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福井県産業界2025
グローバル企業などによる最先端工場や研究開発拠点の新設・開設が続く福井県。北陸新幹線の福井延伸で、2024年に過去最多を更新した観光客やビジネス客は足元も堅調で、チャンスと捉えた再開発や投資の動きが広がっている。インバウンドが少ない課題はあるものの、2025年大阪・関西万博などを通じて国内外に魅力を広げていく。
県内企業の投資加速
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松浦機械製作所武生事業所全体 奥側と奥から2つ目の右側が新棟
北陸新幹線が敦賀まで延伸して1年がたった。関東圏や信越地域と往来しやすくなり、福井県産業のさらなる発展が注目される。県内では製造業の新棟建設をはじめとする投資が増えており、今後の成長に期待が高まる。
5軸マシニングセンター(MC)などを手がける松浦機械製作所は、武生事業所(福井県越前市)の新生産棟を1月に稼働した。本社で行っていた大型機の組み立てを同事業所に移し、工作機械やスピンドル(主軸)の組み立て機能を集約した。大型機の組み立てエリアは本社で行っていた時よりも広く、MCの生産性向上を狙う。
工作機械の組み立て機能を持つ新棟と、主軸の組み立て機能と食堂や休憩室など福利厚生機能を持った新棟の計2棟を整備した。従来は本社工場(福井市)で大型機を、武生事業所ではボリュームゾーンの中・小型機の組み立てを手がけていた。集約により、人材育成にも力を入れていく。同事業所は北陸電力が提供する二酸化炭素(CO2)排出ゼロの電気「実質再生可能エネルギー電気」を使うことでカーボンニュートラルにも対応する。
包丁をはじめとする刃物の材料として使用される異種金属接合材料「クラッド材」を製造する武生特殊鋼材は、本社(福井県越前市)に新棟を建設した。クラッド材の製造に使う熱間圧延機の導入により、熱間圧延工程の生産能力は約2倍に拡大した。6月から部分的に稼働を始めており、9月以降の本格稼働を目指している。
導入した熱間圧延機は従来機より幅広の材料に対応しており、受託加工を増やすほか、刃物以外の用途での採用拡大も目指している。今後は後工程の設備導入も検討していく。同社のクラッド材を使用した品質の高い包丁などが海外で人気が高まっていることなどから、既存設備はフル稼働状態だった。
繊維加工用薬剤などの化学品事業や、ヘアケア剤などの化粧品事業を展開する日華化学は、化粧品の新工場を福井市内に建設する。投資額は195億円で、2027年の本格稼働を目指している。新工場は24時間稼働のスマートファクトリーとし、生産性を大幅に高める計画だ。
市場成長を見込む高収益な化粧品事業の売上高を35年に23年比2倍の280億円に高める計画の一環。化粧品事業は現在、本社工場(同市)と国内子会社、協力工場などで生産するが、本社から徐々に新工場へ生産を移管し、子会社を含む生産品目の見直しや内製化を進める。
外装建材や内装建材、床関連材などの建材事業などを展開するフクビ化学工業は、23—27年度にわたる5カ年の第7次中期経営計画を策定した。企業価値を高め、安定的な経営を目指す。同中期経営計画期間中に新工場を設立予定で、同中計期間中の成長投資枠は105億円。その一部を新工場への投資にあてる。第一期工事では、断熱に関する生産拠点拡大の投資を行う計画で、27年度に稼働・竣工を目指している。
県外企業は電子部品投資
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村田製作所が建設中の「セラミックコンデンサ研究開発センター」
福井県の産業といえば繊維やめがねなどのイメージが強いが、製造品出荷額等のトップは実は「電子部品・デバイス・電子回路製造業」だ。近年も電子部品関連の設備投資が活発に行われている。
村田製作所は北陸新幹線・越前たけふ駅(福井県越前市)の目の前に、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の新しい研究開発拠点を設ける。2026年4月開業予定で、投資額は約350億円。研究開発に特化した最先端の環境を整備し、研究開発の高度化や技術者の育成を図るという。生産プロセスや製品開発を通じて世界首位のMLCCの競争力に磨きをかける。
