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埼玉県川口市
埼玉県川口市が市制施行90周年を迎えた。人口は60万人を超え、全国62市ある中核市の中で千葉県船橋市に次いで2番目に多い。埼玉県でも県庁所在地さいたま市に次ぐ規模。荒川を挟んで東京都に隣接する地理的な好条件もあり、古くから鋳物や機械の製造が盛んな街でもある。現在では高層マンションも増え、民間の住みやすい街ランキング調査では、連続1位を含め高順位を獲得している。2024年4月には川口商工会議所と鳩ケ谷商工会の統合も予定されており、産業振興施策のさらなる充実も期待されている。
地域課題解決 中小の成長 後押し
市制施行90周年を迎えた川口市。2023年度も中小企業振興に特化した独自施策を推進する。奥ノ木信夫市長は「市内経済のさらなる活性化が図れるようスピード感を持って市政運営に取り組んで行く」と強調する。川口商工会議所の細野博隆会頭は「エネルギーなどの原材料価格の高騰や人手不足はまだ解消されていない」として、さまざま課題への支援強化を図る考えを示す。懸案となっていた川口商工会議所と鳩ケ谷商工会との統合も24年4月に予定されており、奥ノ木市長、細野会頭ともに統合によるさらなる発展に期待を寄せている。
経済活性化へスピード感持ち市政運営
―市制施行90周年を迎えましたが、どんな歴史の変遷がありましたか。
「本市は1933年4月1日に1町3村が合併して発足した。県内では川越市に次いで2番目、熊谷市と同じ日に市制施行となった。当時から鋳物や機械、木型などが基幹産業としてまちの発展を支えてきたが、現在は工業だけでなく幅広い産業が活躍している」
―23年度予算で市内中小企業への就労促進に向けて、独自の家賃補助と奨学金返還支援制度を新設しましたが、狙いは。
「中小企業が集積している本市では、就労促進に向けてこれまでにも独自に国の技能検定などの試験合格者に対する受検料の全額助成制度の整備や、市内中小企業向けの福利厚生・退職金共済制度の拡充を行い、今年度は家賃と奨学金返還の支援制度を新設した。さらに、若い人が市内で働くきっかけとなるよう、市内企業の仕事内容や福利厚生などを紹介するパンフレットを昨年よりも充実させ、人材確保をバックアップする」
―市内で製造された製品の魅力を市内外に発信する「川口市市産品フェア」は、今年はどのようなフェアになりますか。
「昨年まではSKIPシティで開催していたが、新たな施設の建設工事が始まることにより、今年からオートレース場に会場を移す。過去最多の企業が出展予定のため、今まで以上に多くの人に来場してもらえる魅力的なフェアにしていきたい」
―「中距離電車ホーム増設等調査事業」も23年度の新規事業ですが、どう進めますか。
「中距離電車の川口駅停車実現に向けた計画案策定や事業費積算などを、現在JR東日本に委託しており、今年度末には調査結果がまとまる予定。京浜東北線に加え、中距離電車停車のためのホーム増設を要望している。実現には少なくとも10年前後かかると思われるが、川口駅西口では総合文化センター・リリアの大規模改修に合わせ、美術館を一体的に整備する計画を進めているため、中核市にふさわしい駅となるようまちづくりを進めていく」
―川口商工会議所と鳩ケ谷商工会が24年4月の統合に向けて統合契約書に調印しましたが、市長の思いは。
「本市は11年に鳩ケ谷市と合併して現在の市域となったが、市内経済を担う川口商工会議所と鳩ケ谷商工会の統合はなかなか進まなかった。しかし、鳩ケ谷地区は本市の中心に位置することから、商工関係者の利便性向上のためにも双方の統合は急務であった。それぞれの伝統や団結力を大切にしながら、本市のまちづくりや産業振興に大きく寄与いただけるものと期待している。本市も連携を一層深め、市内経済の更なる活性化のためスピード感を持って市政運営に取り組んでいきたい」
新たな情報発信基盤で街の魅力を発信
―川口市内企業の景況感について、どう見ていますか。
「新型コロナウイルス感染が深刻だった時期と比べると、感染症法上の位置づけも5類へ移行し、新しく川口駅東口にできた樹モールプラザなど市内商店街の賑わいも戻ってきている。ただ、エネルギーなどの原材料価格の高騰や人手不足はまだ解消されていない。商工会議所が4月末から5月上旬に実施したリアルタイム景況調査では、売上高は足元の需要増で上昇するものの、先行きは物価上昇による消費への懸念で下落の見込みだ。採算も仕入れ価格が改善せず厳しい状況が続いており、先行きはさらに悪化が見込まれるという結果が出た」
―そうした状況の中、今年度の新たな取り組みは。
「地域に支持されている飲食店を表彰する『川口i―mise(いい店)大賞』を昨年実施したが、受賞した店を回り現状を調査したい。今年度の川口i―mise大賞は飲食以外の小売り・サービスも対象に、応援したいお店を投票してもらい11月に授賞式を開く予定にしている。ゼロゼロ(実質無利子・無担保)融資の返済開始もピークを迎えることから、地域金融機関から生の声を聞く機会を設け、連携していく体制も整えた。小規模事業者のデジタル化や事業再構築、人手不足などの課題に対しても支援強化を図る」
―県議や市議との意見交換会も計画されていますが。
「統一地方選挙が終わって、改めて商工会議所の取り組みに対して理解を求めたい。埼玉県議会では川口市出身の立石泰広議長が選任されたほか、県の産業労働部も川口出身の目良聡部長が就任した。大野元裕知事も川口市出身。今まで以上に県との連携を推進したい」
―鳩ケ谷商工会との統合については。
「6月22日に奥ノ木信夫市長立ち会いのもと、川口市役所で組織統合契約書調印式を実施した。24年4月1日付で統合する計画。鳩ケ谷商工会の会員が川口商工会議所と統合してよかったと思える形にしたい。統合後は川口市全域の活動が軌道に乗るように商工会議所としての機能を整え、各種課題に果敢に取り組みたい。統合によるスケールメリットを生かし、事業者間の結び付きを強め経済活動の基盤を確立していく」
―これから取り組む新規施策は。
「地域情報サイト『トリコカワグチ』と連携し、情報発信プラットフォームを立ち上げて川口市の幅広い情報を提供していく。新たに転居してきた新しい住民に街の魅力を発信していきたい。また価格転嫁も地域事業者にとって大きな課題だ。川口市や業界団体、金融機関と連携しオール川口で適正取引を支援していく」