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半導体産業
機器の省エネ・省電力 実現 パワー半導体
電圧・周波数の変更や電力変換の機能を持つパワー半導体。その性能を左右する素材技術が日進月歩で進化している。炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)など従来のシリコン(Si)に替わる次世代素材が注目され、実装や量産化に向けた動きが本格化している。
N700S 電力7%低減 SiC半導体 モーター小型・軽量化
SiC半導体はSiと比べて絶縁破壊電界強度が10倍、バンドギャップが3倍で、放熱特性に優れる。電力損失の大幅な低減、機器の小型化、高電圧・高温環境下での安定駆動といった特徴を持ち、電力変換時の損失を低減できる。
GaNは物質特性上、耐電圧性やデバイスの動作周波数などの優位性を持つ。
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東海道新幹線N700Sは、SiCを搭載しCIやモーターの小型化を実現
2020年から運行している東海道新幹線の新型車両N700Sは、床下の駆動システムにSiC半導体を活用し、小型・軽量化を図った。電圧と周波数を変化させ、モーターを制御するコンバーター・インバーター(CI)装置にSiCを採用。これにより、高速鉄道で初めてモーターの電磁石を4極から6極に増やし、電磁石を小さくすることで、小型・軽量の駆動モーターを実現した。
また、発熱が少ないSiCのメリットを生かし、冷却機構の簡素化と独自の走行冷却技術と組み合わせることでCIの小型・軽量化を図った。
N700SはこうしたSiCの導入や車両の軽量化、走行抵抗の低減などで、N700Aタイプと比べて電力消費量を約7%削減している。
急速充電器、効率92% GaN搭載、高出力化
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ローム製GaNを搭載したデルタ電子の急速充電器「Innergie C10 Duo」 -
「ロームは大切なパートナー」と強調するデルタ電子の華社長
国内最大級の電機・情報通信技術(ICT)の総合展示会である「CEATEC(シーテック)2024」が24年10月に千葉市美浜区の幕張メッセで開催された。
デルタ電子は展示会場で、ロームのGaN半導体「EcoGaN」を搭載した急速充電器の新製品発表会を行った。新製品は最大出力100ワットの給電ができる「Innergie C10 Duo(イナジーシーテンデュオ)」。
デルタ電子の華健豪社長は「ロームは当社の大切なパートナー。これからも両輪で小型・軽量の製品展開を考えている」と強調した。
C10はスマートフォンやノートパソコンの充電に最適で、GaN搭載により充電効率を最大92・62%まで向上している。出力96ワットクラスの機器の場合、充電切れから充電容量50%まで約30分で充電が可能。USBタイプCの充電ポートを二つ備えており、接続した2機種の要件に合わせて最適に充電する。
独自の回路設計と構造により、従来機比で約37%の小型化を実現し、再生プラスチックを75%使用しエコロジーにも配慮している。
デルタ電子とロームは22年に、電源システム用パワー半導体において戦略的協力関係を締結している。ローム製GaNを搭載した製品は今回で2機種目となり、今後も高出力で高機能な充電器の提供を予定する。
ロームのGaN半導体「EcoGaN」はGaNの性能を最大限生かすことで、アプリケーションの低消費電力化と周辺部品の小型化、設計工数と部品点数の削減を同時に目指した省エネルギー・小型化に貢献する。
オシロスコープ パワー半導体開発支える
GaNやSiCなどを搭載したインバーターをはじめとする電力変換・電源回路において、デバイスのON/OFFスイッチングの実動作信号の測定が求められ、オシロスコープと呼ばれる電子測定器の要求が強まっている。最近は基板実装されたパワー半導体のボンディングワイヤなどの信号測定を、動線を切断することなく電流測定するニーズも見られる。
国内外のオシロスコープメーカーは広帯域・高電圧差動信号を正確に測定する光絶縁(アイソレーション)プローブをそろえ、パワー半導体の研究開発を支えている。
GaNやSiCデバイスは、車両やACアダプターのほか、電動車(xEV)などエネルギー分野を中心に、大電流・高電圧への対応や消費電力の低減といった普及拡大に期待が強まる。