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エネルギー産業
導入広がる クリーンエネルギー
脱炭素とデジタル変革(DX)に伴う電力需要の増加ー。この二つの潮流がクリーンエネルギーの導入拡大を大きく後押ししている。政府は次世代エネルギーの重点分野を定め、兆円単位の予算を措置して技術開発から事業化までを強力に推進する方針だ。今国会では関連法案も複数成立し、下地は整いつつある。策定に向けた作業が始まった次の「第7次エネルギー基本計画」にも注目が集まる。
太陽光発電/薄型柔軟-量産体制 官民協議会で政策の方向性
「強靱(きょうじん)なエネルギー需給構造への転換を着実に進めることが、日本にとって極めて重要。そのためにクリーンエネルギー中心の産業構造・社会構造への転換が重要だ」。2024年版エネルギー白書では、クリーンエネルギーの重要性が強調された。
23年末に開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、30年までに世界の再生可能エネルギーの発電容量を3倍に増やす目標に合意。現行のエネルギー基本計画では30年度のエネルギーミックスで再生エネ比率を36-38%に高める目標を掲げているが、40年度を見据えた次期計画では、さらなる引き上げも予想される。
現在の再生エネの主力は、主要国で最大級の平地面積当たりの導入量を誇る太陽光発電だ。ただ平地の少ない日本では太陽光パネルの設置面積に限界がある。そこで政府が活用を見込むのが、薄型柔軟なペロブスカイト太陽電池だ。壁面や耐荷重性の低い屋根など、これまで難しかった場所にも設置が可能に。主要原材料のヨウ素は日本が産出量で世界2位となる30%のシェアを握っており、サプライチェーン(供給網)を含めた安定供給が見込める。
政府は25年の事業化を目指し、20年代半ばに年100メガワット級、30年を待たずにギガワット級の量産体制を構築することを目標に掲げる。5月には導入拡大に向けた官民協議会を設置した。開発に取り組む積水化学工業などの国内メーカーのほか、建設や不動産の業界団体、中央省庁や自治体など約150社・団体が参加。国際的な競争力を失ったシリコン型太陽電池の反省を踏まえ、今後、量産技術の確立や生産体制整備、需要創出に向けた政策の方向性を議論する。
洋上風力発電/再生エネの〝切り札〟 「浮体式」推進で技術研究会
合わせて経済産業省幹部が「再生エネ導入拡大の切り札となる」と重視するのが、洋上風力発電だ。国土を海に囲まれた日本は洋上風力の適地が多い。政府は年までに땳㍗、年までに땳뗙땳㍗の案件形成を目標にする。年に施行された「再エネ海域利用法」に基づき、欧州で確立された「着床式」の案件形成を進めている。
一方、遠浅の海が広がる欧州とは異なり急深な地形を持つ日本では「浮体式」の導入が欠かせない。エネルギー供給の面だけでなく、世界に先駆けて技術を確立しサプライチェーン構築や市場開拓することで、産業競争力の向上にもつながる。脱炭素技術の開発から実装までを支援するグリーンイノベーション基金のうち1235億円の予算を充て、次世代風車の開発や基礎の製造・設置コストの低減技術開発などを実施している。
3月にはエネルギー関連の社が「浮体式洋上風力技術研究組合」を設立。6月日には経産省が出力1万5000뗞㍗超の大型風車を使った浮体式洋上風力発電の実証に「秋田県南部沖」と「愛知県田原市・豊橋市沖」の2海域の事業者を採択した。年度にも実証を始め、年度末までの運転開始を目指す。
日に閉会した通常国会では洋上風力を排他的経済水域(EEZ)まで広げることを可能にする再エネ海域利用法の改正案など、次世代エネに関する法案提出も活発だった。同改正案は継続審議となったが、天然ガスなど既存燃料との価格差や拠点整備を支援する「水素社会推進法」や、二酸化炭素(CO2)の回収・貯留を行う「CCS事業法」が成立。今後の事業化や導入拡大につなげる。