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コンプレッサー(2024年10月)
工場全体の消費電力において高い比率を占めるコンプレッサーの省エネルギー化・カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)対応は、2021年後半からのエネルギー価格の高騰の影響を受けて、従来よりもさらに重要性を増している。センシング技術、モノのインターネット(IoT)インフラ、制御・運用技術(OT)システムの発展・普及によって工場の課題を明確化し把握することは容易となり、明確化された課題の解決に向けてより細かな対策が求められるようになってきている。この状況を受けてコンプレッサーについても、省エネ・安定稼働を実現するためのより細かな要請に応えられるよう、進化が求められている。ここでは、コンプレッサーの省エネ・安定稼働に関して現在主流とされる方法と課題、現段階での解決策について解説した上で、今後のコンプレッサーに求められる進化の方向性について述べる。
省エネ・安定稼働を実現 コンプレッサー
【執筆】アネスト岩田 エアエナジー事業部 事業戦略部 竹脇 邦幸
エネルギーロス少ない インバーター制御
コンプレッサーが工場で占めるエネルギー消費量は一般的に10%-30%程度と言われており、省エネを推進すべき設備として挙げられることが多かった。そこに東日本大震災やロシアによるウクライナ侵攻が発生したことで、電力単価はそれ以前と比べて40%近くも上昇した。
多くのエネルギーを消費する設備として、コンプレッサーの省エネ対策の重要度・緊急度はさらに増すこととなった。そのような中、多くの工場が取り入れてきた省エネ手法の筆頭に挙げられるのが、インバーター制御によるスクリューコンプレッサーの導入である。
従来の制御方式によるスクリューコンプレッサーは、圧縮空気の消費量が減少しても消費電力を大きく下げることが難しく、例えば圧縮空気の使用量が50%まで減少しても、消費電力は60%-70%程度までしか落とすことができないという課題があった。
それに対しインバーター制御のコンプレッサーは、コンプレッサー本体の回転速度を柔軟に調整することで空気量と消費電力をコントロールし、空気消費量とおおむね同じレベルで消費電力を減少させることができる(図1)。
これに加えてインバーター制御には、制御自体によるエネルギーロスが少ないという特徴もある。圧縮運転(ロード)と待機運転(アンロード)を切り替える従来型の制御では、制御のため実際に使用する圧力よりも高く上げる必要があり、その分エネルギーを無駄に消費することになる。この制御によるエネルギーロスは一般に5%強と言われており、省エネ化を追求する上では決して少なくない値となる。
この従来型の制御方式と比べて、多くの使用条件において高い確率で省エネ効果を期待できる手軽さもあり、インバーター制御コンプレッサーは2-3割程度高い価格にもかかわらず、その導入比率は年々上昇を続けている。23年度には70%に迫る水準まで増加し、多くの製造現場で使用されるようになっている(図2)。
省エネの難度高いオイルフリー式
先に述べた通りインバーター制御コンプレッサーの省エネ期待効果は高く、多くの工場で導入台数を増やしている。その一方でインバーター制御は必ずしも万能ではなく、特にオイルフリー式では省エネにならないケースが多く見られるということには注意しておきたい。
これを理解するためにはコンプレッサーの構造について少し知る必要があるため、本題からそれないようごく簡略化して説明する。
スクリューコンプレッサーは回転する部品によって空気を徐々に狭い部分に押し込めて圧縮空気として送り出すつくりになっており、この回転部分と固定部分の間には、金属同士の接触によるかじりを防ぐためわずかな隙間が設けられている。
この隙間からは押し込められた圧縮空気が逆流しようとするため、何らかの対策が必要となる。ここにオイルを掛けて逆流を減らすのが給油式(オイル潤滑式)、回転数を上げて逆流するより早く追い出してしまうのがオイルフリー式となる。
こうしたコンプレッサーの構造と、先に述べたインバーター制御の仕組みを見比べると、高い回転数により逆流を防ぐオイルフリー式と、回転数を下げて消費電力を落とすインバーター制御は、根本的に相性が悪いということが分かってもらえると思う。
細かな理屈は割愛するが、回転数が落ちて逆流量が増えると、コンプレッサー本体の寿命の低下や故障を引き起こすリスクが跳ね上がってしまう。そのため、インバーター制御では一定以下の回転数に下げることができないという制約がつきまとう。
この回転数の下限値は設計により異なるが、給油式では20-30%程度まで下げることができるのに対し、オイルフリー式では40-60%程度までしか下げることができないとされる。したがってインバーター制御のオイルフリースクリューコンプレッサーでは、圧縮空気の消費量が減少し回転数を下げようとしても早々に制御の限界に到達してしまい、効率の悪い従来型の制御であるアンロード運転に切り替えざるを得なくなる。
アンロード運転は自動車のアイドリング状態のようなものであり、空気が全く圧縮されていないのに30%程度の電力を消費しながらモーターを回し続けることになるため、結果として省エネ効果が期待できない状態となってしまう。
さらに、コンプレッサーは工場の動力源である圧縮空気を供給することが基本的な使命であるため、安定稼働を損なうわけにはいかないという事情も加わる。機械である以上、不意の故障は想定しておくべきものではあるが、コンプレッサーが故障することで圧縮空気の供給が絶たれ、生産がストップしたり不良品を大量に出したりすることは、工場としては何としても避けたい事態である。
そのため、コンプレッサーをあえて複数台に分けて停止リスクを分散し、被害を緩和する対処を取る工場も多いが、オイルフリー式のコンプレッサーは給油式と比べて寸法や騒音値が大きくなることが多く、それを小分けにして複数台設置することは、費用面でも設置場所の面でも負担が大きく実施のハードルは高くなる。
このようにオイルフリーエアを必要とする工場で省エネと安定稼働を実現する難易度はどうしても高くなりがちであり、インバーター制御のコンプレッサーを導入することよりも、さらに優れたアプローチが求められている。