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タイヤ産業 ~4月8日はタイヤの日~
4月8日はドライバーにタイヤへの関心を喚起しタイヤの正しい使用方法を啓発することで、交通安全の対策に取り組む「タイヤの日」。5月の連休(ゴールデンウイーク)を目安に、冬タイヤから夏タイヤへの交換時期を迎える。主要メーカーは安心・安全なドライブに向けて、スポーツ多目的車(SUV)や軽自動車などのタイプに向けて最適なタイヤを提案している。
新たなカーライフ提案
新車用2%増 3135万本 今年
自動車タイヤは路面の間に生じる摩擦力で走行や方向を変え、停止を行うだけでなく、内部に充填した空気により振動を吸収するなど、自動車において重要な役割を担い、揺るぎない存在感を持つ。国内のタイヤ需要は高まりをみせる中、主要メーカーは安心・安全なドライブに向けて、最適なタイヤを届けている。
日本自動車タイヤ協会(JATMA)が2024年12月に発表した「自動車タイヤ国内需要見通し」によると、25年の新車用タイヤの出荷本数は、乗用車用が前年見込み比2%増の3135万5000本を予想する。25年の市販用出荷本数(メーカー出荷)では乗用車の夏用タイヤが同横ばいの3162万9000本、冬用タイヤは同1%増の1451万9000本を見込んでいる。タイヤ選択として新車装着時をベースにするなどタイヤに強いこだわりを持つユーザーと、価格を重視するユーザーの二極化が見られる。
SUV堅調
こうした中、住友ゴム工業はSUV用タイヤの市場は引き続き、堅調に需要が伸長していくと想定する。また、24年に新商品として次世代オールシーズンタイヤ「SYNCHRO WEATHER(シンクロウェザー)」を発売。オールシーズンタイヤは通年で装着できるメリットがあり、この市場も右肩上がりに成長すると見込む。市場拡大に伴い、ユーザーに新しいライフスタイルを提案していく。
ちゃんと買い
ブリヂストンの25年販売戦略は、強みのプレミアムブランドの強化と従来実施している新車装着タイヤを基準とした「ちゃんと買い」商談を徹底し、販売量・質共に成長を目指す。特にプレミアムブランド商品「REGNO GR-XⅢ」はセダン車両向けサイズに加え、昨年末から今年にかけて軽・コンパクト車両、および輸入車領域へサイズを拡充。2月にはミニバン・コンパクトSUV向け新商品「REGNO GR-XⅢ TYPE RV」を発売。
大型タイヤ
横浜ゴムはグローバルフラッグシップタイヤブランド「ADVAN(アドバン)」や18インチ以上のタイヤの拡販に取り組む。今シーズンの国内販売では、高次元のクルージング性能を発揮するウルトラハイパフォーマンスタイヤ「ADVAN Sport V107」や、優れた静粛性を追求したプレミアムコンフォートタイヤ「同 dB V553」の拡販に注力する。
独自ポジション
TOYO TIREの25年度(1-12月)の売上高は、タイヤ増販による増加を見込んでいる。特長ある商品を継続投入し、独自のポジション堅持をめざす。1月の東京オートサロンでは、同社ならではのSUV用大口径タイヤやウルトラハイパフォーマンスタイヤと合わせ、サステナブル素材比率91%のコンセプトタイヤも出品。実際の市販用タイヤでも環境に考慮した素材の採用比率をさらに高めていく。
環境負荷低減に挑む TIRE TECHNOLOGY
タイヤメーカーは「安心」「安全」に加え車内環境や静音性の向上に向けて、常に技術開発を行い、ドライバーに高い付加価値を届けている。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向けた環境負荷低減製品の研究開発にも取り組んでいる。モビリティー社会の中、車の動力源や使われ方が変わっても、「路面に接している唯一の部品」というタイヤの存在は揺るがない。主要メーカーはその価値を最大化するため技術力を高めている。
夏・冬両立
住友ゴム工業の次世代オールシーズンタイヤ「SYNCHRO WEATHER」は、夏性能と冬性能の両立を可能にする「アクティブトレッド」技術の採用で、凍結路面の走行を実現した。タイヤ最表面のゴムの性質が、水や温度に反応して変化することで、ドライ、ウエット、雪上、氷上といったあらゆる路面で高い性能を発揮する。
薄く・軽く・円く
