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第35回 中小企業優秀新技術・新製品賞
りそな中小企業振興財団と日刊工業新聞社は4月13日、東京・大手町の経団連会館で「第35回中小企業優秀新技術・新製品賞」(経済産業省中小企業庁、中小企業基盤整備機構後援)の贈賞式を開いた。297件の応募があり、厳正な審査の結果、38件が受賞した。そこで受賞企業4社の代表に、受賞製品の特徴や今後の事業展開、さらには経営理念などを語ってもらった。(敬称略)
受賞企業の紹介
中小企業優秀新技術・新製品賞は中小企業の技術を振興し、わが国産業の発展に寄与することを目的に、りそな中小企業振興財団と日刊工業新聞社が制定した表彰制度。1988年にスタートし、今回が35回目となる。厳正な審査の結果、一般部門は中小企業庁長官賞1件、優秀賞10件、優良賞10件、奨励賞10件の合計31件、ソフトウエア部門は中小企業基盤整備機構理事長賞1件、優秀賞2件、優良賞2件、奨励賞2件の合計7件が受賞の栄誉に輝いた。
一般部門
中小企業庁長官賞
アイエルテクノロジー/半導体ワイヤボンドの非破壊検査装置
アイエルテクノロジーの「レーザーボンドテスター」は、半導体製造後工程の半導体チップとリードフレーム間を配線するワイヤボンディングの接合面積を、加熱点の温度応答から、非破壊・非接触で瞬時に測定できる。
電気伝導率と熱伝導率の強相関性を基本原理に、周期加熱レーザーと放射赤外線から得られた温度応答解析によって、接合面積を測定する。これにより、通電試験と同等の信頼性が期待できる。従来の破壊試験に比べて無駄や工数の削減、廃棄物の低減に配慮した。
優秀賞
木幡計器製作所/後付けIoTセンサユニット「Salta」
木幡計器製作所は機械式圧力計などに後付けし、指針の数値を自動計測する「Salta(サルタ)」を開発した。目視点検業務の負担軽減、遠隔監視対応に寄与する。付属ソフトウエアを用い、タブレット端末などで数値を確認できる。遠隔監視には中継ルーター、ゲートウエー機器を使用し、数百㍍離れた場所での監視が可能。読み取り精度はプラスマイナス1・6%以内。低消費電力設計により1分間隔のデータ送信で駆動用のコイン電池は数年利用できる。PLC(プログラマブルコントローラー)へのデータ連携も可能。
最上インクス/配管後付け伝熱フィン「OPFF」
最上インクスは後付け可能な配管巻き付け伝熱フィン「OPFF」を開発した。既設の配管に後から巻き付けて配管の表面積を拡大し、熱交換性能を向上させる。42種の配管径向けに、88種の商品をラインアップ。配管内の流体温度を下げたい、バルブの着霜を防止したい、といった熱課題を解決できる。
同社の開発設備で薄板金属を折り曲げて製作するため、初期投資なしで特注寸法(ピッチ、高さ、幅、板厚、材質)加工や熱流体解析による試算にも応える。
先端フォトニクス/4K対応医療用HDMIアイソレータ
先端フォトニクスは主に短距離半導体レーザー通信用モジュールの開発・製造を手がける。高精細映像の普及やデータの大容量・高速化へのニーズの高まりを受け、製品用途は医療装置、産業用オートメーション機器、業務用カメラ、半導体テスター、データセンターなど多岐にわたる。
今回受賞した製品は短距離半導体レーザー技術を絶縁用電子部品に応用したもので、5キロボルトの絶縁能力を維持しながら、毎秒10ギガビットの通信を実現。HDMI2・0伝送にも対応した。
テクノランドコーポレーション/粒子線ガン治療スキャニング装置用ポジションモニタ
