-
業種・地域から探す
続きの記事
コンプレッサー(2024年10月)
工場全体の消費電力において高い比率を占めるコンプレッサーの省エネルギー化・カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)対応は、2021年後半からのエネルギー価格の高騰の影響を受けて、従来よりもさらに重要性を増している。センシング技術、モノのインターネット(IoT)インフラ、制御・運用技術(OT)システムの発展・普及によって工場の課題を明確化し把握することは容易となり、明確化された課題の解決に向けてより細かな対策が求められるようになってきている。この状況を受けてコンプレッサーについても、省エネ・安定稼働を実現するためのより細かな要請に応えられるよう、進化が求められている。ここでは、コンプレッサーの省エネ・安定稼働に関して現在主流とされる方法と課題、現段階での解決策について解説した上で、今後のコンプレッサーに求められる進化の方向性について述べる。
複数台・マルチ制御-リスクに備え
マルチステージ制御で効率を最大化
これらの課題を解決する一つの手段として、マルチステージ制御のオイルフリースクロールコンプレッサーが挙げられる。マルチステージ制御とは、複数のコンプレッサー本体を搭載しているセットにおいて、負荷状況に応じてコンプレッサー本体の運転台数を調整する制御方式である。
この制御方式では、常に最も圧縮効率に優れた定格回転数で運転させることになるため、インバーター制御よりもさらに優れた完璧な負荷追随を行うことが可能となり、運転効率を最大限に高められる点で優れている。
複数台のコンプレッサー本体を内蔵していることにより、万が一の故障時にも圧縮空気の供給が完全に停止することを防ぎ、生産へのダメージを抑えられるメリットも持ち合わせている(図3、4)。
前にも述べた通り圧縮空気は工場の動力源であるため、これを安定的に供給することはコンプレッサーにとって最も重要な機能であり、これに貢献できるマルチステージ制御は非常に有用なものであるといえる。
このように、コンプレッサーにとって重要な省エネと安定供給の両方に貢献できる点において、マルチステージ制御はインバーター制御より優れた方式である。特に空気消費量の変動が大きい工場においては、最適の選択肢といえる。
しかし逆に、空気消費量の変動が小さい工場では制御方式による省エネ性への影響度が低下するため、優れた圧縮効率を持つスクリューコンプレッサーをインバーターで制御する方式の有用性が相対的に向上する。つまり工場のエアラインにおける状態を正しく理解した上で、コンプレッサーの特徴を最大限引き出すような使い方を選択する必要が求められる。