-
業種・地域から探す
続きの記事
エネルギー産業
石油 安定供給・環境貢献を推進
一次エネルギーの中で石油が占める割合は大きく、平時・緊急時にかかわらず安定的なエネルギー供給が重要だ。6月4日に経済産業省からエネルギー白書「エネルギーに関する年次報告」が発表された。石油製品の国内需要は緩やかな減少傾向にある一方、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を実現するための持続可能な航空燃料(SAF)やアンモニアの導入を目指した取り組みが動き出している。
原油/中東依存 再び上昇 過去更新95%
エネルギー白書によると、世界の石油確認埋蔵量は2020年末時点で約1・7兆バレル、これを20年の石油生産量で除した可採年数は53・5年となった。世界の石油消費量は経済成長とともに拡大し、22年には1日当たり9731万バレルとなった。また、22年の世界の原油生産量は1日当たり約9400万バレル。
日本は原油の大半を蒸留・精製してガソリンや軽油、灯油などの石油製品に転換し、国内で販売や輸入をしている。22年度の油種別販売量のシェアはガソリン29・7%、ナフサ25・3%、軽油21%となった。
国内の原油自給率は1970年頃から2022年度まで継続して0・5%未満の水準にあり、エネルギー資源の大部分を海外に依存している。22年度の原油輸入に占める中東地域の割合(中東依存度)は95・2%と過去最高となった。日本は2度のオイルショックから原油輸入先の多角化を図ってきたが、近年のロシアによるウクライナ侵攻を受けて再び中東依存度が上昇傾向にある。
石油製品の国内需要は緩やかな減少傾向にあり、石油精製各社は生産設備の集約化を進めている。国際エネルギー機関(IEA)は各加盟国に対して石油純輸入量の90日分以上の緊急時備蓄を勧告している。日本は23年8月時点で198日分の石油備蓄を保有している。
石油関連各社は安定供給と脱炭素という課題に対して企業努力を継続している。
SAF/供給網構築へ新組織
こうした中、航空分野では脱炭素化に向けて動き出している。
経産省は24年度予算概算要求に、「化石燃料のゼロ・エミッション化に向けたSAF・燃料アンモニア生産・利用技術開発事業」として前年度比38%増となる98億円を盛り込んだ。
23年12月のグリーン・トランスフォーメーション(GX)実行会議で「分野別投資戦略」が策定や24年度税制改正ではSAFが税控除の対象物資となるなど、SAFの普及・導入に向けた取り組みが始まっている。
22年3月、SAFの商用化および普及・拡大を目的とした有志団体「ACT FOR SKY」が設立した。
事業として国産SAFに直接関係するサプライチェーン構築の主体となる企業を「ACTメンバー」(参画企業27社=24年6月26日現在)、国産SAFのサプライチェーン構築に必要な企業や自治体を「SKYメンバー」(同16社)とし、連携した国産SAFのサプライチェーン(供給網)を構築する。
バイオ燃料/製造の事業化 始動
富士石油は袖ケ浦製油所(千葉県袖ケ浦市)でSAFを目的生産物とするバイオ燃料製造の事業化に向け、23年5月に製造プラントの基本設計を開始した。現在は技術的な可能性や採算について評価・検討を行っている。供給開始の目標は27年度で、年間約18万キロリットルの製造を想定している。同製油所は東京湾内に位置しているため、羽田空港や成田空港へのSAF搬入がスムーズに行える。
また、同社は国営サウジアラムコ(サウジアラビア)から低炭素アンモニアの受け入れを実施したことを23年4月に発表した。輸入したアンモニアは製造過程で発生する二酸化炭素(CO2)を分離・回収した低炭素アンモニア。輸入した低炭素アンモニアは、石油精製の過程で副生されたアンモニアとともに、ボイラ燃料として既存の化石燃料との混焼実験に使用された。
カーボンニュートラルの実現に向けて、アンモニアの燃料利用は有力な手段として、火力発電や工業炉、船舶用燃料として広く利用されることが期待されている。同社は脱炭素の技術確立などを視野に「アンモニアのボイラ燃料としての利用やサプライチェーンの構築に向けた検討に鋭意取り組む」と方針を示した。
富士石油は今年4月に出光興産との資本業務提携に関する合意書を締結した。燃料油事業での協業深化や、将来の脱炭素化に向けた施策の推進を目的とする。
両社は原油やナフサの調達・配船業務の共同化、定期修理工事の共同管理化、その他の両社の利益最大化に資するシナジーの検討、次世代カーボンニュートラル燃料の供給拠点化に向けた投資検討を行っていく。