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第41回優秀経営者顕彰
日刊工業新聞社が中堅・中小企業の優れた経営者を表彰する「第41回優秀経営者顕彰」は優れた経営手腕により企業を成長させ、日本経済の発展と地域社会に大きく貢献したモノづくり関連の中堅・中小企業経営者を顕彰している。毎年実施しており、今回で41回目を迎える。
経済の発展と地域社会に貢献した中堅・中小企業経営者を顕彰
最優秀経営者賞
【日東光器 代表取締役社長 山田 陽一郎氏】
1955年の創業以来、プリズム・ミラーなどの平面光学部品の専業メーカーとして、製造・品質管理・販売といった製品が顧客に届くまでの一貫したプロセスを自社で手がけてきた。世界トップレベルの精密光学部品を量産レベルで安定的に提供できることが強み。
光学部品のサイズや形状だけでなく、素材の選定や角度精度・面精度・面粗さ・分光特性など、光学性能に関わる顧客ニーズに一品ごとに対応する。
光学部品の種類も多岐にわたり、0・1ミリメートルの極小プリズムから3メートルを超える大型ミラーまで研磨・コート加工の実績がある。
自社と顧客の課題を解決することでさらなる成長を目指す。世界を舞台に活躍している中堅企業があることを周知し、次世代を担う意欲あふれる人材が集まる会社にしていくのが目標。雇用を増やし、地域経済にも貢献したいと考えている。
昨今は脱炭素化に対する社会的ニーズも大きく、環境問題に不退転の決意で取り組む。生産性を考えた工場新棟も建設する方針だ。
優秀経営者賞
【吉永機械 代表取締役会長 池永 憲明氏】
設立以来半世紀以上、建築・土木向けの建設機械の開発製造を行う。顧客の要望に合わせたオーダーメードの機械製造と標準的な機械のレンタル事業が2本柱。協力企業との強い信頼関係の下、超高層ビル建築工事用の「タワークレーン用クライミング架台」をはじめ、同社の機械の多くが日本の代表的な建築物などで利用されている。
オーダーメードの中で汎用性の高い機械はレンタルで取り扱うなど、事業間の連携があるのも強み。国内での堅実な事業展開で安定的な財務体制を構築している。今後も高い技術力によって社会貢献できる機械を生み出していく。大きな成長よりも、安定した会社経営による堅実な財務体制の維持を目標にしている。
優秀経営者賞
【MHT 代表取締役社長 井手 敏文氏】
油圧システムと油圧装置に関わる設計・製造・販売・修理が主業務。メンテナンスを主体とした営業方針を徹底して貫き、修理工場を全国展開して他社との差別化を図り、顧客の信頼を勝ち取る。製造工場を所有することで、新製品納期の順守や新規製品開発に取り組みやすく、電話1本で新規案件からメンテナンス案件まで全てに対応する。
売り上げの主要項目を占める漁船分野での油圧装置に装備する油圧配管において、1978年に「並列回路・リングメインシステムという油圧回路」で特許を取得。造船所や船主から高評価を得ている。
システム普及を通じ、カーボンニュートラル(CN)やSDGsへの貢献を加速する。
優秀経営者賞
【イマオコーポレーション 代表取締役社長 今尾 任城氏】
標準機械部品や治具・クランプ製品を生産し、同分野の海外製品も輸入販売している。扱うのは顧客の声を反映し問題を解決する製品、ほかにはない自社技術の製品。CADや解析ソフトウエアも展開している。高いITスキルを生かし、工場を高度化させ、成果を社外にも公開する。
輸入販売している海外製品は為替変動で原価が大きく上がる可能性があるため、今後は自社製品の比率を高めていく。さらに少子化が進む国内だけではなく、海外展開にさらに力を入れる。ウェブマーケティングを駆使して海外にも情報を発信し、現地の販売代理店との協力体制も強化して海外の需要を開拓する。工場ではスマートファクトリー化も進めていく。
優秀経営者賞
【深江特殊鋼 代表取締役社長 木村 雅昭氏】
自社加工も担う特殊鋼専門卸業として1959年創業。製造業の人手不足がささやかれ始めた96年、採用難に直面し、無人化設備開発に注力。業界初の鋼材自動切断ラインを構築した。その後鋼材業界は価格競争に突入も、提供価値にこだわった。自社加工設備強化や加工協力企業のネットワーク化、同業他社との共創関係を構築し付加価値向上を進めた。「戦わずして勝つ」が経営テーマだ。
