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富山県産業界
2024年の富山県産業界は試練にさらされている。元日に北陸地域で発生した能登半島地震は、県西部の沿岸部を中心に甚大な被害をもたらした。一部企業では操業停止を余儀なくされるなど、産業への影響も小さくない。それでも県産業界は事業成長の歩みを止めることなく、北陸の復興に一丸となって寄与する構え。本年の干支である甲辰(きのえたつ)の言われ「古い殻を破り、新たな始まりやチャンスが訪れる」に倣い、一層の飛躍を追求していく。
攻勢かける機械メーカー 独自製品の市場投入相次ぐ
工作機械や産業機械メーカーも次世代技術への対応や生産性向上に資する製品開発を加速している。
大物部品加工効率化 ギガキャスト専用機を開発
スギノマシン(富山県滑川市)は、自動車の構造部品をアルミニウム鋳造で一体成形する「ギガキャスト」向けに、穴開けやネジ立てなどの加工を施す専用機を開発し、今春に市場投入する。最大6本の主軸を持つ大型部品加工機とロボットアームを組み合わせ、大物部品の加工を効率的に行えるようにする。電気自動車(EV)では軽量化などを目的にギガキャスト部品の採用が拡大する見込みで、専用機の投入によりEV市場で攻勢をかける。
同社は23年7月に、大物の加工対象物(ワーク)を最大6軸で同時加工できる大型部品加工機「ギガフィーダ」を発売した。同機はワークを縦置きして水平方向に加工するため、電池ケースなど直線で構成する部品との親和性が高い。ただ、EVのギガキャスト部品では曲線部分も多く、斜め方向から加工したいというニーズが高まっていた。
そこでロボットアームの先端に小型の穴開け・ネジ立てマシンを組み付け、斜め方向の加工を可能にするユニットをギガフィーダの内部に設置。これにより1台で水平方向と斜め方向の一体加工が可能になる。
ギガフィーダは車載電池関連の企業から引き合いが高まっているといい、新型機の投入で完成車メーカーの深耕につなげる。足元で年20台の販売目標を掲げるが、新型機の訴求で計画の上積みに弾みを付ける。
スギノマシンにとって自動車分野は総売上高の6割を占める重要市場。EVをめぐっては車体コストの低減などを目的にギガキャスト部品の導入が広がっている。急拡大する自動車の電動化に迅速に対応し、次世代車両向けでも競争力を高める狙いだ。
CNC装置バージョンアップ 使用電力を可視化
キタムラ機械(富山県高岡市)は、自社製マシニングセンター(MC)に搭載している独自コンピューター数値制御(CNC)装置のバージョンアップを始めた。MCの性能向上に加え、使用電力量の可視化機能などを追加する。
同CNC装置「Arumatik―Mi」のバージョンアップでは、加工時間が最大10・4%短縮するなどMCの性能が上がるほか、生産管理システム「エニウエア・リモート」の機能強化や使用電力を可視化する「電力モニター」の利用が可能になる。
また、新機能ではプログラムを表示するウインドーを拡大し、一画面に表示できるプログラムの列を増やした。プログラムの確認・編集の際に効率的に作業できるようになり、入力量が多くても新たな入力画面を呼び出す手間がなくなった。プログラムと同時に確認したい座標値や工具補正量が一画面に配置されるなど、生産性向上に寄与する。
アルミ加工に特化 車需要取り込む
津根精機(富山市)は、アルミニウム形材に特化したロングストローク式自動丸鋸切断機「TK2M16GⅡ」を市場投入した。鋸刃送りを油圧シリンダーからサーボモーターに変更するなどし、生産性を従来機比22%向上。自動車向けなどで高まるアルミの加工需要を取り込む。年間20台の販売を目指す。
新機種は鋸刃送りにサーボモーターを採用し、切断後に鋸刃を所定の位置に戻す際の「早送り速度」を従来機比3倍に高めた。切断開始時に鋸刃が加工対象物(ワーク)まで移動する距離を最短にしたことで、切断時間の短縮につなげた。切断条件が同じなら切断のサイクルタイムを17%短くできる。こうした機能拡充により、トータルの生産性を約2割高めた。
自動車の電動化に伴う軽量化ニーズなどで、アルミの使用量は今後も拡大する見通し。津根精機はアルミ用切断機を約17年ぶりに全面改良し、旺盛な需要に応える。
スマホで遠隔操作
ハナガタ(富山市)はスマートフォンやタブレット端末で遠隔操作できる包装機を開発した。携帯端末で機械の作動や停止を操作できるほか、異常の認知も可能。人が機械に張り付く必要がなくなる。人手不足が顕著になる中、包装工程の省人化につながる手段として訴求する。
機械の稼働中に商品の大きさが変わっても、寸法に合わせて自動で包装する。商品のサイズはセンサーなどで検知する仕組みで、サイズ変更に伴う段取り換えに人が介在しなくて済む。