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福島県産業界
未来に向け飛翔する『福島の有力企業・団体』
北芝電機/CNに貢献する変圧器好調
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北芝電機の本社・変圧器技術開発センター外観
北芝電機(福島市、安藤秀泰社長)が手がける菜種油適用の変圧器が好調だ。カーボンニュートラル(CN)で環境負荷低減に貢献する製品として、電力会社や再生可能エネルギー事業者などで導入が進み、安藤社長は「来年は年間出荷が120台を超えそうだ」と期待を寄せる。
環境調和型変圧器は絶縁油に植物油(菜種油)を適用する。菜種油の廃棄処理時に生じる二酸化炭素(CO2)は、アブラナが生育時に吸収したCO2と同等のため地球温暖化防止に貢献する。
また、菜種油の燃焼点は300度C以上と、鉱物油系絶縁油の引火点140度Cに比べて高く、安全性に優れるほか、一定の要件を満たせば消火施設費用を低減できる。さらに菜種油の生分解性は89%と鉱油の17%より高く、環境汚染防止が図れる。
最近では宮崎大学との共同研究が始まった。同変圧器の基礎特性について研究を深め安藤社長は「変圧器に関する技術者育成や製品改良につなげる」とする。製品改良の推進により設計・製造・調達の各分野でコスト低減に努め、販路拡大を図る。
マコト精機/導入先のライン止めない モノづくり継続へ
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マコト精機が手がける冷間ロール成形機
マコト精機(福島県会津若松市、古川信吾社長)は冷間ロール成形機のメーカー。自社で設計から部品加工、組み立て、電気制御、据え付けまで一貫体制を敷いている。
鋼板を複数のロール状金型に通すことで製品を成形する冷間ロール成形法は、同一形状の製品断面を連続生産できる。建材や自動車といった元々の顧客以外に「最近はインフラに関する業界からも声が掛かるようになり、営業範囲は全国に拡大している。直近は西日本地域での引き合いが強い」と古川社長は手応えを話す。
半世紀以上続く履歴管理の徹底と、自社一貫対応による手厚いアフターサポート体制などが評価され「顧客の要望に近いモノづくりができており、信頼をいただいている」(古川社長)。また「『導入先の生産ラインを止めてはいけない』創業者の思いが、半世紀以上にわたり社員へ浸透している」(同)のも強みだ。
マコト精機は生産性向上のため定期的な設備投資を続けている。今年5月には5面加工機1台を更新した。多く寄せられている仕事に対応しつつ、顧客の要望に応えるモノづくりを続けていく。
花見台自動車/物流2024年問題に対応した製品の拡販に注力
花見台自動車(福島県いわき市、能條幹也社長)はトラックのスライドボディー「セフテーローダ」やトレーラーなど、輸送用機器を製造販売している。
セフテーローダは車両や各種自走機械、故障車両の搬送において安全性や人員省力化、時間短縮に優れており、日本一のスライドボディー生産実績を達成したこともある。
物流業界では運転手の時間外労働是正のための規制がスタート。運送業者は限られたリソースで対応せざるを得ない「2024年問題」に直面している。
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花見台自動車が手がける土砂ダンプトレーラー『花見台HDD220』
花見台自動車はその対応策として通常のダンプカー比2倍の荷物を積めて小回りが効く土砂ダンプトレーラー「花見台HDD220」の拡販に力を入れている。トレーラーは積める量が多い反面、全長が長くなり運転しづらい課題がある。同社は連結部に着目。連結部を独自設計で短くし、安定性を確保した。少ない台数と人数で同じ量の荷物を運べることで、二酸化炭素(CO2)排出削減にもつながる。
能條健二会長は「企業のカーボンニュートラル(CN)対策や人手不足対策に貢献できるのでは」として、引き続き製品アピールに力を注ぐ考えだ。
会津工場/高精度鋳物量産工法で受注拡大へ
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会津工場がHプロセス工法で製作した鋳物
会津工場(福島県只見町、鈴木直記社長)は主に自動車のエンジン部品の鋳造を手がける。高精度の鋳物を量産できる独自工法「Hプロセス」を確立。鋳物の薄肉・軽量化や複数部品の一体化に成功し、トヨタ自動車の「レクサス」や日産自動車の「インフィニティ」など高級車ブランドに採用されている。
Hプロセス工法は鋳型を水平に複数個連結して鋳造する工法で、一度に複数の鋳物を作れる。シェルモールドを採用するなど独自の工夫を重ね、生砂型鋳造では不可能だった高精度のダクタイル鋳鉄鋳物部品の製造を可能にした。
同工法を使えば従来の鋳物寸法公差プラスマイナス1・5ミリ―2ミリメートルに対し、プラスマイナス0・25ミリメートルを実現できる。素材重量減と加工工数削減により大幅なコストダウンも可能という。
これまでの技術営業が実を結び、今年からロボット向けと半導体製造装置向け部品の量産がはじまるほか、新規で車向け高性能エンジン部品の受注もスタートする。これらの実績を強みに「世界へ発信し技術を売り込んでいく」(鈴木社長)方針を掲げる。
福島相双復興推進機構/ものづくり共同受注体4月発足
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相双テクノネットワークの参画メンバー
福島相双復興推進機構(福島市、北村清士理事長)は、福島県相双地域(沿岸北中部地域)の工業系製造業分野の企業が連携し、設計・製造や加工などを共同受注するグループ「相双テクノネットワーク」を4月に発足させた。同県内の東日本大震災被災地では、企業単独で需要や顧客の要望に応えられず受注を逃がす事例がある。共同体発足で地域企業の受注力強化や販路開拓を目指す。
相双地域を中心に金属加工、樹脂加工、電子基板製造などの15社で発足した。
依頼案件内容や分野ごとに、中核となるコーディネーター企業が各社の得意分野や技術・生産力、設備などを踏まえ参画企業に声をかけ、対応できるチームを作る。製造の役割や労力を分担し、さまざまな仕事に応えられるようにする。
チームの組成によって単独では対応できない大量の注文や、ユニット品や完成品などの一定の組み立てが必要な製品の生産、需要増が見込まれる原子力発電所廃炉や航空宇宙など、複数の分野の技術が必要な需要の取り込みを狙う。
相双機構は福島県で進む国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」や福島国際研究教育機構(同県浪江町、F―REI)関連の開発案件にも関われるよう、参画企業に技術力向上を促し、地域課題に結びつける考えという。
2011年の東日本大震災・東京電力福島第一原発事故で被災した相双地域は、産業の回復や新たな産業基盤の構築が長期的な課題となっている。相双機構によると、手厚い支援策によって相双地域には県内外から企業進出が進む一方、受け皿としての役割が期待される地元企業が、単独では一括の製品発注に対応できない課題がある。そのためユニット単位や最終製品製造依頼の需要に応える共同体方式が必要と判断した。
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共同受注体が受注した風力発電機(写真は同型機)
相双機構ではこれまで共同体のフレーム作りを進め、共同体として既にチャレナジー(東京都墨田区)から小型風力発電機を受注した。25年度は共同体の運営実践期間としてPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回し、見積もり6件、受注3件を目標としている。26年度以降は参画企業での自立運営を目指す。
相双機構の村山明日香産業創出グループ長は「インターネットやモノづくり展示会での情報発信で共同体の認知度を高める。関係機関からの協力も得ながら、F―REIや大手製造業からの受注可能性も模索していきたい」と意気込む。