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廃棄物処理技術
廃棄物は環境への配慮や、資源として再利用することを考慮した適切な処理が求められる。早稲田大学の招聘(しょうへい)研究員である加茂徹氏に、プラスチックリサイクルの現状や課題について、解説してもらった。また今後、廃棄量が増えるとされる紙おむつの燃料化システムや太陽光パネルのリサイクルシステムについて、企業に取材した。
カーボンニュートラル社会におけるプラスチック循環利用
【執筆】早稲田大学 理工学術院総合研究所 招聘研究員/化学研究評価機構 高分子試験・評価センター 参事 加茂 徹
中東情勢の不安定化によりナフサの供給不安が高まる中、プラスチックのリサイクルが改めて注目されている。プラスチックのリサイクル技術は約半世紀前に起きた二度の石油ショックを契機に発展してきた。一方、鉄などの金属は古くから回収・再利用されてきた。では、なぜ金属リサイクルは古くから成立し、プラスチックのリサイクルは現在でも多くの課題を抱えているのだろうか。
●MR・CRの現状
鉄の原料となる鉄鉱石は非常に安定した物質であり、そこに膨大なエネルギーを投入して還元することで、金属としての鉄が製造される。一度製造された鉄は使用後にスクラップになっても、表面に多少の錆が生じている程度である。そのため新たに鉄鉱石から鉄を製造するよりも、スクラップをリサイクルした方がエネルギー的にも経済的にも圧倒的に有利である。現在、粗鋼生産の約37%がスクラップ材から生産されており(図1)、鉄は「リサイクルの優等生」と呼ばれている。
鉄は鉄鉱石から製造される過程で大量のエネルギーが投入されるため、高い化学的エネルギーレベル(自由エネルギー)の材料となる。一方、原油とプラスチックの発熱量はほぼ等しく、プラスチックの化学的エネルギーレベルは原料の原油と大きく変わらない。そのため、鉄のリサイクルは大きな省エネルギー効果をもたらすが、プラスチックではその効果は限定的である。
また廃プラスチックには多くの異物や異なる種類のプラスチックが混在しており、その分離や選別には多くのエネルギーやコストが必要となる。さらに分離が不十分で品質が低下する場合も多い。このため、国内でマテリアルリサイクル(MR)あるいはケミカルリサイクル(CR)される廃プラスチックは10%程度に留まっている。
●CO2からのプラ製造の壁
かつては、二酸化炭素(CO2)による環境負荷は現在ほど深刻な問題とは考えられていなかった。そのため廃プラスチックを発電や熱源の燃料として利用するエネルギー回収が広く行われてきた。仮に日本で排出された廃プラスチックをすべて燃焼させると、そのCO2排出量は日本全体の温室効果ガス(GHG)排出量の数%に相当する。
2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向け、化石燃料の使用量が大幅に削減される中、廃プラスチックのエネルギー回収から排出されるCO2の影響は相対的に大きくなるため、その削減も重要な課題となっている。
カーボンニュートラル社会では石油などの化石資源への依存を減らし、空気中のCO2を原料としてプラスチックを含む多くの有機材料を製造すると考えられている。しかしCO2からプラスチックを生み出す技術には、大きな壁がある。
空気中のCO2から有機物を製造する方法としては、植物などのバイオマスを利用する方法と、触媒などを用いて人工的に合成する方法がある。しかしバイオマスを利用する場合は、食料生産に必要な土地、水資源、ミネラルとの競合を避け、さらに生物多様性にも配慮しなければならない。
また人工的に合成する場合でも、CO2を還元するためには膨大なエネルギーが必要となる。植物などのバイオマスは光合成によって太陽エネルギーを蓄えたものであり、どちらの手法を用いても有機物とはいわば「太陽エネルギーの缶詰」なのである(図2)。
●循環利用の重要性
このような視点で見ると、廃プラスチックをエネルギー回収してCO2を排出し、その後大量のエネルギーを投入して再び有機物を合成するよりも、既に存在しているプラスチックを可能な限り循環利用した方が、必要となるエネルギーを大幅に削減できる。
従来、プラスチックのリサイクルは安価な化石資源由来のプラスチックとの価格競争の中で考えられてきた。しかしカーボンニュートラルを目指す持続可能な社会では、プラスチックを限りある炭素資源と捉えるだけでなく、貴重なエネルギーを蓄えた有機物として、いかに効率的に循環利用していくかが問われている。
