-
業種・地域から探す
続きの記事
第10回ものづくり日本大賞
「ものづくり日本大賞」は、日本の製造業において革新的な技術や優れた技能、社会的価値の高い取り組みを行った個人・団体を顕彰する政府主導の表彰制度。第10回の受賞者が選定され、3月25日に内閣総理大臣表彰などが首相官邸で行われたほか、また全国では地域ごとに各賞の授賞式が開かれた。環境対応、デジタル化、地域活性化といった多様なテーマを包含しながら進化する取り組みが、国内外で今後も重要な役割を果たしていくことが期待されている。
受賞者・受賞企業一覧①
◇内閣総理大臣賞/ナカシマヘルスフォース(岡山市東区) 高橋 広幸 氏 ほか5人
世界初!金属3Dプリンターによる骨質を制御可能とする脊椎スペーサーの開発・製品化
-
治療用の脊椎固定スペーサーに搭載する世界初の3D微細構造「HTS」
ナカシマヘルスフォースは1987年に事業を開始し、日本人の健康寿命と生活の質(QOL)向上寄与を目指した整形外科用製品の開発を行ってきた。学官産連携による研究開発体制を強みとし、大阪大学大学院工学研究科の中野貴由栄誉教授と共同で背骨の治療用脊椎固定スペーサーに搭載する世界初となる3次元(3D)微細構造「Honeycomb Tree Structure」(HTS)を開発した。
骨を構成する組織が特定方向にそろった状態(骨配向性が高い状態)が健常骨に近い状態であるとの考えの下、HTSは骨配向化を人工的に誘導するようデザインされている。
これにより骨癒合の過程で、初期から健常骨に近い骨を形成することが見込まれ、従来製品で懸念される沈下や脱転などの不具合リスク低減が期待されている。
同社は金属3Dプリンターを活用した「ものづくり」に挑戦。生産プロセスの最適化により国内では希少な例となる量産体制を具体化した。
◇経済産業大臣賞/ユーザック(岐阜市) ほか1団体 山下 哲哉 氏 ほか4人
衝撃波による粉塵剥離メカニズムを応用したメンテナンスレス集塵装置の開発と事業化
-
上位機種「コスモーX」が加わり、導入実績を積み重ねている
ユーザックは独自装置「マッハウェイブ」を開発し、超音速流体の衝撃波でフィルターから粉塵を一瞬で分離する集塵装置を事業化した。頻繁に必要だったフィルター交換を5年以上不要にした。
溶接では金属が微小な粉塵となり飛散する。健康被害の防止に集塵機は必須だ。しかしフィルターはすぐ目詰まりし頻繁な交換が必要だった。板金加工が主力で集塵機事業の差別化を模索する同社は2012年に新技術開発に着手。「急がず究極の集塵機を目指せ」との浦崎守宏社長の言葉に集塵機を初めて開発する山下氏と田口氏が全力で取り組んだ。
試行錯誤の中で発見したのが衝撃波の効果。14年に「コスモーZ」として製品化。16年から名古屋大学と共同研究し、原理も解明し装置を進化させた。23年に上位機種「コスモーX」も投入。年々受注が伸びている。
◇経済産業大臣賞/北日本造船(青森県八戸市) ほか1団体 久保田 聡 氏 ほか5人
新素材を用いた次世代型ステンレスケミカルタンカーの開発とその大型化
-
環境性能と運航効率を兼ね備えた革新技術を搭載
世界で初めて、日本製鉄製の二相ステンレス鋼「NSSC2351」を用いたステンレス製ケミカルタンカーを開発した。造船分野では全く使用実績が無かった新素材に対し、熟練職人で構成した溶接チームが加工技術を確立し実用化をはかった。同社では世界最大級のステンレスケミカルタンカーを既に800億円受注している。
造船業界は中国の過剰生産および安値攻勢、EEDI規制による二酸化炭素(CO2)排出量削減、レアメタルを多量に含む素材価格の高騰、積載効率や稼働率の低さなど、さまざまな課題がある。同社の技術はこうした環境下で競争優位性が高く、レアメタルの使用量削減を通じて地政学リスクの低減、我が国の経済安全保障にも大きく貢献。国際競争力を堅持している。新技術を用いた造船業を通じ、基幹産業として地域社会の活性化にも寄与している。
◇経済産業大臣賞/JFEスチール(広島県福山市) ほか1団体 嶋村 純二 氏 ほか6人