現在注力しているデジタル変革(DX)の取り組みも同じ。ウェブサイト、セミナー、メルマガを通じ、協力企業と一緒に技術情報を提供。同業他社を含めた共同受注で、販売と利益拡大を同時に推進するWin―Winの関係を実現。強みをさらに進化させ、現状の人員で2倍の売上高と利益を目指す。
優秀経営者賞
【神威産業 代表取締役社長 十万 幹雄氏】
熱交換器の開発・製造を担う。技術の裏付けを持った高い品質の熱交換器を提供できることが強み。取引先からは耐久性などを評価され、厚い信頼を得ている。コスト競争の激しさもあるが、社員一人ひとりが決して妥協せず高い品質の基準を守ることが、会社が続いてきた秘訣(ひけつ)だ。バブル期以降は売り上げ目標より利益目標を重視し、利益率は年々伸びている。
創業以来培ってきた技術をバネに、熱交換器業界の草分けとの自覚を持ち、研究を加速させている。今年は産学連携による共同研究の結果が出る予定で、製品開発やブラッシュアップに生かす。今後も社員一丸となり「高い品質を守り決して妥協しない」ことをモットーに製品を社会へ送り出す。
優秀経営者賞
【ランベックスジャパン 代表取締役社長 原田 実生氏】
乾式防腐・防蟻処理設備を3台備え、九州をはじめ関東や関西に住宅用木材を卸している。乾式処理は木材内の水分量を抑えて防腐剤を内部に浸透させる技術で、経年変化による反りや曲がりを防止する。時間をかける分、寿命が長く、シロアリの被害も防ぐ丈夫な木材に仕上がる。自前で生産システムや機械を作り出せるのも強み。プレカット加工ではコンピューター利用設計・製造(CAD/CAM)と接続した生産管理システムを自社で作成した。過去には木材加工に使う機械を自分たちで製作したこともある。
木材の加工工程の自動化にも積極的に取り組む。5面加工機を導入し、より複雑な加工ができるようになった。鉄骨を使った構造物など、新分野にも挑戦していく。
優秀創業者賞
【木田精工 代表取締役社長 木田 潔氏】
自動車や半導体の業界を中心に、表面処理設備と付帯設備で累計1350台の納入実績がある。自社で設備を保有し表面処理加工を手がけるほか、企画や設計の段階で設備仕様や工程条件を評価できる環境があり、顧客ニーズに対応した高品質な設備を提供できる。創業者として60年にわたり第一線で活動してきた。これからも「めっき業界のトップランナー」として挑戦し続ける。
近年はめっき処理技術などを利用した表面処理加工の受託業務が増えてきた。表面処理加工受託業務の売上高は全体の20―25%だが、33%までの引き上げを目指す。今後も自社の独自設備のノウハウと表面処理生産の加工技術を合わせ、社会に役立てる設備を作りたいと意気込む。
優秀創業者賞
【マグナ 会長 澤渡 要氏】
磁石の製造販売を担う。顧客側で想定される仕様・用途に応じてあらかじめ標準品として用意し、「マグナ」ブランドで売っていることが強みだ。中国取引に太いパイプを築いており、約2000品目の在庫品をそろえ、顧客のニーズに応えてきた。あらゆるマグネットを24時間以内で届けるなど、サービス向上に努める。
「磁石式差し込みプラグ」などのヒット商品も多い。今後も磁石のリーディングカンパニーとして独自性そして新規性のあるマグナ標準品を開発、創造していく。技術と生活環境の調和を目指し、「永久磁石のよろず相談所」として、新しい磁石の未来を提案する。
また、安定的な成長を図り、会社の規模や売上高を徐々に増やしていく年輪経営を目指していく。
優秀創業者賞
【日本機械技術 代表取締役会長 西藤 彰氏】
鉄鋼・セメント・化学のプラントなどで使われる送風機の専業メーカーで、昨年設立50周年を迎えた。顧客の使用環境に応じたオーダーメード設計を得意としており、エネルギーコストを1社当たり年間数百万から数千万円程度削減することができる。
これらの強みを生かした送風機の置き換え需要をメインターゲットとしたビジネスモデルによって、競合他社との差別化を図っている。他社製品よりも省エネ効果が高く、低騒音・低振動も備えており、設置費用を数年で回収できるランニングコストの削減効果も高く評価されている。
自社の発展だけではなく、エネルギー問題に正面から取り組み、日本の国力向上に貢献していく。
青年経営者賞
【新井精密 代表取締役 新井 利幸氏】
コンピューター数値制御(CNC)自動旋盤による金属部品の切削加工を手がけている。取引先は自動車や電機、空圧、医療など多様な業界に広がり、内製の生産管理システムやIoTで設備の稼働状況を把握することで、ロスや在庫のない効率的な生産を可能にした。現場のデータ入力にRPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)の活用や外観検査装置などを取り入れることで一層の効率化に取り組むほか、最新設備を導入して加工精度や生産能力を高め、対応できる部品形状の種類を増やしている。
