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福井県産業界2025
グローバル企業などによる最先端工場や研究開発拠点の新設・開設が続く福井県。北陸新幹線の福井延伸で、2024年に過去最多を更新した観光客やビジネス客は足元も堅調で、チャンスと捉えた再開発や投資の動きが広がっている。インバウンドが少ない課題はあるものの、2025年大阪・関西万博などを通じて国内外に魅力を広げていく。
強み融合イノベ創出
脱炭素で産学官連携
2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現を目指し、福井大学、産業技術総合研究所、福井県立大学、福井県の4者が脱炭素関連技術で相互協力する協定を締結した。地場産業である繊維分野での脱炭素や資源循環の研究開発、社会実装などを加速し、持続可能なモノづくりと北陸地域の活性化、国内製造業の持続的な発展に結びつける。
個別の研究活動や共創プロジェクトなどでの連携はあったが、4者での協定締結は初めて。それぞれの強みを融合し、繊維やプラスチック、炭素繊維複合材料などの化学処理による無害化・リサイクル、持続可能なモノづくりサイクルの構築、福井発のイノベーション創出を目指す。
繊維や宇宙でオープンイノベ
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未来共創テキスタイルセンター開設
福井大学産学官連携本部は、繊維産業の革新や宇宙分野の研究開発などを外部とのオープンイノベーションで推進する拠点「未来共創テキスタイルセンター」を文京キャンパス(福井市)に設けた。強みの水を使わない染色・脱色技術の実用化などで企業との共同研究を加速し、人工衛星などの精密試作も推進。技術交流がしやすいオープンイノベーションフロアも設けた。
同センターは3階建て。1階では超臨界流体染色・脱色技術を研究開発する設備などを導入し、環境負荷を低減する循環型繊維産業の推進に取り組む。2階は人工衛星などの工作も可能な精密試作室などを設置。3階は対話を弾ませる多様な工夫を盛り込んだ交流スペースで、新たな価値の創造を後押しする。
【インタビュー】 福井工業大学 学長 掛下 知行 氏/宇宙分野で知名度向上
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福井工業大学 学長 掛下 知行 氏
—大学を取り巻く環境は。
「少子化が進む中で、定員確保が一番の課題。地方にある私立大学が生き残るにはブランドを明確にし、地域に特化した取り組みを行い、特色ある大学になる必要がある」
—ブランド化の一つが宇宙分野の研究です。あわらキャンパス(福井県あわら市)に四つのパラボラアンテナを整備しました。
「衛星から月や地球に関するビッグデータを受け取る地上局で、(2024年6月に完成した)月周回衛星用の口径13・5メートルのパラボラアンテナが目玉だ。福井県やセーレンなどが衛星製造で地場産業を活性化させようと取り組んでいるが、当大学のアンテナが縁の下から取り組みを支えている。また3年ほど前から高校生をあわらキャンパスに呼び、アンテナを見学してもらっている。知名度が上がっているのか、応募人数が増えている」
—北陸新幹線延伸開業の影響は。
「福井県と関西とのつながりが切れてしまった。当大学も関東方面の新幹線沿線の高校にアタックをかけようと、意識が向き始めている。ただ、新幹線開業以上に、当大学がどのような特色を持って教育をしているかの方が、学生に来てもらう上では大切だ」
【インタビュー】 福井大学 学長 内木 宏延 氏/社会に開かれた大学に
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福井大学 学長 内木 宏延 氏
—社会が大きく変化する中、4月に新学長に就任されました。福井大学の使命は。
「山椒は小粒でもぴりりと辛いという言葉が好きで、この言葉をモットーに、小さくても福井県や日本に無くてはならない存在感のある大学にしなければならない。社会に開かれた大学にしていく」
—北陸新幹線が敦賀まで延伸して1年がたちました。
「受験生が増えたかという観点では、検証してみないとなんとも言えない。東京方面との往来は便利になったが、中京・関西方面は電車を乗り換える必要がある。志願者数を増やすためには、良い教育をする必要がある。地域における優秀な人材に優れた教育のチャンスを与えると共に、全国からも優秀な人材が集まってくることが大事だと考えている」
—福井県内企業への就職促進にも力を入れています。
「卒業生を福井県に残して、福井のニッチトップ産業の維持発展に寄与していくことも大きなミッションの一つ。工学部系の学生を増やすためにも、高校などへの入試広報に力を入れている。また、工学部の教育カリキュラムの中で、福井企業と交流する機会を多く持てる取り組みも行っている。地元企業の関心を高め、一人でも多く、卒業生を福井県に残したい」