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ライフサイエンス
空調機器/再生医療で存在感
ライフサイエンス分野は新型コロナウイルス感染症による影響が落ち着き、研究開発に向けて活動が再開している。ダイダンはこれまで培ってきた温湿度や気流の制御技術と経験を生かし、医療の大きな潮流の一つである再生医療の現場でも存在感を高めている。先端的な医療現場の構築で先行するダイダンはグループを通して細胞製造受託事業に本格参入を果たした。
国内市場4・9%増 427億円
富士経済が6月に発表した2022年のフローサイトメーターや細胞計数分析装置、セルイメージングシステムなどのライフサイエンス機器・検査機器の国内市場は、前年比4・9%増の427億円となった。新型コロナの影響が落ち着き、研究活動が再開したことで機器のリプレイス需要の高まりや、再生医療の基礎研究への投資拡大がみられた。30年は547億円と予想する。
また細胞・試薬・セルカルチャーウエアは、新型コロナによる研究開発が停滞していたが、22年は再生医療やバイオ医薬品関連の開発が進展したことで293億円となった。ヒト細胞やiPS細胞(人工多機能生幹細胞)が、創薬スクリーニング目的で使用機会が増えているほか、細胞培養液体培地は医薬品のみならず培養肉の研究開発・製造の需要を獲得。30年は337億円規模になると期待する。
環境制御技術で細胞製造受託
こうした中、バイオベンチャーを支援するダイダンは、子会社のセラボヘルスケアサービス(セラボHS)が川崎市川崎区にある細胞培養加工施設(CPF)「セラボ殿町」において「再生医療等製品製造業許可」を厚生労働省から取得したと、5月24日に発表した。独自の気流制御技術を用いた開発製品「エアバリアブース」を組み込んだ新技術「エアバリアCPF」を採用し、同施設で再生医療向け製品の製造を予定している。
ダイダンは九州大学発のスピンオフベンチャー企業であるガイアバイオメディシン(GAIA)に対して、20年に出資。環境制御技術を生かして再生医療分野に関する技術開発や新規サービスの立ち上げに取り組んできた。
GAIAが臨床試験を進めているがん免疫細胞療法の開発製品「GAIA―102」の治験製品製造の独占権と、市販製造の通常実施権を獲得し、セラボHSが受託製造を開始する。これを機にダイダングループは細胞製造受託事業に本格参入する。
ダイダンのイノベーション本部再生医療推進部長でセラボHS代表の吉田一也フェローは「再生医療・細胞医療の国内市場は25年に約3800億円、30年には約8500億円規模に達する」と見ており、「研究開発開始から2年から3年が経ち、これから本格的に実用化に向けて稼働する」と背景を述べる。
細胞製造では人的リソースなどの課題がある。セラボHSはこうした課題に対して、開発フェーズやプロセスに合わせて、運用者のニーズに適した製造環境を提供する。さらに短納期で、バイオベンチャーを支えていく。
ユニット設置、異物混入防ぐ
設備面ではエアバリアブースのほか、再生医療向け製品などの調製に必要な機能をコンパクトにユニット化したパッケージ型細胞培養加ユニット「オールインワンCPユニット」などをそろえる。
特にエアバリアブースは気流の力で局所のクリーン化を実現。開閉扉がなくてもクリーン環境を維持する特徴を持つ。これにより開閉時の気流の乱れが無くなり、ドアノブへの接触もない。作業空間の天井にファンフィルターユニットを設置。HEPAフィルターを介した清浄な空気により、ブース内部から外部へ向かう気流を形成することでブース外部から異物の混入を防ぐ。
セラボ殿町ではエアバリアブースの導入により、清浄度管理区域の作業スペースは、扉や間仕切りのある従来のCPFと比べて当社比で約30%減となり、作業性とコスト削減を両立。再生医療分野の研究開発・実用化を促進する。施工性が高く短工期での構築に加え、ユーザーの利便性を高めている。
ダイダングループは再生医療等製品の製造や細胞培養向け製品の需要拡大を見込み、セラボ殿町の施設でのデータ取得と改善などにより、再生医療の支援と産業化につなげていく。