自動車の電動化をはじめ外部環境は大きく変化している。生産現場の自動化やDXを推進し、会社発展に努めていく。
青年経営者賞
【ダンレックス 代表取締役社長 八木橋 拓也氏】
創業時から「人に役立つ製品」「品質の良い物作り」の精神を掲げ、工事現場などで使う保安用品の企画設計・製造販売に尽力してきた。現在は商品力の向上に力を入れる。工事現場で進む高齢化や外国人人材の活用への対応として、保安灯の軽量化や操作の簡略化にも取り組む。安全に関わる社会問題や制度と現場のニーズを読み解き、製品に反映。アフターサービスにも努力を怠らない。LED保安用品では業界シェア4割で、選ばれる製品づくりに努める。
安全をテーマに農業・漁業向けなど、未踏領域の商品開発にも挑戦し、培ってきた技術やノウハウを社会全体に広めていく。「人と環境にやさしいモノづくり」を目指して社内教育にも注力する。
女性経営者賞
【永光電機 代表取締役社長 小金澤 奈未氏】
コネクターやスイッチなどの電子制御機器部品を主に扱う専門商社でありながら、制御盤や純水製造装置などを自社工場で製造する「ものづくり商社」。電子部品不足が深刻であったコロナ禍においても顧客のニーズに応えてきた。製造分野ではシステム提案を強化し、近年は検査やロボット分野にも進出。現在はAIを生かした画像処理検査装置提案に注力している。
2020年から社員に自身の目標を一つ設定してもらうプラスワン活動を始めた。公私ともに活躍できるよう就業規則の改定やフレックス制度の導入など、働きやすい環境を整備。新たな挑戦を後押しすることで社内に変革を生み出し、営業力の強化などにつなげている。
女性経営者賞
【倉敷ボーリング機工 代表取締役社長 佐古 さや香氏】
溶射による表面処理加工と機械加工を担い、産業機械部品へ耐摩耗性・耐食性・断熱性・防錆などの機能を付与している。金属部品のリユースや長寿命化、軽量化を実現し、メンテナンスのコストや環境負荷を抑える技術を提供。強みはエンドユーザーからの声を意識的に吸い上げ、寄り添う力。溶射は吹き付ける材質で性能が変わるので、顧客からのオーダーメードにいかに対応するか、常に材料の研究開発を行っている。
軽量化・電動化の流れで、モノづくりの環境が変化している。それに伴って関わる会社も変わっており、そこにいかに入り込むかが発展のカギと考える。そのため経営者として「ネットワーク作り」「溶射の知名度向上」に努めている。
地域社会貢献者賞
【テンヨ武田 代表取締役社長 武田 信彦氏】
1872年創業の老舗しょうゆメーカー。「しょうゆメーカーからの脱皮」に取り組み、しょうゆに加え「だしつゆ」やドレッシングなども手がける。代表商品の「ビミサン」は発売から五十数年がたつ。
地域で事業を営む際、一番大事なことは継続することだと説く。雇用機会の創出のため、常に新しい商品を作る企業姿勢を大切にする。大手企業との違いは市場の規模。規模に合った市場に向けて、手にとってもらえる商品づくりを心がける。
今後もしょうゆをベースにした商品開発を基本として発酵技術にこだわり、一層の発展を目指す。しょうゆづくりを守り、世界に広まる日本食とともに、世界で好まれる調味料になっていくことが夢だ。
地域社会貢献者賞
【キャステム 代表取締役 戸田 拓夫氏】
ロストワックス精密鋳造品製造や金属粉末焼結製品を主とした製造メーカー。1980年には月間500万円くらいだった売り上げを月間7億―8億円まで伸ばし、精密鋳造業界でも上位に入るまで成長させてきた。受注は特定の大口顧客に偏らず、新規品や小ロット・多品種品が多い。海外はフィリピン、タイ、コロンビアに工場があり、来年にはベトナムにも建設する。国内工場では主に試作品を担当し、量産品になると海外で生産するなど、新しい生産体制を構築。モノづくりや営業のやり方を革命的に変えており、DXを徹底的に推し進め、ロット1個からのデジタル鋳造事業を本格展開する。通常なら数年かかるとされるDXも、1年でやり遂げようと改革を急いでいる。
産学官イノベーション創出賞
【三和油脂 代表取締役社長 山口 與左衛門氏】
