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日本力(にっぽんぶらんど)静岡産業界
100年に1度と言われる自動車産業の変革期にあって、日本の、そして静岡県産業界も影響を避けられない。米国や中国の新興電気自動車(EV)メーカーの台頭や電動化・知能化など競争環境が変化し、業界再編の動きが加速している。そうした中、2024年から静岡県内の各企業は新製品開発や海外展開、設備投資といった戦略に取り組む。25年もそれぞれの経営判断や戦略が静岡県産業界を、日本の産業界を成長軌道に乗せる。
製品開発・設備投資活発
県内を代表する主要企業の製品開発や設備投資が活発だ。
電業社機械製作所は工場排水の再生や半導体製造用の純水・超純水の生産などの水処理用(低圧)エネルギー回収装置を開発し、市場投入する。同装置の導入により、逆浸透(RO)膜装置の消費電力を最大約4割削減できる。海水淡水化(高圧)用に続く水処理装置の第2弾として展開する。電子部品、食品、化学業界などに幅広く提案し、国内を中心に5年後に年100台の販売を目指す。
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水処理用(低圧)エネルギー回収装置「DeROs―E」
新開発の「DeROs-E」は、電業社機械製作所が国内メーカーとして初めて商品化した世界最高水準の回収効率のRO膜法海水淡水化プラント向けエネルギー回収装置の技術を応用。小型・軽量化を図ったほか、ステンレスなど耐食性のある材料を用いて運用コスト削減と環境負荷低減を両立した。
RO膜を用いた水処理技術は工場排水量の削減以外にも、従来の蒸発法と比べて温室効果ガス(GHG)排出量を削減できるなど環境対応の手段として広がっている。
「eアクスル」生産にAGV
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AGVを活用して効率化した蒲原工場
ジヤトコは25年度に年10万台規模で量産を開始する電動駆動装置「eアクスル」の生産工程に無人搬送車(AGV)を利用した方式を導入する。コンベヤーで行っている作業者間の部品の搬送にAGVを使う。量産開始から3年以内にAGV搬送の体制を整える。ラインの新増設に伴う初期投資を抑えるのが狙いで、10%程度の生産コスト削減につなげる。eアクスルは30年度に年500万台の生産を目指している。
蒲原工場(静岡市清水区)の自動変速機(AT)生産ラインの一部で導入しているAGVを使った生産方式を、電動車向けのeアクスルの生産に転用する。汎用性が高く、AGVに載せる部品を変えれば他機種の生産に対応する特徴もあり、多品種生産に運用できる。蒲原工場の製造ラインはアルミニウムフレームの枠(門型)が特徴。門型の中に作業者が1人待機し、ギア、ポンプの組み付けを行っている。作業者間の移動は部品を載せたAGVで搬送する。効率化などコスト削減効果を確認できたことから、eアクスルの生産にも使えるめどが立ったと判断した。
eアクスルの生産はまず日本国内で立ち上げ、メキシコなどに展開する。国内生産拠点とする本社・富士地区(富士市)にはコンベヤーを使った2ラインを設置し、計20万台の生産能力を持つ。増設するラインからAGVを導入し、順次利用を拡大する。
レーザー事業を強化
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NKTフォトニクスのファイバーレーザー製品
浜松ホトニクスはデンマークのレーザー装置メーカーのNKTフォトニクスを買収し、レーザー事業の強化に本腰を入れる。浜松ホトニクスの技術とNKTフォトニクスの、レーザー光を増幅する独自の「フォトニック結晶ファイバー(PCF)」の技術や製品群を組み合わせ、レーザー関連事業を電子管、光半導体、システムに次ぐ4番目のセグメントに育成する。
NKTフォトはPCFの量産供給体制を整えている唯一のメーカー。PCFの技術を生かしたファイバーレーザーは、半導体の検査に使われるスーパーコンティニューム光源や高い波長安定性が特徴の単一周波数ファイバーレーザー、眼科の手術に用いる超短パルスレーザーと特徴がある。スーパーコンティニューム光源は今後需要拡大を見込む生成人工知能(AI)向けの画像処理半導体(GPU)とDRAMを積層した広帯域メモリー(HBM)を使ったデバイスの検査工程での応用が期待できる。浜松ホトのデバイスとNKTフォトの光源をモジュール化することで、量子のほか半導体の前工程や後工程といった成長市場への提案の可能性が広がる。
インドでコンサル開始
木村鋳造所(清水町)はインドで鋳物メーカー向けコンサルティング事業に乗り出す。鋳造技術者の育成で協力してきた技術訓練学校「KGTTI」と連携し、21日から鋳型に発泡スチロールを用いるフルモールド技術を中心としたコンサルティング事業を始める。
3年後には鋳物業界向けの人材派遣事業への参入も計画する。28年に売上高3億円を目指す。
