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ライフサイエンス
化学メーカー/バイオ医薬品向け積極化
化学メーカーはライフサイエンスの中でも、バイオ医薬品などの医薬関連の事業展開が活発になっている。旭化成や三菱ケミカルグループなどが、バイオ医薬品関連の製品やサービスの展開に力を入れている。特にバイオ医薬品は抗がん剤などで市場拡大が見込まれている領域であり、化学各社は連携なども生かしながら、新たな取り組みを積極化する構えだ。
医薬関連事業活発
旭化成は水処理用中空糸濾過膜「マイクローザ」の提案に力を入れている。マイクローザはストロー状の中空糸の表面の孔を利用して液体を濾過する製品で、水処理膜などとして幅広い産業分野を対象に供給している。
その中で主要な分野の一つが製薬の製造工程向けだ。例えば、バイオ医薬品の製造工程で言えば、一定期間培養し、最後に生成物を取り出すバッチ培養が主流の中で、欧米が先行する生産効率や設備の小型化につながる連続培養が活発化してきているという。
それだけに培養の工程で目的物を高い精度で収集できるマイクローザに需要があるとみている。独自の製膜技術により膜の細孔構造を制御し、高い透過率などを実現する強みを一層訴求していく考えだ。
三菱ケミカルグループも、傘下の三菱ケミカルが抗体医薬品の製造プロセス向けの新たな技術を開発。粗精製の工程で同社が開発した抗体精製剤を使い、不純物を吸着させて高純度の抗体を抽出する製造プロセスを提案していく考えだ。イオン交換樹脂の工業用水から不純物を吸着する技術などを応用している。
またJSRは開発・製造受託事業(CDMO)を含むライフサイエンス部門は成長戦略の柱の一つと捉えており、生産体制を強化している。
今後、米子会社であるKBIバイオファーマ(ノースカロライナ州)の新工場のフル稼働を見据え、バイオ医薬品のCDMO事業を加速する考えだ。新工場は容量2000リットルの動物細胞培養タンク6基と同社最大規模の設備を有しているだけに成長のカギを握っている。
研究開発体制 次の一手
化学メーカー各社が知見などを生かしながらさまざまな手を打っている一方、研究開発体制の強化に向けて連携に取り組む動きもある。
KHネオケムは細胞の分化や代謝など生体内で重要な役割を持つ糖鎖の製造技術を持つベンチャーへ出資した。糖鎖工学研究所(京都市下京区)の第三者割当増資を引き受けた。
糖鎖は多様な生命現象に関与する生体物質で、新薬の開発など生命科学分野の研究が盛んに行われている。特に糖鎖工学研究所は糖鎖の大量製造技術と、糖鎖をたんぱく質やペプチドなどのバイオ医薬品中に組み込む糖鎖修飾技術を持ち、製薬企業などへ受託研究や糖鎖の販売などの創薬支援事業を展開している。
KHネオケムと糖鎖工学研究所は共同研究を行っており、出資を通じて関係を強化する狙い。KHネオケムはヘルスケア分野などで新事業創出につなげる考えだ。さまざまな種類の糖鎖において量産化と安定供給に向けた活動を加速させ、生体内での発現に個体差がある糖鎖を量産化することができれば、バイオ医薬品など一人ひとりに合った個別化医療の構築が促進されると期待する。
またADEKAと日本農薬は、動物用医薬品の創出につながる新しい化合物群を発見し、特許を出願した。抗寄生虫剤としての有効性が期待できるという。世界知的所有権機関(WIPO)から特許出願4報が国際公開された。
日本農薬はADEKAが3月末時点で51%の株式を保有する子会社。両社は動物用医薬品などライフサイエンス分野の新製品開発に向けた共同研究に取り組む。
動物用の抗寄生虫薬はグローバルで1兆円以上の市場規模があり、今後も拡大していくと予想される。特許公開を機に同市場での製品開発に向けた取り組みを加速させる。