-
業種・地域から探す
続きの記事
浜松市産業界 -浜松商工会議所創立130周年-
モノづくり産業が集積する静岡県西部地区を牽引する政令指定都市・浜松。同市の産業界はコロナ禍を経て着実に活力を取り戻しつつある。その中核として大きな役割を果たしている浜松商工会議所が2023年に130周年を迎えた。産業界が抱える課題解決に向け、昨今は自動化や創業、自動車の電動(EV)化対応など、行政など各機関と連係したさまざまな支援策を実施している。
地域のモノづくり活性化に貢献
ロボット活用促進する展示会
22年11月には産業用・協働ロボットの展示会「ハマロボ展」を初開催し、地元のロボシステムインテグレーター(SIer)関連7社が出展。地元の中小モノづくり企業にアピールした。地元からはヤマハ発動機や日本設計工業(浜松市北区)などが出展し、ファナックや安川電機などのロボによるシステムを紹介した。2日間で計約400人が来場。モノづくり現場担当者らが興味深く、質問する姿などが見られた。
日本設計工業はカワダロボティクス(東京都台東区)のロボシステムを展示した。走行台車が低推力で駆動する点などを紹介し、ロボシステム全体で安全性を確保している。
ロボ商社のダイドー(名古屋市中村区)もファナックの協働ロボについてSIerの松下工業(静岡県磐田市)と連携し、PRした。デンマークのユニバーサルロボットの日本支社(東京都港区)は得意とする力覚センサーを内蔵し、扱いやすい協働ロボを展示した。
モノづくり業界で人手不足が叫ばれる中、自動化は喫緊の課題だ。ロボによる自動化に目を向ける必要性はますます高まっている。例えば、静岡県はロボ導入に向けたアドバイザーや補助金、研修・入門講座など幅広い支援メニューを用意。こうした体制は全国的にも珍しいという。ただ協働ロボをどのように活用すれば良いかわからない地元の中堅・中小のモノづくり企業も多い。
協働ロボはコンパクトで作業者の近くに設置できるなど、中小モノづくり企業でも導入しやすいメリットがある。こうしたイベントを通じ、地場のロボSIerとモノづくり企業がニーズやシーズを共有することで、より良い製品やサービスを構築することにつながる。展示会で具体的な受注案件になったという声もあったという。
8月には「ロボット導入・活用セミナー」を開催し、3次元(3D)ビジョンシステムメーカーの中国メックマインドなどによる事例紹介を実施した。会議所として今後も自動化を支援する取り組みを継続する方針だ。
次世代自動車分野への挑戦を支援
浜松地域イノベーション推進機構の次世代自動車センター浜松(浜松市中区)は、地域の中小企業向けに電動化やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の対応を支援している。
支援事業の一つは、製品ごとに開発や設計、生産などの各工程で会員各社の得意技術を洗い出して一覧表にし、技術の強みを見える化する「固有技術探索活動」だ。その固有技術を活用し部品試作に挑戦したい企業には公募に基づいて製作を委託。試作費を支援する「試作部品等製作委託事業」なども用意する。8月には浜松商工会議所会館1階に設置していた「部品ベンチマークルーム」を拡張した。同ルームには次世代自動車を分解した部品を展示し、技術情報を提供している。
11月13日には同センターがグランドホテル浜松で次世代自動車に搭載される技術動向を取り上げる「技術動向講演会」を開いた。テーマは「内燃機関の関連部品を製造している企業のEVシフトへのチャレンジ」。大手部品メーカーの開発技術者による講演のほか、先行的にEV化対応に取り組む企業5社による事例紹介があった。講演会場で設けられた5社の展示ブースにも多くの参加者が関心を寄せていた。
同センターの望月英二センター長(会議所副会頭、スズキ参与)は、今後どのように取り組んでいくべきかについて各社の事例を「固有技術と、その組み合わせで新たな技術や製品を生み出している」と解説。また熱マネジメント設計やカーボンニュートラル、省エネルギーなど開発のテーマ設定も重要だと指摘した。
起業家向け窓口刷新 個室やキッズスペース設置
浜松市と浜松地域イノベーション推進機構(同市中区)と連携し、浜松商工会議所会館内に設置している創業支援総合窓口「はままつ起業家カフェ」を刷新した。従来の1・7倍の面積に拡充し、相談者のプライバシーに配慮した完全個室型の相談室を用意した。また、子連れでも来訪できるように相談室内にキッズスペースを常設した。
カフェ内のセミナー室やラーニングスペースは予約不要で利用でき、参考図書や資料の閲覧など調べ物や資料作成などの作業ができる。地元産の天竜ヒノキを利用したエントランスでは、これまでにカフェを利用した起業家の紹介や展示を行っている。はままつ起業家カフェは15年に開設した。年間約1200件の相談に対応し、約100人が起業している。