２０２６ トップランナー変圧器

この特集をクリップ

　トップランナー変圧器の新たな判断基準が２０２６年度を目標年度としてスタートする。現行の第二次判断基準であるトップランナー変圧器２０１４は世界最高レベルの水準にあるが、さらなる省エネを追求した。２４時間休むことなく働き続ける変圧器をトップランナー変圧器に更新することは電気の安定供給と、省エネを促進、二酸化炭素（ＣＯ２）排出量削減に大きな効果を発揮する。５０年のカーボンニュートラル（温室効果ガス排出量実質ゼロ）達成にも貢献する。

機器更新—電気の安定供給・省ＣＯ２

カーボンニュートラルに貢献

• 

　エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律（省エネ法）に基づくトップランナー制度は、自動車の燃費基準や、家電・ＯＡ機器など電気・ガス石油機器の省エネルギー基準を、それぞれの機器においてエネルギー消費効率が現在商品化されている製品のうち、最も優れている機器の性能以上にするという考え方だ。

　変圧器については、油入変圧器が０６年度、モールド変圧器が０７年度を目標年度にした第一次判断基準がスタート。その後、１４年度を目標年度とする第二次判断基準が設けられ、変圧器による省エネは広く普及した。そして今回、新たな省エネ基準を見直すことになり、２６年度を目標年度とした第三次判断基準が設定された。

　変圧器メーカーは２６年４月から現行のトップランナー変圧器２０１４を出荷できなくなる。トップランナー制度の対象となるのは、定格一次電圧が６００ボルト超７０００ボルト以下で、かつ、交流の電路に使用されるもので、新たな基準でも変わらない。ただし柱上変圧器は対象外。

　トップランナー制度の導入以前から、変圧器の電気エネルギー変換効率は９８％を超え、電力損失は約２％だった。第二次判断基準のトップランナー変圧器はエネルギー変換効率９９％、エネルギー損失は０１年以前のトップランナー以前品と比較して４０％低減しており、世界最高レベルの水準となっている。

　しかし稼働する膨大な変圧器の総容量を考えると、少しでも省エネ性能を高める必要がある。第三次判断基準のエネルギー消費効率は、第二次判断基準と比べ１４・２％改善。以前品と比べ５６％の省エネ効果が期待できる。

　変圧器の稼働年数は非常に長く、更新推奨２０年、期待寿命３０年で設計されている。国内での変圧器稼働台数は２１年度時点で３８６万台。このうち更新推奨時期の２０年を経過している０１年以前品は全体の５７％を占める約２２１万台と推定されている。これらを更新することで大幅な省エネ、ＣＯ２削減効果が見込まれる。

　更新推奨年数を過ぎても活躍している変圧器は少なくない。しかし老朽化に伴って突発的な事故や故障のリスクが高まる。また、変圧器メーカーではユーザーの視点から使いやすさや安全性に配慮した仕様・構造変更を行い、快適性も高めてきた。これを機にトップランナー変圧器へ更新することで、安全性や信頼性の向上も図りたい。

【ＪＥＣＡ　ＦＡＩＲ】２８日—３０日／インテックス大阪

　変圧器メーカーが出展する「ＪＥＣＡ　ＦＡＩＲ２０２５～第７３回電設工業展～」が２８日から３０日までの３日間、インテックス大阪（大阪市住之江区）で開かれる。主催は日本電設工業協会。「電設技術が拓く新たな可能性～進み続ける世界と共に～」をテーマに、電気設備に関する資機材などの新製品紹介をはじめ、施工技術や施工効率化、業界の魅力などを紹介する。

　第三次判断基準に適合した各メーカーの新製品が出そろい、それぞれの特徴や独自性を間近で見られる。使用場所や容量に適した変圧器のアドバイスを受けながら更新を検討する貴重な機会となる。

【インタビュー】日本電機工業会 省エネ法特定エネルギー消費機器変圧器普及促進委員会 委員長（日立産機システム受変電・配電システム統括本部戦略企画部長）　天兒 洋一 氏

省エネ徹底—エネ消費１４％向上

　日本電機工業会省エネ法特定エネルギー消費機器変圧器普及促進委員会の天兒（あまこ）洋一委員長（日立産機システム受変電・配電システム統括本部戦略企画部長）に第三次判断基準が開始される背景やメリットなどを聞いた。

• 

　—第三次判断基準に至る背景を教えてください。

　「第三次判断基準を検討していた時期の第６次エネルギー基本計画では“徹底した省エネ”がキーワードだった。現在は第７次になったが、徹底した省エネ活動が重要なことは変わらない。世界的にも経済成長とともにカーボンニュートラルを進めていく潮流の中で、変圧器業界としては省エネ性能を高めていくことが重要な役割と理解して、今回の改定に至った」

　—従来との変更点は。

　「省エネ性能を格段に上げることに特化し、エネルギー消費効率を１４・２％高めている。現在でもトップランナー以前品が多く稼働しているが、以前品との比較ではエネルギー消費効率は５６％向上した。業界としては２０年で更新を推奨しており、トップランナー制度が始まった頃に導入したものもそろそろ更新検討時期に入る。電気の安定供給と信頼性という観点から早めに更新を検討してほしい」

　—変圧器メーカーではどのような開発状況でしょうか。

　「２８日からインテックス大阪（大阪市住之江区）で行われる『ＪＥＣＡ　ＦＡＩＲ２０２５～第７３回電設工業展～』でＰＲし、夏から秋にかけて発売する企業が多いので、まもなく出そろう。高いレベルなので省エネ性能を１—２％上げるのに各社、苦労している。大型化・重量化は避けられないが、経済的な側面も含めて大きく変更が出ないように努力している。鉄心や巻線の材料メーカーや協力会社などの技術の結集でもある。標準キュービクルメーカーとも意見交換しながら進めている」

　—ユーザーへメッセージをお願いします。

　「省エネに貢献する姿勢を第三次判断基準で示せたと思う。エネルギーコストが上昇している中での省エネ効果は大きい。変圧器は壊れたらすぐに変えられる消耗品ではないので、更新を意識して使う計画を立ててもらいたい。電気の安全性を高め、エンドユーザーの電気料金の削減やカーボンニュートラル実現に貢献できる。いろいろな立場でメリットが出てくると思うので、ぜひ活用・検討してほしい」