ブリヂストンは”薄く・軽く・円く”を追求する商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライト)」において、従来のタイヤ性能を向上させた上で、タイヤに求められる多様な性能をユーザーごと、モビリティーごとに究極のカスタマイズを実現する。環境性能の向上によりサステナビリティーへも貢献。タイヤに求められる価値の変化・多様化に対応する。
雨の日でも安全
横浜ゴムは雨の日でもドライバーの安全を確保するため、継続してウェット性能に優れたタイヤ開発を積極的に進めている。ウエット性能を高めるために重要な要素は、タイヤのパターンが影響する”排水性”と、主にコンパウンドが影響する”ウエットグリップ力”二つ。同社はそれらを両立させ、雨の日でもしっかりと路面を捉え、「より短く止まれる」タイヤを実現する。
環境素材100%
TOYO TIREが販売しているタイヤにおけるサステナブル素材の使用率は24年時点で28%である。30年に40%、50年には100%化とすることを目指して研究開発を進めている。同社仙台工場(宮城県岩沼市)はサステナブル素材活用に向け、国際持続可能性カーボン認証「ISCC PLUS認証」を24年12月に取得。サステナブル原材料の製品への展開可能性が拡大する。
インタビュー/日本自動車タイヤ協会 会長(住友ゴム工業社長) 山本 悟 氏
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日本自動車タイヤ協会 会長(住友ゴム工業社長) 山本 悟 氏
日本自動車タイヤ協会(JATMA)は2000年より4月8日を「タイヤの日」と制定した。ドライバーに自動車タイヤへの関心を喚起し、タイヤの正しい使用方法を啓発することで、交通安全の対策に取り組んでいる。山本悟JATMA会長(住友ゴム工業社長)に、空気圧点検など日常の点検や整備の大切さについて聞いた。
―JATMAの25年度の方向性について教えてください。
「世界は今、経済的に政治の影響を受けており、非常に大きな激動と変革の渦中にある。米国ではトランプ新政権の発足にともない将来に対する予見の可能性は低下し、世界の不安定化が懸念される状況にあるといえる。タイヤ産業もまた、そうした影響を大きく受けている。人々は生活や社会での営みの中、根源的な欲求の一つとして『モビリティー』を求めていると捉える。2024年の訪日外国人旅行者数はコロナ禍前の19年を上回り、過去最高を記録した」
「自動車はモビリティーの主役であり、自動車タイヤはこれを支える最重要な商品の一つ。どのような世界にあってもこの位置づけが変わることはなく、同時に自動車タイヤの供給という我々の活動の達成すべき目標が『安全』と『環境』であることも変わりはない。このような基本的な考え方の下、タイヤの日は特に『安全』に注目し、一般消費者にその重要性を訴求する機会と考えている。タイヤの日と定めた4月8日に前後して、皆さまのタイヤを点検する安全啓発活動を25年度も実施する」
―タイヤの日を迎えます。タイヤの空気圧の大切さについて。
「タイヤは自動車の重さを支え、駆動力・制動力を路面に伝えるとともに、路面からの振動を吸収し、自動車の方向を維持・転換する。この重要な役割を担うタイヤを適切に機能させる上で、空気圧を適正に保つことはとても重要なこと。我々がこれまでに行ってきたタイヤ点検では、残念ながらその3割弱において空気圧が不足している。この結果は高速道路のサービスエリア(SA)・パーキングエリア(PA)での点検状況で、一般道での空気圧不足比率はもっと高いものとなっている」
―適正な空気圧点検が求められます。
「空気圧の不足は、タイヤが偏って擦り減る偏摩耗や、サイドウォール部の屈曲変形により過度の発熱を招く。そしてバーストにいたる可能性もある。また、タイヤが摩耗してトレッド面に施された溝が浅くなるとハイドロプレーニング(タイヤの水上滑走)現象が発生しやすくなり、この状態は極めて危険だ。日常的にタイヤの空気圧や溝深さ、傷や異物刺突を意識して、月に一度は空気圧点検の実施をお願いしたい」
―タイヤに関するJATMAの環境について教えてください。
「タイヤの製造から使用、廃棄に至るまでのライフサイクル(LC)を通じて、タイヤに起因する環境負荷を極力減少させることが『環境』面からの我々の目標。耐摩耗性の向上などの技術開発に加え、二酸化炭素(CO2)などに関する『タイヤのLCCO2算定ガイドライン』や『低燃費タイヤ等ラベリング制度』の活用などを通じて、環境負荷の低減に向けたさまざまな取り組みを現在行っている。こうした取り組みの強化を図っていきたいと考えている」