-
業種・地域から探す
続きの記事
第10回ものづくり日本大賞
「ものづくり日本大賞」は、日本の製造業において革新的な技術や優れた技能、社会的価値の高い取り組みを行った個人・団体を顕彰する政府主導の表彰制度。第10回の受賞者が選定され、3月25日に内閣総理大臣表彰などが首相官邸で行われたほか、また全国では地域ごとに各賞の授賞式が開かれた。環境対応、デジタル化、地域活性化といった多様なテーマを包含しながら進化する取り組みが、国内外で今後も重要な役割を果たしていくことが期待されている。
受賞者・受賞企業一覧②
◇優秀賞/スズキハイテック(山形市) 鈴木 尚徳 氏 ほか6人
電動車分野をめっきでレボリューション!
-
微細加工への部分めっきなど最新技術で新市場を追求
自動車業界のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)時代への変革に合わせ燃費性向上と高出力化を両立すべく、部分めっき技術により部品の高耐久性・低騒音化を実現した。燃費性能向上により搭載車種拡大や、グローバル生産車両への搭載も実現している。加工の難易度が高い微細構造への部分めっき、デジタル技術を活用した全数検査工程の自動化、二次元コードによるトレーサビリティーなどの技術を確立し、高い信頼とシェアを獲得した。
従来、多数人員を要した検査工程を大幅に省力化、省人化することで人手不足解消を実現。国内めっき市場が縮小傾向にある中、長年培った技術で新市場を追求し、電動車分野における国際競争力強化に貢献している。事業拡大に向けて大型設備投資も予定され、地域経済にも大きな波及効果が期待されている。
◇優秀賞/コスメディ製薬(京都市南区) 李 英哲 氏 ほか3人
世界初!「貼る注射」が可能となるマイクロニードルの実用化
-
微細な針を使った「貼る注射」
コスメディ製薬は長さ数百マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の微細な針(マイクロニードル)を数百本から数千本林立させた、シート状の「貼る注射」を開発し、実用化した。痛みや不快感を軽減し、患者による薬剤の自己投与が可能。開発に着手した2006年頃はマイクロニードルの微細加工が難しく、製品は試作段階のものが多かった。
同社は実用化に向けて安全性を考慮し、針材を当時一般的であったステンレスではなく、皮膚中にある成分の水溶性ヒアルロン酸を採用。また0・02ミリメートル厚の皮膚表層に挿入し、かつ留まることができる富士山形状のニードルも設計・開発した。08年に量産化に成功し、在宅使用できるヒアルロン酸注入マイクロニードルパッチを美容業界向けに展開し事業化。今後はワクチン接種などの医療・医薬領域への応用を目指す。
◇優秀賞/カワトT.P.C.(山口県岩国市) 桐田 直哉 氏 ほか3人
精密部品加工事業の工程全自動化による生産性向上と新たな地域活性化の取組
-
製造工程をほぼ無人化した金属加工工場
カワトT.P.C.は2025年7月、製造工程をほぼ無人化した2拠点目の金属加工工場を山口県周南市に稼働した。本社から装置の稼働状況などを遠隔監視し、24時間365日稼働する。社員は材料供給や加工後の部品出荷などを行う。4人の社員が交代で1日1人勤務し、社員の都合良い時間に2時間程度作業する。
新たな金属加工工場の名称は「鹿野工場」で、廃校となった旧徳山高校鹿野分校の体育館を所有者の山口県から賃借し、改装、利用している。工場の延べ床面積は約1100平方メートル。CNC旋盤や産業用ロボット、外観検査装置などで構成する加工ラインを8ライン導入した。
社員は本業を別に持つ地元の人材4人を採用した。副業として工場に勤務することにより安定的な給与を得ることができる。地域の雇用拡大につなげたい考えだ。
◇優秀賞/KELK(神奈川県平塚市) 村瀬 隆浩 氏 ほか4人
世界初 環境発電IoTと汎用PCのデータ解析による故障予兆検知システムの開発
-
