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静岡県産業界
静岡県産業界では数年ぶりに集合型の入社式を執り行う企業も多く、門出を祝う姿が見られた。次代を担う仲間を迎え入れ、同県の企業は、設備投資やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)への取り組みを加速する。提携や新分野開拓など、業容拡大に積極的な動きも多い。景気回復では一進一退が続くが、そうした中にあっても県内企業は挑戦を続けている。
脱炭素へ技術活用
アオイ(御殿場市)は、植物由来原料(バイオマス)を使った流体制御機器向けチューブの生産を拡大する。新工場を建設し、3年後にバイオマスチューブの製品比率を現在の20%から50%に引き上げる。カーボンニュートラル実現のニーズを追い風に市場を開拓。環境配慮型製品を軸に事業領域の幅を広げ、持続的成長を図る。
ジヤトコは韓国の電動アシスト自転車メーカーのマイベロ(順天市)と自転車用電動アシストユニットの開発、生産、供給を目指した協業と試作品供給に関する覚書を締結した。ジヤトコは評価・認証などで50台の試作ユニットをマイベロに順次供給する。ジヤトコは自動車の電動パワートレイン技術を生かし、電動アシスト自転車用にモーターと変速機を一体にしたドライブユニットを開発。本格的な量産契約を目指す。
事業拡大に向けた取り組み活発化
フジ産業(静岡市駿河区)は門型マシニングセンター(MC)を拡販する。顧客が要望する加工機能にカスタマイズ可能な標準機種をこのほど市場投入した。低価格帯で提供できる特徴なども訴求し、中小製造業を中心に受注を図る。門型MCを事業拡大に向けた戦略製品と位置付け、主力の長尺加工機に次ぐ事業に育てる。
中遠熱処理技研(掛川市)は、浜松いわた信用金庫(浜松市中央区)ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)による融資を受けた。融資を受け、「労災事故ゼロの達成」「使用燃料の削減」「熱処理テストデータのデータベース化」などに着手する。
スター精密は牧之原市に主軸移動型(スイス型)自動旋盤の最先端モデルの組み立てを行う新工場「牧之原工場(仮称)」を建設する。2025年5月に着工し、26年7月に稼働予定。スイス型自動旋盤の世界的な需要拡大に対応するため、全面刷新する菊川工場(菊川市)と合わせて月産100台体制を確立する。牧之原工場は建築面積約6900平方メートル、鉄骨2階建てで延べ床面積約9100平方メートル。最先端モデルの製造を担う拠点とし、工作機械事業の高付加価値化の源泉と位置づける。
EV部品対応が加速
小出製作所(磐田市)は、ダイカスト金型の耐用性を2-3割向上する表面処理「コーキャスケア」の受託加工事業を始めた。金型メーカーの自社技術を応用し、「ギガキャスト」の普及を見据えて大型のダイカスト金型に同処理を提案する。
エンシュウは海外メーカーとの協業を拡大し、電気自動車(EV)の部品加工市場を深耕する。EV部品加工に強みを持つ独工作機械メーカーのシュヴェービッシュ・ヴェルクツォイクマシーネ(SW)製工作機械の受注を日本で始める。またレーザー加工機でも海外企業との連携を狙う。EV部品加工に応用できる発振器や加工技術などの提供を受け、提案メニューを増やす。
中部から2輪車のトレンド発信 県内企業も活躍
4月5-7日に愛知県国際展示場(愛知県常滑市)で開催された名古屋モーターサイクルショー。東京・大阪に次ぐ全国で3番目のモーターサイクルショーとして22年に初開催し、ファンの間に定着しつつある。会場では国内4メーカーのほか、静岡県内の業界関連企業の展示も見られた。
茗荷シート(浜松市中央区)は、バイクシートの張替え、加工、カスタマイズのほか、シートの完成品の販売も手がける。地元浜松市から近い愛知県でのイベントということもあり、名古屋モーターサイクルショーに出展している。同社によると専門の業者にはすでに知られているが、一般のユーザーへの認知度向上を図るのが目的。ブースでは来場者がシートに関心を寄せていた。
アフターパーツメーカーのデイトナはグループのダートフリーク(愛知県瀬戸市)の製品を含めて出品した。オンロードやオフロードともに、長く飽きずにバイクを楽しんで欲しいという狙いで、ガレージやヘルメットなど豊富なラインアップを展示した。
そのほか会場ではヤマハ発動機、スズキ、本田技研工業、カワサキモータース(兵庫県明石市)の国内4大メーカーによる高校生向けのパネルディスカッションが開かれた。その中で、国内2輪4社などで構成する水素小型モビリティ・エンジン研究組合(HySE)の活動を紹介。HySEでは水素小型モビリティーの課題を抽出し、水素エンジンの基盤技術構築につなげるためにライバルでもある4社が協力している。活動の中ではヤマハ発動機の事業所にスズキやカワサキの関係者を招いた際に、ヤマハ発の社内で驚かれたというエピソードを披露した。