テクノランドコーポレーションは粒子線がん治療装置に搭載し、粒子線が通過する位置を計測するポジションモニターを開発した。粒子線をがんの形状に合わせ、なぞるように照射するスキャニング方式が可能で、照射精度は0・2ミリメートル。正常な細胞を極力傷つけずに治療できる。二つの電極で挟んだワイヤがセンサーの役割を担うが、ワイヤを均一に張ることで照射精度と耐久性向上を実現した。同モニターを搭載した粒子線がん治療装置は、国内外30以上の施設に納入されている。
東北電子産業/光検出による熱&光劣化評価装置
東北電子産業の「ケミルミネッセンスアナライザー(CLA)」は樹脂やゴムなどが酸化時に発する微かな光を検出し、初期段階の酸化劣化を突き止める。これまで熱による劣化の評価装置として研究所や公設試験所などに500台以上の納入実績を持つ。「CLSーLIS」はこれに光照射機構を加え、熱と光の両方の外的ストレスによる有機物の劣化試験を可能にした。光照射とCLAによる計測を交互に行い、紫外線(UV)など光による高分子材料の劣化を数日から数時間という短期間で特定できる。
トリーエンジニアリング/エアーノズル「Hayate」
トリーエンジニアリングの広幅エアノズル「Hayate(ハヤテ)TypeS」は飲料業界の容器洗浄後やラベル貼り付け前工程のほか、製薬・医療機器、半導体関連での水滴や異物を除去する。
独自の内部構造と吐出形状で薄板状のエアを吐出、消費流量当たりの風速は極限まで強まり打力を高めた。エア形状の維持距離は持続性が長く、消費量は従来品比約5分の1まで大幅削減。エア供給のコンプレッサー稼働時間短縮や小型化が可能で、ランニングコスト抑制につながる。
ホリゾン/中綴じ製本システム「iCE STITCHLINER Mark V」
ホリゾンは製品カタログやパンフレットなどの多品種少量生産に最適な中綴じ製本システム「iCE STITCHLINER Mark V」を提供している。同製品はロール紙の状態から中綴じ冊子に一気通貫で製本するシステム。集積部と重ね部に独自の機構を採用することで、高生産性と高品質をかなえた。製本ワークフローシステム「iCE LiNK」との連携ができ、自動化、省力化ニーズに応える。同社は高度に自動化された製本機器で、世界市場において高いシェアを持つ。
ユニソク/液体ヘリウムフリー極低温走査プローブ顕微鏡
ユニソクが開発した「液体ヘリウムフリー極低温走査プローブ顕微鏡」は、希少資源である液体ヘリウムを使用せずに極低温高分解能測定を可能にした。除振や冷却の機構開発により、顕微鏡への冷凍機の振動を抑え、併せて効率的な顕微鏡の冷却に成功した。
これにより液体ヘリウムを用いた従来時と同等の極低温(マイナス268・15度C)を達成し、測定時間の飛躍的延長など操作性も改善した。今後はさらなる低温の実現、振動ノイズに敏感な他の計測手法への応用を目指す。
優良賞
日邦バルブ/耐震型回転サドル付分水栓「RX」
日邦バルブの「RX」は、サドル上部の止水機構部が左右に回転することで、レベル2クラスの地震動から給水管を守る。回転機構部はネジ構造を採用し、シンプルかつ確実に動作する。従来、給水分岐方向は固定されているが、同製品は回転により耐震性を飛躍的に高めた。サドル付き分水栓を同製品に交換するだけで、給水分岐部の耐震性を大幅に向上できる。また、左右90度以上回転可能なため、曲げ配管が必要な場合、角度を付けて配管できるなどのメリットもある。
三明機工/ロボット操作演習機「デジタルトレーナー」
三明機工の「デジタルトレーナー」は将来のロボット人材を輩出するために開発したシミュレーター。実機ロボットがなくても実際のティーチングペンダントで(TP)モニター上のロボットを操作することでプログラム学習が可能。一般的なオフラインティーチングと異なり物理演算を備え、デジタル環境下で学習できる。また、ラダー画面を表示してPLCの実技演習も可能で、TPや周辺機器操作用のボタン表示ができる。さらに、FAシミュレーターで実機製作システムがリアルに構築できる。