中心偏析低減と極表層硬度低減による超厳格仕様耐サワーラインパイプの開発
-
高濃度硫化水素ガスによる腐食割れを防ぐ対策
JFEスチールは「常に世界最高の技術をもって社会に貢献します」という企業理念のもと、独自性や機能性の高い「鉄」を製造し、社会に提供している。
近年、開発されるガス田では、高濃度な硫化水素ガスに対応できる耐久力を持つ天然ガスパイプラインの需要拡大が見込まれている。同社はパイプの鋼材内の成分の凝固位置を測定する世界初のクレーターエンド計と極表層(表層1ミリメートル以内)の冷却速度を低減する制御技術や、独自の非破壊検査技術を確立。全量の品質保証が可能な極表層硬度の全面検査を可能とし、長期間使用可能な天然ガス輸送用ラインパイプの鋼材を生み出した。
2023ー24年には東南アジアのプロジェクト向けで累計8万6000トンのパイプ鋼管を製造・出荷している。今後も安全性、信頼性の高い製品提供に貢献する。
◇経済産業大臣賞/オータマ(川崎市多摩区) 榊原 満 氏 ほか3人
磁気シールドの常識を覆す性能を発揮した「Mudelta Metal」の開発
-
熱処理技術を開発し、超高性能磁気シールドの完成につながった
近年の科学技術の発達により、磁気ノイズに影響され誤作動を起こす機器・装置が増えてきている。磁気シールドは、ノイズの発生側と被害側が共生できる環境を作る技術であり、特に最先端の半導体製造装置や医療検査装置など微弱な磁気ノイズに影響される分野での重要度は高い。
微弱な磁気ノイズのシールドには一般的にJIS規格の鉄ニッケル軟質磁性材料が使用され、JISで規定されているミューアイと呼ばれる透磁率(磁界の引き寄せやすさを表す係数)で評価されてきたが、先端科学分野では不十分であった。そのため独自で新たな指標の透磁率「ミューデルタ」を定め、計測方法を確立。さらにミューデルタを向上させる熱処理技術を開発することで、微弱な磁気ノイズのシールドに適した材料「Mudelta Metal」を完成させた。
◇経済産業大臣賞/住友電気工業(大阪市中央区) ほか5団体 馬場 将人 氏 ほか6人
ものづくりのGXに貢献するCO2アップサイクル素材「metacol」
-
metacolを使用した製品群
住友電気工業の「metacol」は、二酸化炭素(CO2)と鉄を原料に、水素や電力などのエネルギーを消費せず、炭酸鉄を生み出す世界初のGXプロセス技術。炭酸鉄の商業利用は前例がない中、紫外線(UV)反射性や難燃性、プラスチック改質などの機能性を次々に発見。先端用途活用も見込む。
また同社は大阪・関西万博で「住友館」への出展を機に、金属、紙、プラスチックなどの未利用資源にCO2を閉じ込めて商品価値をつくりだす独自の再生・循環ソリューションの提供を開始。事業会社、自治体、教育機関のGX推進パートナーとして、CO2・有価物の商品化、同プロセスを題材にした探求学習支援などを手がける。「役目を終えたものにCO2で命を吹き込むテクノロジーで、あなたのため息を笑顔に換えたい」という夢のある挑戦を今後も続けていく。
◇優秀賞/メトロール(東京都立川市) 杉田 広貴 氏 ほか1人
世界初!研削盤の回転砥石の位置決め技術及び研削加工工程の自動化技術
-
磁石の回転を止めずに研削加工の開始点を自動検出
砥石の回転を止めずに研削加工の開始点を自動検出する「高精度エアマイクロセンサ」を開発。従来は熟練者が目や耳で確認していたが、熟練技術者不足や自動化ニーズに対応。製造現場の省力化と生産性向上に貢献する。対象物の接近で生じる背圧など空圧技術を応用し、非接触で繰り返し精度プラスマイナス1マイクロメートルを実現した。また産業用インターフェイス規格「IOーLink」で連携し、システム全体の自動化を可能とした。導入現場では段取り時間60%、研削加工時間40%削減といった成果を上げており、主要研削盤メーカーに採用されるなど、日本の製造技術の価値を高める革新技術として注目されている。4月には数値表示画面を搭載した新製品を発売。最大繰り返し精度プラスマイナス0・2マイクロメートル、分解能0・1マイクロメートルに加え、データ出力でトレーサビリティーに貢献する。
