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埼玉県川口市
埼玉県川口市が市制施行90周年を迎えた。人口は60万人を超え、全国62市ある中核市の中で千葉県船橋市に次いで2番目に多い。埼玉県でも県庁所在地さいたま市に次ぐ規模。荒川を挟んで東京都に隣接する地理的な好条件もあり、古くから鋳物や機械の製造が盛んな街でもある。現在では高層マンションも増え、民間の住みやすい街ランキング調査では、連続1位を含め高順位を獲得している。2024年4月には川口商工会議所と鳩ケ谷商工会の統合も予定されており、産業振興施策のさらなる充実も期待されている。
金融機関一押し 個性派・実力派企業7社 -1-
埼玉県川口市には幅広い産業が集積する。大消費地である東京都に隣接し、交通網が発達していることに加え、鋳物や機械加工といった古くからの製造業が根ざす地域でもある。近年は「住みやすい街」としても注目を集め、サービス業などを加えたより多種多様な産業が集まり、地元経済を支えている。地域活性化のため中堅・中小企業支援を続ける7金融機関に、高い技術力や特徴あるビジネスモデルを有する「一押し企業」を紹介してもらった。各社の技術や製品、サービスを取り上げるとともに、金融機関からの一押しポイントを聞いた。
ASJ/医療機関向けシステム拡販
ASJは1984年に丸山治昭会長が「アドミラルシステム」として設立。2000年にASJに改称して03年に上場した。自社サーバーセンターを持ち中堅・中小企業向けクラウドサービスを展開する。商工会議所向け検定試験管理システムではトップシェアを占める。子会社のアイテックス(東京都千代田区)は大手や中堅を対象に人事労務・給与・就業システムを提供。バス会社の点呼支援システムも手がける。
青木邦哲社長は「日本のために働くというのが当社の考え方。日本の企業、日本で働くすべての人、海外で働く日本人のために課題を発見して解決へと導く。さらなる発展と働きやすい環境づくりを支援していきたい」と強調する。
グループで力を入れているのが24年4月施行の「医師の働き方改革」。「労働時間の管理や短縮が義務化されることから、医療機関向けのシステムの拡販を進める」(青木社長)と今後の展開に期待する。
埼玉りそな銀行 川口支店 石井 良輔 支店長
IT分野において国内企業の発展をサポートする企業。地域金融機関として同社と共に成長していきたい。
児玉コンクリート工業/学校・オフィス向け什器事業拡大
児玉コンクリート工業(東京都豊島区、児玉桜社長)は、建物を建設する際に地盤に打ち込んで構造物を支えるコンクリートパイルの製造や施工・管理を手がける。鋼管杭や現場造成杭の施工も行っている。
1959年に川口市で創業。今も川口工場でパイルを製造する。「関東が事業エリアで埼玉県内の仕事が半分以上。県や市など自治体関連の物件が多い」と児玉社長は話す。
2018年からは新規事業として学校やオフィスの家具など什器設備の販売・設置に乗り出した。学校のグラウンドの整備なども手がけ「昨年度は売上高10億円を超えるまでに成長した」という。
「材料価格や人件費の高騰などで利益確保が難しい状況だが、今まで以上に利益重視で仕事を進め、人材育成にも力を入れる。強みの団結力をさらに高めて『チーム児玉』を推し進めたい」と強調する。26年には創業時に本社があった川口市本町の再開発ビルに本社を移転する計画だ。
武蔵野銀行 川口支店 渡部 嘉夫 支店長
人と暮らしと自然が調和した、未来の都市環境を作る杭基礎業者。同社の発展を地元行として支えていきたい。
大熊製作所/グループ内で板金・塗装一貫対応
大熊製作所(埼玉県川口市、大熊高志社長)は、トラックや建設機械向けの板金加工を手がける。塗装専業の子会社を有し、グループ内で板金加工から塗装まで一貫生産できるのが強みだ。海外ではタイとインドネシアに工場を持ち、国内外で最適な生産体制を構築している。
大熊製作所グループが得意とするのは、カチオン電着塗装だ。アクリル、エポキシ樹脂配合の塗料を用いることで従来比2倍の耐候性、防食性を持つという。このため上塗り工程が不要となり、価格競争力が高い。国内商用車メーカーへの採用に加え、高い品質が求められる欧米系メーカーの認定を取得するなど技術力に定評がある。
現在は売上高の大半をトラック、建機向けが占める。「今後は他業種からも受注を獲得し、特定の企業や業種に依存しない経営体質を構築したい」と大熊社長。また、電気自動車(EV)化による軽量化ニーズの高まりに対応し、非鉄金属塗装への進出も検討する。
商工中金 さいたま支店 五十嵐 英樹 支店長
熟練の技術力、独創的な提案、板金加工から塗装までの一貫生産体制を実現するモノづくりのプロ集団。今後も伴走支援していく。
ケイワート・サイエンス/もみ殻由来高純度ケイ素 材料化
ケイワート・サイエンス(埼玉県川口市、前ノ園晃社長)は2021年に前ノ園社長が創業した。イネのもみ殻からケイ素を抽出して肥料や工業材料を生産するための研究開発に取り組んでいる。「もみ殻から取り出した自然由来のケイ素には、無限の用途が期待できる」と前ノ園社長は強調する。今年4月には植物用のミネラルケイ酸水を発売した。バラやイチゴ、メロンなどの栽培に使われ、病気に強く収量も増えて農家の評価も高い。
また化学メーカーで製造技術を手がけてきた経験を生かし、もみ殻の工業材料化も進める。高純度のケイ素材料は鉱山から原料を採取して高温で何度も精製して純度を高めていた。「もみ殻の場合はイネが精度よくケイ酸だけを抽出するので、簡単に純度99・98%のケイ酸をつくれる。未利用資源を使うため環境に優しく、エネルギーコストも大幅に低減できる」として今後、大手企業と連携したケイ素の量産化を検討していく。
日本政策金融公庫 浦和支店 飯沢 貴志 支店長
SDGsに資する原料生産に力を注ぐ事業者。今後も同社の発展と成長を支援していきたい。