竹村製作所/不凍水栓柱「FICHE」
竹村製作所の不凍水栓柱「FICHE(フィーチェ)」は水道が凍結する温度以下になると、サーモバルブが作動し空気導入口が開き、水を自動で排出して凍結を防止する。サーモバルブには温度によって膨張・収縮するワックスを内蔵し、この仕組みにより電源を使わずに空気導入口を自動で開閉する。FICHEは操作ハンドルが一つで操作性が良く、通常の水の出し止め操作だけで水抜き・止水・流量調整ができる。手動で水抜き操作を行う必要がなく、電気も使わず、必要な時にだけ水が抜けるので経済的で環境に優しい。
牧野フライス精機/高精密CNC工具研削盤「AGE30FX」
牧野フライス精機の「AGE30FX」はドリルやエンドミルなどの切削工具を製造する工具研削盤。砥石交換装置と加工対象物(ワーク)交換装置を内蔵し、長時間の無人連続加工に対応する。加工した切削工具を機内カメラで自動測定し、測定値からプログラムに自動で補正をかけることが可能なマイクロビジョンシステム「monocam2」を搭載可能。ドリルのウェブ厚や極小径オイルホールの位相検出、ボールエンドミルの先端R精度など、さまざまな箇所の測定に対応している。
横山基礎工事/一括架設仮橋仮桟橋工法「L桟橋」
横山基礎工事は橋脚間の長い、長支間を求められる河川横断などの施工に適した工法として、20メートル支間一括架設方式の仮橋仮桟橋工法「L桟橋」を開発した。汎用性を考慮した幅員8メートル、支間長20メートルを上限とした桟橋構造。仮桟橋上に積載可能な200トン吊クローラークレーンで先行架設した一支間分の上部工パネルを導材に使い、下部工である支持杭を打ち込み固定、迅速確実に架橋する。開発工法により、天候や地形などの自然由来の障害による施工の長期化や作業員の安全確保などの課題を解決した。
奨励賞
コフロック/温度補正付液体用渦流量計
コフロックが開発した「温度補正付液体用渦流量計FML-300 SERIES」は、流体温度が変化すると計測精度が悪くなるという従来の渦流量計の課題を改善した。温度センサーを搭載し、計測した流体温度情報から流量補正することで、高・低温域でも正確に流体計測ができる。
洗浄効率を上げるため、薬液や洗浄液の液温を高くする傾向にある半導体洗浄装置などでの活用が期待される。2022年に発売し、半導体業界を中心に順調に販売を伸ばしている。
ティーケーエンジニアリング/一体造形誘導加熱コイル「AMコイル」
ティーケーエンジニアリングの誘導加熱コイルは、3Dプリンターによる一体造形とコンピューター利用解析(CAE)を活用して製作する。従来のロウ付けで部品を接合する製法と比べ、製作期間は3分の1の9日に短縮。長寿命化も実現しており、従来の10倍となる約70万回の加熱に耐える性能だ。従来製法の競合と比べ、価格は2割安く曲線やスリット形状を取り入れるなど設計の自由度も高い。材料となる銅の加工を容易にするため、銅のパウダー配合を工夫し、パラメーターを開発した。
ソフトウェア部門
奨励賞
高山化成/動画マニュアル作成ツール「3T’s」
高山化成は社内外国人従業員向けの教育・技能実習ツールとして動画マニュアルを作成。このノウハウを4ステップで簡単に動画マニュアルを作成できる「3T’s(スリーティーズ)」として発売した。動画編集から公開までツール内で完結し、テキストや音声を一括で100カ国語以上の言語に翻訳できる。従業員同士の意思疎通が図れ、生産性向上につながる。スマートフォンなどで撮影した動画も簡単にアップロードでき、テロップやテキストの挿入も容易。デバイスがあれば、どこでもすぐに視聴できる。
第35回「中小企業優秀新技術・新製品賞」受賞技術・製品一覧