熱電EH振動センサーデバイス
KELKは半導体製造向け温度制御装置と光通信用レーザー向けペルチェ素子において、世界市場をリードする熱電半導体素子のリーディングカンパニー。熱電発電技術においても世界トップレベルの技術を有する。自己発電により温度差3度Cで動作し、約500メートルの広範囲でワイヤレス送信が可能な熱電EH振動センサーデバイスが評価され、優秀賞に選定された。
モーターなどの排熱を熱源として有効活用し、無給電・電池レスで、大規模工場でも省力化とコスト削減に貢献する。さらに大量データの解析をローカルPCで演算処理し、知識がなくてもIoT(モノのインターネット)データから異常度をモニタリングできるソフトウエアも開発。多くの工場で導入され、販売実績は1600台を超える。設備保全の救世主として期待される。
◇優秀賞/オートネットワーク技術研究所(三重県四日市市) ほか3団体 大塚 保之 氏 ほか4人
自動車の燃費向上に貢献する自動車用アルミニウム電線の開発
-
新開発した自動車用アルミニウム電線
オートネットワーク技術研究所はほか3団体と共同で、自動車の燃費向上に貢献する自動車用アルミニウム電線を開発した。住友電工グループ4社の技術を融合し、導電率の低下を抑えながら強度を上げた2種類のアルミニウム合金を開発。自動車の中でも重い部品であるワイヤハーネス(組み電線)に適用し、電線導体を従来の銅からアルミニウムに置き換えた。ワイヤハーネス重量の約6割を占めていた銅をアルミニウムに変更することで、車両1台当たり約4キログラムの軽量化を実現した。
すでに国内で多数の自動車メーカーが採用し、北米や欧州での採用も進む。さらに2024年度から原料にグリーンアルミの採用を拡大。脱炭素社会を目指し、軽量化による燃費向上に加えてワイヤハーネス単体でも二酸化炭素(CO2)を削減する。
◇優秀賞/タダノ(高松市) 髙島 浩 氏 ほか5人
バッテリ式フル電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR-250N」の開発
-
次世代クレーンとして注目される「EVOLT eGRー250N」
タダノは製品における二酸化炭素(CO2)排出量の35%削減を長期環境目標として掲げる。こうした中で、25トンラフテレーンクレーンのフル電動モデル「EVOLT eGRー250N」を開発した。設計・開発・製造を一貫して自社で手がけ、建設機械として世界に先駆けてCO2排出ゼロを実現した。
騒音面では同社ディーゼル車従来比で作業時10デシベル、走行時7デシベルの低減を達成。騒音課題の改善や作業員の疲労軽減などに貢献する。また電動モーターの特性を生かして、最高速度到達までの時間を従来比で33%短縮。交通渋滞の緩和が期待できる。
このほか災害時には、226キロワット時の大容量バッテリーが非常用電源として活用可能。CO2削減・低騒音・高機動性・災害対応と、多様なニーズに応える次世代クレーンとして注目される。
◇近畿経済産業局長賞/ヒラカワ(大阪市北区) ほか1団体 鈴木 卓哉 氏 ほか6人
水素社会の実現を後押しする水素混焼小型ボイラの開発
-
水素混焼貫流ボイラ -
ヒラカワは創業から114年を迎えるボイラ専業メーカーとして、省エネルギーと環境負荷低減に取り組んできた。潜熱回収技術を採用した蒸気ボイラや温水ヒーターの開発を通じ、産業用熱エネルギー機器の高効率化を進めている。
水素混焼貫流ボイラ「JSNー2000HM」は、関西大学と協力して開発した燃焼技術を搭載。燃焼室を持たない独自の管巣燃焼方式を進化させることで業界トップクラスの低NOx(窒素酸化物)化を達成した。都市ガス専焼でも運転可能なハイブリッド式を採用し、水素インフラが整備途上の環境でも導入できる。首都圏臨海地区での実稼働実績があり、水素利用の社会実装に向けた有効なソリューションとなっている。同社は今後も新エネルギーの利用や燃焼・熱回収技術の開発を進め、産業界の脱炭素化に貢献していく。