東北・北海道で、こめ油を抽出から精製まで一貫生産する唯一の企業。こめ油が水より安かった時代、当時の「イタ飯」ブームにあやかり、こめ油を東洋のオリーブ油にしようと、化学溶剤を使わずオリーブ油と同じ圧搾製法に挑戦。日本で初めて成功し、2001年にハイブランド品として発売するなど、技術革新にも積極的に取り組んできた。
その後も、搾油後の米ぬかを栄養食品の原料として有効活用するなど、さまざまな事業を推進。コンビニエンスストアで人気を集めた低糖質パンの原料にも採用された。その多くは大学や研究機関などとの産学官連携の成果。現在も水田を油田にできるような油糧米の開発で農村を豊かにするべく、共同研究にいそしんでいる。
日刊工業新聞社賞
【コダマコーポレーション 代表取締役社長 小玉 博幸氏】
CAD/CAMシステム販売会社として1989年に創業。顧客に「最高のサービスを提供」するという経営理念を掲げる。顧客が経営的に大きな効果を得られるように、システムの立ち上げ・運用サポートだけでなくエンジニア育成や技術承継などの仕組みづくりの提案をしてきた。CAD/CAMシステムと5軸加工機や複合加工機を使って金属加工を行う試作工場も立ち上げた。毎月工場見学会を行っている。
2021年からは建設・設備・プラント業界へも提案活動を始めた。製造業と同じように、これらの業界にもCAD/CAMシステムで変革ができるように貢献するのが目標だ。試作ビジネスについては海外の顧客からの受注活動も始める。
日刊工業新聞社賞
【日新興業 代表取締役社長 千種 成一郎氏】
国内90%のシェアを誇る漁船用冷凍装置製造業者。地域密着で顧客ニーズにいち早く対応できることが強み。国内主要港に出張所を拠点展開し、技術者や営業部隊を配置している。日頃から顧客とコミュニケーションを取ることで真のニーズをいち早くキャッチし、“かゆいところに手が届く”提案に力を入れる。冷凍装置は鮮魚の生命線であり、航海中に故障してはならない。創業78年になるが、設備の耐久性やメンテナンス性に高い信頼を得ている。
他社と共同開発した新型超低温冷凍機「くろしお」は発売当初から地球温暖化係数(GWP)を80%以上カットした環境配慮型冷凍機。これからも真の省エネルギーとなる設備を追求していく。
日刊工業新聞社賞
【サンテック 代表取締役社長 日野 広美氏】
半導体製造工程のダイシング加工を手がける。顧客が何を求めているか確認しながら考え行動し、モノづくりを行っている。ダイシング加工では現在、さまざまな素材や大きさ、直線だけでなく円・曲線に対応しており、技術の追求が必須。人材では前工程と後工程の担当者を入れ替えるなど多能工化を進めている。
企業として環境に対してどう向き合うかが問われている。SDGsには中小企業としては早くから取り組んだ。社員に発信するだけでなく、発表の場を設け、浸透を図っている。DXにも力を入れ、AIを導入した外観検査の自動化などを進めている。DXによる効率化は人手不足解消にも貢献する。技術者とAIがコラボレーションする個性ある企業を目指している。
日刊工業新聞社賞
【森鉄工 代表取締役社長 森 孝一氏】
精密な打ち抜き加工でバリ取りなどの二次加工が不要なファインブランキングプレスの製造に強みがある。プレス工程の自動化や顧客ごとのニーズに合わせた製品開発を通じて、世界市場で大きな存在感を示す。アジアをはじめ米国や欧州などから引き合いがある。2015年には顧客ごとの細かいニーズに応える製品づくりを目指し、研究開発棟「ものづくりlab」を開設した。顧客との共同開発などに取り組んでいく。創業以来プレスメーカーとして獲得した経験値をさらに生かせるよう、デジタル化などの技術革新にも挑む。顧客の課題を解決できるような「かゆいところに手が届く」製品やサービスの提供を目指して、これからも事業の発展に努める。
日刊工業新聞社賞
【九州電化 代表取締役会長 山田 登三雄氏】
ニーズに沿ったさまざまなめっき加工技術に定評がある。高度な技術を持つ人材が同社の強みだ。卓越した技能者(現代の名工)2人をはじめ、特級2人、1級19人の技能士らが在籍。工場以外に研究開発棟を有し、研究開発にも力を入れ、仮説を基にいち早く製品提供する。行政の産業振興策などの情報収集にも秀でる。「顧客に誠実であること、価値を生み出すこと、喜んでいただくこと」がモットー。誰よりも早く、誰もしていない仕事に取り組み、「挑戦が企業を育てる」という信念を持つ。
新工場建設をはじめ、半導体、航空・宇宙、水素・燃料電池などの先端分野へ参入する計画を進める。次世代につながる新事業に取り組み、地域未来のけん引役になりたいと意気込む。