宅の補助金制度のポイントを紹介する。
ZEHの概要と定義
ZEHとは、高性能断熱材や高断熱窓により断熱性を高め、高効率設備の導入により室内環境の質を維持しながら使用するエネルギーをできる限り削減し、さらに太陽光発電などにより再生可能エネルギーをつくることで、1年間で消費する住宅のエネルギー量が正味(ネット)でおおむねゼロ以下となる住宅をいう。
高い断熱性能による室内環境の快適性や光熱費削減効果だけでなく、昨今は災害時の復元性やヒートショックのリスク軽減といった健康面での効果など、エネルギー面以外の利点についても認識されつつある。
また、ZEHよりさらなる省エネルギーを実現し、自家消費を意識した再生可能エネルギーの促進に係る措置を講じるZEHを「ZEH+(ゼッチ・プラス)」として定義している。
一戸建て住宅におけるZEHの定義・基準は、図の通り。住宅における一次エネルギー消費量を、省エネによって省エネ基準から20%以上削減し、さらに再生エネによる削減量を含めた削減率によって、ZEHは以下に分類される。
・『ZEH』=基準一次エネルギー消費量から100%以上削減
・Nearly ZEH=75%以上100%未満削減
・ZEH Oriented=再生エネ含む削減率要件なし(対象地域の条件あり)
なお、ZEH+の定義・基準は25年度以降に一部改定が予定されているため、注意が必要となる(ZEHフォローアップ委員会「ZEHの普及促進に向けた今後の検討の方向性について」24年5月参照)。
一戸建てZEHの普及支援策
SIIが事務局を務める環境省のZEH住宅の補助金制度について、24年度のポイントを次の大きく3点に分けて解説したい。
①ZEH②ZEH+③24年度新設されたハイグレード仕様-。
【1】ZEH
補助金の交付要件として、次の1-4の一戸建て住宅におけるZEHの定義を満たすことが求められる。
1 建設予定地(地域区分)に応じて定められた外皮平均熱貫流率(UA値)を満たす(断熱等級5以上の外皮性能)
2 設計一次エネルギー消費量は、再生エネなどを除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上削減
3 太陽光発電設備など再生エネシステムの導入
4 設計一次エネルギー消費量は、再生エネなどを加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上削減
4の削減率によって、『ZEH』、Nearly ZEH、ZEH Orientedに分類されるが、いずれの場合も1戸当たり55万円の補助額となる。ただし、Nearly ZEHについては、寒冷地、低日射地域または多雪地域、ZEH Orientedについては都市部狭小地や多雪地域などを対象地域とし、適用条件が定められている。
【2】ZEH+
ZEH+はZEHに比べてさらに高い性能が求められており、交付要件として、一戸建て住宅におけるZEHの定義のうち、『ZEH+』、Nearly ZEH+を満たすことが必要となる。
ZEHの交付要件のうち、1と3は変わりないが、2の設計一次エネルギー消費量は、再生エネなどを除き、基準一次エネルギー消費量から25%以上削減が必要となる。
その結果、4の削減率が100%以上で『ZEH+』、75%以上100%未満でNearly ZEH+に分類され、いずれの場合も1戸当たり100万円の補助額となる。なお、ZEH+にはOrientedの設定はない。
●ZEH+の三つの選択要件
ZEH+では、1-4の省エネに関する交付要件に加えて、再生エネの自家消費拡大に資する次の三つの選択要件から、二つ以上を選んで導入することが必要となる。
①外皮性能のさらなる強化
通常のZEH+の基準である断熱等性能等級5よりさらに高いUA値を満たす(表1)。
②高度エネルギーマネジメント
太陽光発電設備の発電量などを把握した上で、住宅内の冷暖房設備、給湯設備、省エネ設備などを制御できる家庭用エネルギー管理システム(HEMS)を導入する。設置する設備はHEMSで制御できる認証を取得した機器であることが必要。
③電気自動車(EV)を活用した自家消費の拡大措置のための充電設備・充放電設備の設置
太陽光発電設備などにより発電した電力を、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)に充電(または住宅との充放電)を可能とする設備を導入する。
【3】ハイグレード仕様
本年度新設されたハイグレード仕様は、さらなる高断熱化および省エネ性能の向上を目指して、ZEH+においてさらに高い外皮性能と一次エネルギー消費量削減率を満たすものに、補助額を追加する。
1 建設予定地(地域区分)に応じて定められたUA値を満たす(断熱等級6以上の外皮性能)
2 設計一次エネルギー消費量は、再生エネなどを除き、基準一次エネルギー消費量から30%以上削減
ハイグレード仕様ではZEH+に補助額が加算され、選択要件①②③を満たした住宅には25万円加算(合計125万円)、選択要件①②または①③を満たした住宅には万円加算(合計110万円)される(表2)。
なお、ZEH、ZEH+、ハイグレード仕様に関わらず蓄電システムなど要件を満たした追加設備を導入することで、さらに補助額が加算される。
公募について
公募枠として、一般公募と新たにZEH普及に取り組むZEHビルダー/プランナーを対象とした新規取組公募を設けている。新規取組公募は本年度から新たに「ZEH+」での申請も可能となり、活用の幅が広がった。
本年度の公募はすでに開始しており、一般公募の申請期間は25年1月7日まで、新規取組公募は8月30日までを予定している。ただし、予算の上限に達し次第公募を終了することがあるので、早めの申請をおすすめする。
申請には、ZEHビルダー/プランナーが関与することなど、ここに記載した以外にも要件が定められているため、詳細は公募要領(https://zehweb.jp/house/)などを確認してほしい。