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静岡県産業界
多様な製造業が集積する「モノづくり立県」静岡県の産業界には積極的に海外展開する企業が数多く存在感を誇る。中堅・中小企業は前向きで手堅い経営を続け、着実に業容を拡大している。一方で、米国の通商政策や国際政治情勢の混迷、グローバル経済の不透明感の影響が静岡県産業界にも押し寄せる。国内でも物価上昇や少子高齢化による深刻な人手不足といった課題が山積する。しかし、これまでも難局を乗り越えてきた県内企業はさらなる成長を目指している。モノづくりの地盤固めや新製品の投入など、果敢に攻める姿勢を示している。
事業拡大に向けた取り組み広がる
製造拠点の整備、新設進む/FA制御向け製造工程を集約
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稼働した掛川事業所の第1期工場
新たな製造拠点を整備し、モノづくりの基盤を強化する動きが活発だ。
SUS(静岡市駿河区)は、掛川市に工場自動化(FA)向け制御・駆動機器を生産する「掛川事業所=写真」を開設し、第1期工場を稼働した。国内3カ所目のマザー工場と位置付け、タイ工場から移管した機械加工品の製造のほか、FA向け制御・駆動機器の製造工程も集約する計画。同事業所の稼働により、2014年から進めてきた国内生産回帰の集大成とする。
海外生産に伴うリスクを低減しながら迅速で、きめ細かく製品を開発、生産、供給する体制を整える。石田琢志社長は「国内回帰を進める上で重要な工場になる」としている。
同事業所は敷地面積約5万4185平方メートルに、延べ床面積約2万6808平方メートルの工場を建設する計画。第1期工場は同約1万1543平方メートル。従業員19人でスタートし、追加の新規雇用を予定。26年2月までに生産移管、拡充を順次進める。これに伴う生産設備などに20億円の投資を見込む。
切削加工専用工場を稼働
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切削加工の専用工場を稼働し、生産性を向上させる
コーケン工業(磐田市)は、同市に切削加工の専用工場を建設し、稼働した。主力の農業機械や建設機械向けのパイプ部品の需要増を見据え、手狭になっていた既存工場から切削工程を新工場に移転して生産体制を増強する。フル稼働後には生産性が30%向上する見通し。新工場の「KOMA工場=写真」は、敷地面積約3600平方メートル、建屋が一部2階建てで、延べ床面積約2500平方メートル。人員は35人。
コーケン工業が手がけるパイプ部品は農機や建機のエンジン向けなどが中心。これまで本社工場(同市)を含む既存2工場でパイプ部品の曲げ加工や溶接などを行っていた。切削工程ではパイプ部品に溶接するための、鉄やステンレス製で10ミリ—150ミリメートル角の部品を加工している。今後は切削加工のみの受注も強化する。
開発拠点新たに/社内教育にも活用
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MCやNC旋盤などを設置し、社内教育にも活用する
ジャパン・ミヤキ(浜松市中央区)は、本社工場(同)の近隣に建設していた新拠点「テクニカルセンター」を竣工し、稼働した。多能工を育成する「加工道場」や自動化設備の開発部門の拠点となる。新拠点は平屋建てで、床面積が約760平方メートル。一部区画は製品や材料の保管倉庫に充てる。設備はマシニングセンター(MC)や数値制御(NC)旋盤、汎用旋盤、フライス盤、円筒研削盤を各1台配備した。新拠点を図面から材料、完成品までの一連の工程を学習する社内の育成事業「工程理解塾」でも利用する。
垂直搬送機部品の粉体塗装で新棟
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設備も刷新し、溶剤塗装から粉体塗装に切り替える
鈴木製機(掛川市)は、本社敷地内に垂直搬送機部品の塗装工程用の新棟を建設する。9月に竣工し、10月に稼働予定。
既存建屋に置く塗装設備が老朽化していたが、スペースの制約により更新が困難と判明。新棟で設備を刷新する。新設備導入を機に工法を溶剤塗装から粉体塗装に切り替え、作業環境の改善や品質向上を図る。
新棟は平屋建て、床面積は663平方メートル。新棟では新設備で工程の人員を従来比1人減となる3人への省人化を目指す。これまで外部委託していた大型部品の塗装も内製化できるようになり、一部製品はリードタイムを1—2日程度短縮できる見通し。