コンサル事業はベンガルールに設立した全額出資子会社を通じて展開する。同事業の開始にあたり、KGTTIと各種設備などの利用契約を結んだ。インドで増えているフルモールド鋳造法を行うメーカー向けに鋳物の調査、欠陥分析などのサービスを提供する。
また3年後に計画する人材派遣事業は、鋳造技術者育成コースの修了生を活用し、鋳物メーカーに高度技術を持った人材を派遣する。修了生に活躍の場を提供することでインド鋳物産業の基盤強化に貢献する。将来は自社への採用を検討する。
省スペースなCNCフライス盤
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新型CNCフライス盤「SMV―10」
静岡鉄工所(静岡市葵区)は、自動工具交換装置(ATC)付きベッド型立コンピューター数値制御(CNC)フライス盤「SMV―10」の新機種の受注を始めた。従来機比20%省スペース化しつつ、大型加工物(ワーク)の重切削などの機械性能を維持した。
限られた工場スペースを有効活用したいという中小企業の省スペース化ニーズに応えた。機械寸法は幅2343ミリ×奥行き2556ミリ×高さ2765ミリメートル。カバー部分とオイルタンクの形状などを見直し、切削油を受けるオイルパンを小さくした。
工具収納本数は24本。中切削から重切削、仕上げ加工までに対応し、特に重切削では高効率、高品質に加工する。主軸は50番テーパー。各軸移動量はX軸1050ミリ×Y軸520ミリ×Z軸520ミリメートル。テーブル作業面寸法は1300ミリ×500ミリメートル。
自動検査システム投入
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ビジョントラックのイメージ
テクノダイナミックス(菊川市)は、カム機構で検査の対象物(ワーク)を最適な撮像姿勢に動かせるリニア搬送型自動検査システムを開発し、発売した。球体や楕円(だえん)、円筒形状のワークの全周検査工程を自動化し、不良品は1個単位で排出できる。新開発の「ビジョントラック VTシリーズ」は、ワークを載せる「キャリア」10台前後が1周3400ミリメートルの経路を走行する間に、複数の画角から数台のカメラで撮影する。
ワークを保持するプレートとキャリアがカム機構で動き、撮像姿勢を変える。球体の場合は90度ずつ2回姿勢を変えて、全周検査に必要な上下と側面を撮影できる。姿勢変更を最小限にするためワークを傷つけない。カム機構を採用したシンプルな構造で安定稼働できる上、故障が少なくメンテナンスの手間がかからない。
省スペースな本体に、画像処理システムや不良品排出用の水平多関節(スカラ)ロボットなどを一式組み合わせた。キャリアの可搬重量は15キログラム。キャリアは追加が容易で拡張性が高い。医薬品の容器やカプセル、軸受用鋼球、電子部品、円筒形電池などの外観や異物検査の省力化が可能。
地域の特徴生かした取り組み
日本政策金融公庫浜松支店(浜松市中央区)は、静岡県西部地域の行政や産業支援機関の関係者を招き、静岡支店が支援している磐南ファーム(磐田市)が運営する「いちご空中農園いわた」(磐田市)の視察会を開催した。同社は石川建設(同市)のグループ会社。異業種からの参入の取り組みや産業化が進む農業の現状を学び、6次産業化や新規事業展開の支援施策の参考にするのが目的。
日本公庫両支店の職員のほか、静岡県で西部地域を統括・調整する西部地域局や日本貿易振興機構浜松貿易情報センター(ジェトロ浜松)、中小企業基盤整備機構中部本部、浜松地域イノベーション推進機構の関係者が出席した。
いちご空中農園いわたは21年に稼働した大型のビニールハウスとつり下げ式の栽培棚を用いた大規模ないちごの施設園芸場。現在10品種を栽培する。いちごは流通事業者などへの卸売りをするほか、1日最大1000人規模のいちご狩りの観光客を受け入れている。
会社を横断し、技術高める
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連携で生まれた新システムを提案
東洋鉄工所(浜松市中央区)とアラキエンジニアリング(同区)、藤本工業(同市浜名区)が3社でバリ取りの課題を解決する共同チーム「TAFLINK(タフリンク)」は、二つの展示会に協力・出展した。
24年11月5-10日に開催されたJIMTOFでは、ムラキ(東京都中央区)の出展に協力。同社製の工具「MRA超硬バー」やホルダー「でばりん」を用いたバリ取りロボットシステムの構築で連携した。従来とは異なるさまざまな来場者との接点ができたという。
同月14日には横浜市内で開かれた展示会「日本ダイカスト会議・展示会(j-dec2024)」に、TAFLINKとして初めて出展した。展示したのはバリ取りロボットシステム「バリトリガー」の新たなコンセプト機で、ロボットが加工対象物(ワーク)をつかみ、バリを各種ツールに当てる「ワーク把持」タイプ。新たにロボットに適した専用のベルトサンダーを組み合わせた。今後は同機でテストの依頼に応じる。