MLCCをめぐっては、東洋紡が敦賀事業所(福井県敦賀市)でMLCC製造に不可欠な「離型フィルム」の生産体制を強化済み。20年以降、コーティング加工機を相次ぎ2台稼働した。コーティングは離型フィルムに求められる平滑性や離型性に関わる重要工程。MLCCは年7%での市場成長が見込まれており、需要増に対応する。
旧本社を改装
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セーレン 改装した旧本社の2階部分
セーレンは1937年に建てられた4階建て旧本社屋(福井市)を改装し、社内外のコミュニケーションに使えるスペースとして利用を始めた。
同社のデジタル製法で加飾して印刷する技術「ビスコテックス」を使って大理石を表現した床材などを2階部分に採用。最先端の商材も展示しており、ショールームの機能も持つ。同社の過去・現在・未来を感じられる場所にした。
旧本社屋は、45年の福井空襲や48年の福井地震も乗り越えており、2007年には経済産業省の近代化産業遺産にも認定された。
【メッセージ】 福井県知事 杉本 達治 氏/投資とにぎわいの好循環
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福井県知事 杉本 達治 氏
2024年3月の北陸新幹線の福井・敦賀間開業から1年が経過し、関東圏や信越地域を中心に県外来訪者が年間を通じて約2割増加するなど、開業効果が表れています。引き続き、空き店舗や老朽化ビルなどの再開発を進める「県都まちなか再生ファンド事業」に取り組み、「投資とにぎわいの好循環」を続けてまいります。
また、県内産業の成長と若者や高度人材の確保を目指し、魅力的な企業の誘致を進めてまいります。半導体企業やデータセンターなどの大規模投資促進のため、都市圏並みの給与水準などを要件に全国トップの最大120億円を支援する「成長産業立地促進補助制度」を創設しました。今年に入り、産業技術総合研究所北陸デジタルものづくりセンター(福井県坂井市)の新棟整備の決定、福井大学・福井県立大学・産総研との「脱炭素技術に関する連携協定」の締結、IHI・産総研との「空のカーボンニュートラル先進複合材料連携研究ラボ」の共同設立と、本県のものづくり技術を生かしたイノベーションを進める取り組みが続いています。今後も、高付加価値化を目指した研究開発や製品づくりを推進してまいります。
米国相互関税に関しては、現時点で影響はないものの県内企業の資金繰りや販路開拓の支援など、時期を失することなく速やかに対応してまいります。
【メッセージ】 福井商工会議所会頭 八木 誠一郎 氏/広域的な経済連携を推進
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福井商工会議所会頭 八木 誠一郎 氏
2024年の春に北陸新幹線が敦賀(福井県敦賀市)まで延伸されたことにより、福井県は首都圏、信越地域とのアクセスが格段に向上しました。
これにより、ビジネスや観光など、多方面にわたる人的、あるいは経済的な交流が活性化し、福井県の新たな可能性が開かれつつあります。
そのような交流拡大の流れの中で、昨秋に開催されました「北陸技術交流テクノフェア2024」では、過去最多の出展企業が集い、特に北陸新幹線の沿線都市からの参加が増加するなど、広域連携の可能性が着実に広がりを見せました。
2025年の北陸技術交流テクノフェアでは、「ヒトと企業を輝かせるウェルビーイングテクノロジー」をテーマに、福井県内外の優れた技術や製品を紹介し、新たな出会いや共創を促進します。
今回は、2025年大阪・関西万博で披露された技術の展示も予定しており、国内外の先進事例に触れる絶好の機会となります。
また、北陸新幹線の沿線都市で開催される展示会への福井県内企業の共同出展も予定しており、県外とのつながりをさらに強化してまいります。
福井商工会議所では、こうした時代の流れを的確に捉えながら、地域産業の持続的な成長と広域的な経済連携の推進に努めてまいります。